「バッテリー Ⅳ」 あさのあつこ

自分の限界の先を見てみたい。
ここまでだと自分の力を見切った、その先に行ってみたい、超えてみたい。

あきらめて、誰かが敷いてくれた安全な道を行くのではなく、誰も知らない未来に自分を導いてみたい。シリーズ第4弾。

やっぱり、言葉が刺さるシリーズ。

久しぶりのこのシリーズ。
前巻を読んでから既に2ヶ月以上経っているのに驚きますが、ページを開けばすぐにこの世界にのめり込める。
4巻は、触れてはいけない空気を孕んだ、緊迫した物語の始まりでした。

待ちに待った横手との試合での、まさかの出来事。
ネタバレを避けて感想を言うのが難しいところですが、スポーツの試合、もちろん何があっても不思議じゃない。とはいえ、残念なような、誰が悪いというものではないからこそ消化しきれないもやもや感が残る試合でした。

思えば、野球のバッテリーというのは随分不思議な関係ですね。
テニスや卓球のようにダブルスで組むスポーツもあるけれど、チームの中において、あんな風に1対1で真正面から向き合う関係は珍しいんじゃないでしょうか。
確かに仲間ではあるのだけど、同時に相手と闘っているようでもあり、深い信頼関係が必要でいながらライバルのような、何とも不思議な関係です。

ましてスポーツ。
言葉で感覚や感触を伝える力が十分にない中で、1人きりでやる競技でない以上、とても難しい思いをしそう。
そもそも、説明することが、言葉で伝えることが可能なものなのかすら私にはわからないです。言葉にしないからこそ伝わるようなものも、確かにあるような気がしているのですが、それは錯覚なんだろうか。
豪と巧を見ていると、不器用さにハラハラしつつ、それでもどうか二人の関係が切れないで、この先も更なる高みを目指して欲しいと願わずにいられません。

それにしても、横手にもまた個性豊かな人物がいますね。
瑞垣の屈折した感じがすごく気になります。
器用な子だからきっと、自分で自分と折り合いをつけて今まできたんだろうけど、その結果がちょっと素直じゃない、妙に軽い形となって表れてきたんだろうけれど、再びの試合でどんな風に変わるのか、門脇と合わせて気になる存在です。

文庫の最後を締めくくるのは、「空を仰いで」という書き下ろし。何か尊いものを見たような、胸がぎゅっと締め付けられる想いです。
縁って、きっとあるんだろうなと思わせてくれる、最高の1編でした。

労られることと憐れまれることは、紙一重だ。憐れまれてしまったら、おしまいじゃないか。対等に向かい合うことすらできない。  (p 13)

自分に向かい合うことが1番、しんどい。向かい合わなくてすむのなら、自分の限界や弱さから、目を背けることができるのなら、幸せだと思う。  (p 187)

★★★★

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