「バッテリー Ⅴ」 あさのあつこ

「おれは、おまえの球を捕るためにいるんだ。ずっとそうすると決めたんじゃ。何があってもそうするって…本気で決めたのに」

天才スラッガー、門脇のいる横手二中との再試合に向け、動きはじめる巧と豪。
バッテリーはいまだにぎこちないが、豪との関わりを通じて、巧にも変化が表れつつあって―。
横手の幼なじみバッテリーを描いた、文庫だけの書き下ろし短編「THE OTHER BATTERY」収録。

見ていてハラハラする関係に、囚われます。

そうか、ちょうど1年が経つのか、巧がこっちに来てから。
随分と成長をした1年でしたね。巧だけじゃなくて、豪も、なにより青波も。

中高生の頃というのは、ちょうど潔癖さが際立つ時期で、黒か白かはっきりさせたくなるような年頃かもしれない。
少なくとも、私はそうでした。
その時期を越えて、少しずつ曖昧なものを認められるように、受け入れられるようになる。巧や豪はちょうどその過渡期にいて、瑞垣だって例外じゃない。
うまく折り合いをつけてきた、つけざるを得なかったのだろうけど、全部を消化してこれたわけじゃないし、今本気で動く瑞垣がかっこよく映る。どうやら私はやっぱり瑞垣がすごく気になるようです。

突出した才能を持って生まれたということは、幸福なことでも恵まれたことでもない。
才能自体に振り回され、追い込まれ、人間として成熟しないまま、潰れていく。そんな危うさを抱え持って、生きていかねばならないということなのだ。 (p136)

突出した才能を持って生まれた人の境遇を想像したことはないけれど、何も持たずに生まれた者とは違ったハンデがあるんですね。
自尊心が高い人というのを羨ましく思っていた時期もあるけれど、あまりにも高いプライドは折れた時になかなか立ち直れなさそうで心配です。

それにしても、自分の感情と向き合うことも、誰かと真剣に向き合うことも、なんでこんなにも難しいんでしょうね。本当にわかり合うためには言葉で伝えることこそ必要なのか、それとも言葉なんて不要なのか、思考が行きつ戻りつさまよいます。
さて、次はきっと試合の様子が見れるはず。心を当時に引き戻してくれるこの本の存在は、私にとって貴重です。

こいつに対してだけは、恥ずかしくない自分でありたいと思った。その思いがなんなのか知りたい。自分に向かってではなく、他人に対してこうありたいと思うことは、弱さではないのか。誰にも頼らずに、もたれずにいることが強さではないのか。そこを知りたかった。  (p215)

★★★★

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