「下流老人」 藤田孝典

年収400万でも、将来生活保護レベル!?
今、日本に「下流老人」が大量に生まれている。
そしておそらく近い未来、日本の高齢者の9割が下流化する。
本書でいう下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者」である。現在すでに約600万人が一人暮らし(うち半数は生活保護レベル)をしているが他人事ではない。
間近に迫った「老後総崩壊」にどう対処すればいいのか?

人間が暮らす社会システムをつくるのはわたしたちである

老後の貧困はひとごとではない。
そう警報を鳴らすのは、生活困窮者支援のNPO法人「ほっとプラス」の代表理事で社会福祉士である本書の著者、藤田孝典さん。

本書では下流老人を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義しています。
私も高齢分野で相談援助職をしていたことがあるからこそ、ここに書かれている重たい現実が、忍び寄る貧困の影が本当に存在しているものだと知っています。
一億総中流社会なんて、随分昔のお話です。今は、普通に暮らしている人の多くが貧困リスクを抱えています。

下流老人が抱える3つの「ない」

下流老人は、3つの「ない」を兼ね備えてます。
すなわち、①収入が著しく少「ない」②十分な貯蓄が「ない」③頼れる人間がい「ない」

制度自体がなくなることはないでしょうが、年金収入は減り続けるばかり。収入が公的年金のみでは、国民年金なら7万円ももらえないし、厚生年金だって平均月給給与が38万円で40年間納めたとしても月に17万円もらえない。
無論、平均月給が、納付期間が少なければその額はもっと少なくなる。
必然的に、高齢期に年金収入のみに頼ると、収入は著しく少ないと言わざるを得ない。だからこそ働けるうちは働くという意識を持っている人は多いけれど(本書によると日本の高齢者の就業率は約20%と世界で1番。フランスは2%ほど)、当たり前ながらいつまでも健康に働けるわけではないのです。

貯蓄だって、日々の生活から老後資金を十分に用意するだけの余力がある人は多くない上に、突然の長期入院などであっという間に貯蓄は目減りしてしまう。
それに自分が高齢期になる頃には親もいないだろうし、兄弟や友人だってみな高齢だ。その頃頼れる相手が、自分にどれだけいるでしょうか。
つまりは、誰だって下流老人になる可能性は高い。まして、高度経済成長期を生き抜いた今の高齢者ですらそうなのだから、非正規雇用が40%を占める今の若者が高齢者になる頃のことを、今から真剣に考えていかなければいけないのでしょうね。
目を覆いたくなるような現実ですが、高齢者が尊重される社会であってほしいと思うので、見ないふりだけはしないようにしようと思います。

生活保護は、恥じゃない

本書にも度々セーフティネットとしての生活保護に関する記述がでてきます。生活保護の基準は近年引き下げられているものの、人間が健康で文化的に生活できるだけの基準で設定されています。
本来であれば、病気や年金の不足などで十分に生活できない人がこの社会で生きる権利として申請をしてほしいものですが、まだまだ抵抗感は根強いし、耐えることが美徳とされる風潮もあることから頑張る人ほど利用に繋がらない現状がもどかしいです。
一方で、権利を振りかざし、不必要なほどの医療にかかる人、貰うとすぐに散財をする人を見るにつけ、やるせない気持ちにもなります。我慢をする人、遠慮をする人ほど損をする社会であっていいはずがない。

団塊世代が75歳を迎える2025年の介護問題と同様に貧困対策というのも急務ですね。ただし、公助のみでなく、自助だって必要です。もちろん、貧困はその人が怠けていた結果ではなく、社会構造上どうしても発生してしまうのは忘れてはいけません。
その上で、個人で何を備えておくべきかということが本書にもいくつか書かれておりますが、中でも「豊かな人間関係の形成」というのは私も欠かせないものだと思います。

問題が深刻化してから支援に繋がるケースが多いのを目の当たりにして、このまま対処療法ではいけない、というのは私も感じているところです。
あるいは、独居高齢者たちが異口同音に口にする「はやく死にたい」という言葉を聞くにつけ、高齢者が自尊心をもって生きられる社会を模索する必要性も感じています。では、自分に何ができるのか。
抜本的な取り組みができるわけではないですが、なるべくアンテナを立てながら、少しでもできることに取り組んでいきたいと思います。

同じ貧困に苦しんでいても、幸せに過ごしている人もいれば、悲惨な生活を送る人もいる。この違いは、どこから生まれるのか。
わたしが相談支援の現場で常に実感するのは、「人間関係の貧富の差」が幸福度を決定するということだ。 (No.1825)

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