「サファイア」 湊かなえ

あなたの「恩」は、一度も忘れたことがなかった―「二十歳の誕生日プレゼントには、指輪が欲しいな」。
わたしは恋人に人生初のおねだりをした…(「サファイア」より)。林田万砂子(五十歳・主婦)は子ども用歯磨き粉の「ムーンラビットイチゴ味」がいかに素晴らしいかを、わたしに得々と話し始めたが…(「真珠」より)。

人間の摩訶不思議で切ない出逢いと別れを、己の罪悪と愛と夢を描いた傑作短篇集。

たしかな闇と、光がある。

素敵な装丁から、発売以来気になっていた1冊。
湊かなえさんによって綴られた、宝石の名前を冠したタイトルが並ぶ短編集です。
モチーフとして取り上げられているのは、真珠やルビー、ダイヤモンドなど。

個人的に、宝石というのは人の想いを閉じ込めるものだと思っていて、だからこそ勇気をくれたり、愛情を感じたりするんだと思います。
それらの物語を、人の心の闇と光を描くのが抜群に上手い湊さんが紡ぐのだから、心に響かないはずがない。

読み進めるにつれて物語に引き込まれますが、特に「サファイア」と「ガーネット」は素晴らしい。
ほんの少しのきっかけから人生は変わるし、不思議な縁で人は結ばれていると、思い出させてくれます。
悲惨な目にあっても、前に進んでいればいいことがあるのかもしれないと思わせてくれるし、ひたむきに頑張っている人が報われてほしいという願いに応えてくれるような物語でした。

それから、「ムーンストーン」も好き。
登場人物2人がとても好ましい。人生の落とし穴はいつどこで待ち構えているかわからないし、誰だってふいに落ちてしまうことがある。
そこで、手を差し伸べてくれる人の存在がどれほど大きいことか、助けられた側にしかわからないでしょうが、恩を返す機会を得られる人もまた幸せですね。

小さくても存在感を放つ宝石が光る、読み応えのある短編集でした。

★★★★

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1.『サファイア』/湊かなえ ○

宝石の名を持つ短編が七つ集まった短編集、『サファイア』。 湊かなえさん、初の短編集ってことでいいのでしょうか。 湊さんらしい、読後にどす黒さが残る物語もあれば、ほのぼの…


「サファイア」 湊かなえ” への2件のコメント

  1. yocoさん、こんにちは(^^)。
    湊さんらしい作品もあれば、予想外なものもあり、バリエーションが豊かでしたね♪
    私も「サファイア」「ガーネット」が良かったです。
    物語を書くということで、昇華されるものがあり、救われるものがある、というのは私たち読者の救いでもあるかな…と感じました。

  2. 水無月さん、こんばんは~^^
    ほんとバリエーション豊かでしたね。思ったよりも重すぎず、きれいにまとまってて読みやすかった気がします。
    産みの苦しみなんて言葉もあるけど、やっぱり物語を書くことで昇華される、救われるってあるんでしょうね。それがなければきっと重苦しいだけのものも、そうすることで浄化されていく気もして、私には物語を書く力はないけど、読者として追体験できることがなんだかありがたいです。
    湊さんも目が離せない作家さんです。

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