「東のエデン」 神山健治

この国の“空気”に戦いを挑んだ、ひとりの男の子と、彼を見守った女の子の、たった11日間の物語――。
テレビ放映時から若い世代の圧倒的な支持を集め、劇場版まで制作された話題作。神山監督みずから手がけた小説版が、待望の文庫化。本編以外に、アナザーストーリーや、羽海野チカ(キャラクターデザイン)と監督の対談(前編)も収録。

空前のブームを作ったアニメの、ノベライズ。

キャッチコピーは「この国の”空気”に戦いを挑んだひとりの男の子と、彼を見守った女の子のたった11日間の物語」。

セレソンと呼ばれる選ばれし12名には、100億円を使って日本を良くするという使命が与えられた。持てる者の義務、ノブレス・オブリージュとして。
達成できず、残金が0になれば死。

読み終わった今でも謎ばかりですが、もともとは11話からなるテレビアニメと劇場版2作をもって完結する物語のようで、本書はあくまでテレビ版のノベライズ。
きっと映像で見たらもっと鮮烈なんだろうにと思う場面もあったし、謎に包まれた部分が多くて「???」とついていけないところもありましたが、発想がおもしろくて、社会に問題提起する深みがある1冊でした。

日本を包むこの閉塞感のある空気、バブルを体験したこともなく、先行きも明るくない(なにせ若い世代でこれから増えゆく高齢者を支えなければ成り立たない社会が待っているのです)中、若者たちはすこし、辟易していたりする。

この物語は、既得権益を守る大人と既存の枠に囚われたくない若者の世代間闘争の縮図でもある気がします。
キレイゴトばかりでなく、何かを成し遂げるのにはお金が必須だよね、ということを打ち出しているのも潔い。
一方で、どれほどお金があろうと成し遂げられないことがあるという皮肉もまたありつつ。

世界を変えるのは、ぶっ飛んだアイデア、それこそジョブズがiphoneで世界を変えたように、新しい価値でもって普及したインフラは、確実に世界を変える力を持っているだろうし、それは若者の手からしか生み出されないのかも。それは、すごく可能性と期待を秘めていてわくわくすること。

より良い社会を、と躍進している人が実際のところ日本にもたくさんいて、政治家の音喜多駿さんなども私が応援している人の1人ですが、壁はなかなか高そうです。既得権益を守ろうとする力って、自分に置き換えてもそうですが、「失う」という発想を自分自身でなくせない限り、それを奪おうとする人は敵にしかなりえない。
失う、のではなく、見直すべき局面にきているのだ、と、誰もがそろそろ現実を直視する必要があるのかも。

結果として、ゲームを上がれなかったかもしれないけど、手の届く範囲だけでもいい社会を作ろうともがいた人たちが作中に登場したことについて、私は素晴らしいことだと思います。
日本に生まれた時点できっと私たちの多くは、持てる者なのだと思う。まだまだ思考は整理できないままですが、これは映像で見た方が楽しめる気がするので、今度は劇場版を見てみようかな。

★★★☆

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