「南の島のティオ」 池澤夏樹

受け取る人が必ず訪ねてくるという不思議な絵ハガキを作る「絵ハガキ屋さん」、花火で「空いっぱいの大きな絵」を描いた黒い鞄の男などの個性的な人々とティオとの出会いを通して、つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに、かつ鮮やかに描き出す連作短篇集。

第41回小学館文学賞受賞。

リラックスできる時間がほしい人へ

この本のおかげで、週末を幸せな気持ちで過ごせました。
ひとたびページを開くと、南の島にひとっ飛び。
魔法が、精霊が息づく、どこか懐かしい10編の物語です。

きっと、昔はどこもこんな風に見えないものが信じられていたんでしょうね。
文明が発展して便利になる一方で、失われてしまったものもたくさんあったのだと思います。神様がいて、精霊の声を聴く人がいて、生命の息吹を感じられる。魔法だって信じられる。そんな世界の存在自体が、こんなにも自分を癒してくれるなんて。

「絵はがき屋さん」
受け取った人は、必ず来たくなる。
そんな魔法のような絵はがき。ものすごく、わくわくしませんか?
ピップさんが語る渡り歩いた世界の話もわくわくするし、思わず旅先から絵はがきを出したくなりますね。

「草色の空への水路」
ちょっといたずら好きな、すこし子どもっぽい神様の存在が感じられるお話です。
今でも神様に挨拶をしたり、お伺いを立てたりする風習は世界中で残っていますよね。神様が見せたあまりにも幻想的な風景にもうっとり。

「十字路に埋めた宝物」
幸せの連鎖って、あるんだろうな。
そう思わせてくれる、いいお話。責める前に、耳を傾ける姿勢も、独り占めしない姿勢も、とても大切ですね。

「帰りたくなかった二人」
どうしてもその土地に惹かれて仕方がない、ということは、あるのかもしれないですね。
仲良しな二人と冒険のような日々に心が温かくなります。

「星が透けて見える大きな身体」
これもまた幻想的なお話です。
美しい子は神様に愛される、幼い頃に命を落とした子は神様が呼んだからだ、なんて言いますよね。
大事な友達を取り戻すための勇気のお話。暗に親では呼び戻せないと示されてるのが実は切ない。

「エミリオの出発」
失われゆくものを大事に慈しむエミリオ。
周りに流されることなく、自分がすべきことを見つめる強さに惚れ惚れします。
楽をしようと思えばいくらでも楽ができるのに、そうしなかった彼の真摯さがすばらしい。

ひたひたと心を満たす幸せな余韻。あとがきもとても素敵なんですよ。
疲れた週末の読書におすすめの1冊でした。

たぶん勇気というのは男らしさや元気や無謀な冒険心とはまるで違うもので、ひょっとしたら愛と関係があるのかもしれないとぼくは考えた。 (p189)

★★★★☆

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「南の島のティオ」 池澤夏樹” への2件のコメント

  1. yocoさん、こんにちは!
    またまたちょっぴりご無沙汰しておりますー^^;
    相変わらず仕事、仕事の忙しい日々で、週末はもうグッタリです(笑)
    そんな中、yocoさんのブログを読ませて頂いて、ほっこりしちゃいました♪

    週末、疲れた時に読むのにピッタリの作品ですよねぇ(* ̄∇ ̄*)
    私も「絵はがき」もらいたーい!南の島に行きたーい!!!(笑)

    大分前に読んだので、若干記憶が定かでない部分があるんですが、
    『エミリオの出発』を読んで、周りに流されないでしっかり自分を持たないといけないなぁと感じたことを覚えています。。
    すぐに新しいものに飛びつかないで、ちゃんと自分で必要かどうか見極めようって。
    そんなお話だったかな?もう一回読みたくなってきました><

    そういえばyocoさん、
    鈴木光司さんの『楽園』という本、読まれたことありますか??
    私の大大大好きな作品なんですが、『南の島のティオ』を読んでふとこれを思い出しました。船出のシーンが結びついたのかな・・・

  2. nanacoさん、こんばんは~^^
    お仕事ほんとにお疲れ様です。仕事が忙しいのはいいことですよー。
    と、私も忙しい日が続くと自分に言い聞かせています。笑

    疲れた時に読むとほっこりする本があるっていうのはいいですよね^^
    なんでしょう。やっぱり南の島って心がすごく解放される気がします・・・!
    エミリオの出発は、流されずに自分の信じるものを大事に守る彼の姿に私も心を打たれましたね。きっと私もこの先何度も読み返すことがあると思います。

    そして鈴木光司さんの「楽園」、題名は見たことある気がしますが未読です!
    nanacoさんが大大大好きですって・・・・?!
    それはぜひとも読まないと!
    読んだらまた感想書きますね~♪ 教えてくれて嬉しいです^^

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