「聖の青春」 大崎善生

難病と闘いながら,29年の短い生涯を生き抜いた天才棋士の伝記。
その生涯は純粋で激しく、哀しいが温かい。水晶のように純粋で、温かい輝きを放つ人生の記録。

挫けないのはきっと、夢があったから

「東に天才羽生がいれば、西には怪童村山がいる」
そう囁かれ、かつて将棋界で名を馳せた若き棋士、村山聖(むらやまさとし)の激動の人生を描いた、ノンフィクション小説です。

幼少の頃に発症した腎臓病を抱えながら、病床で出会った将棋に広い世界を見出して没頭し、果ては名人まであと一歩というところまで上り詰める。まさに命を燃やすようにして生きたその生き様に心を打たれました。
将棋界に疎いとはいえ、こんな棋士がいたことをまるで知りませんでした。

著者は「将棋世界」の元編集長です。
兄と森を駆け抜ける幼い頃の様子から、最期のときまで、とても丁寧に愛情深く書かれています。作中には実際に著者も出てきたりして、生前から交流があったのが伺えます。
本書は直接の交流で知っていた部分もあるでしょうが、約8時間にもおよぶインタビューや、聖の父が「年と共に記憶は薄れてゆき、報道の方々に受け答えする聖の母とわたし(聖の父)との記憶がのずれが生じては困る」と思い、聖の妻の日記や家計簿等から作成した彼の履歴がもとになっています。
いかに聖が愛されていたかがわかりますよね。

ままならない体を抱えながら、どれほど悔しく、しんどい思いをしたでしょうか。それでも、後ろ向きにならずにいたのは、夢が、夢中になれるものがあったからなんですね。
「僕は負け犬にならない」
「僕には時間がないんだ。勝ちたい。そして早く名人になりたい」
急き立てられるように生きた聖を応援したい気持ちが募る一方で、小説終盤に向かうにつれて、結末を知っている分、読んでいて苦しくもなりました。
もし村山聖九段が生きていたら羽生名人の七冠は阻止されていたかもしれない、とも言わしめる彼が、こんなにも短くこの世を去ってしまうなんて、本当に人生何があるかわからない。

熊本の震災も突然のことでしたが、本書では阪神の震災の描写が少し出てきます。
将棋連盟で棋士から義援金を募ったそうですが、いち早く反応したのが羽生さんと村山さんだったそう。

知っていて読んだわけではないんですが、本書は映画化されて2016年の秋に公開されるそうですね。
村山聖役を演じるのは、松山ケンイチ。この役のために20キロの増量をして全身全霊をかけて挑んでいると知って、ものすごく見たくなりました。

★★★★

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