「いつも旅のなか」 角田光代

仕事も名前も年齢も、なんにも持っていない自分に会いにゆこう。
ロシアでは国境の巨人職員に怒鳴られながら激しい尿意に耐え、マレーシアでは釣りに行くのに12時間以上も地元の友達と飲みながら待たされ、キューバでは命そのもののように人々の体にしみついた音楽とリズムに驚かされる。

五感と思考をフル活動させ、世界中を歩き回る旅を、臨場感たっぷりに描く傑作エッセイ集。

旅を、したくなる。すぐにでも。

以前読んだ「世界中で迷子になって」という角田さんのエッセイで、角田さんが世界中を旅する旅好きであることは知っていました。

このエッセイは、角田さんが初めて旅について綴った記念すべきエッセイです。

角田さんにとって旅をすることとは、いわゆる「純粋趣味」。
純粋、というのはつまり、なんの役にもたたなくとも、あるいは損をしたって、好きでいることをどうにもやめられない、というような意味だ、とあとがきで述べています。
旅、いいですよね。
読めば読むほど、本当に旅をしたくなる。

そして、旅の仕方は人によって千差万別ですが、角田さんのような2週間~1ヶ月程長期に滞在することの多いスタイル、すごく憧れます。
それに、あっという間に現地に溶け込んでしまう部分も。私もわりとビビリなので、おっかなびっくり勇気を出して旅に出るあたりは共感できますが、なんだかんだで角田さんの思い切りのよさが素晴らしい。

モロッコからはじまりキューバまで、22の国と地域が書かれていて、それぞれの国の空気感を再現されてます。エッセイだからさらりと読めて、ちょうどいい。
本書は、角田さんが20代から30代半ばくらいに旅したものが書かれていますが、心に刺さる文章がありました。
すなわち、

旅にも年齢がある。その年齢にふさわしい旅があり、その年齢でしかできない旅がある。そのことに気づかないと、どことなく手触りの遠い旅しかできない。旅ってつまんないのかも、とか、旅するのに飽きちゃった、と思うとき、それは旅の仕方と年齢とが噛み合っていないのだ。

というもの。
これは、確かにそうなのかもしれないですね。実体験として経験してはいませんが。
これからの旅もまた若い頃のように安宿を渡り歩いて…という旅で完結する、というのはさみしいかも。
とはいえ、年齢に縛られるということではなく、自分の変化に敏感でいたいと思います。

長く旅に出たいなあ。

旅先で、その場所が書かれたもの、その場所で書かれたものを読む、というのはなかなか幸福な体験だと思っている。いつの時代に書かれたものであるにせよ、言葉で書かれた空気、肌触り、においを、ぴたりと感じることができたりする。それはなんていうか、奇跡にとても近いことだと思っている。  (p280)

★★★★

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