「政と源」 三浦しをん

簪職人の源二郎と元銀行員の国政は、ふたり合わせて146歳の幼なじみ。
弟子の徹平と賑やかな生活をおくる源二郎と、男やもめの国政を中心にまき起こる、人情味豊かで心温まる事件の数々。
下町を舞台に繰り広げられる人情物語。三浦しをん、新境地!

心にどうぞ、ともしびを。

下町のハートウォーミングストーリー。
主人公は70歳代の幼馴染2人なんですよ。
片方は40代で妻を亡くしたつまみ簪職人、もう片方は70歳になった頃に妻に出て行かれた元銀行マン。
死がわりと身近にあって、体に痛みも出てくるお年頃。

老後の生き方についてふいに考えさせられる物語でもありました。
今の団塊世代の男性もきっと、家庭を顧みずに我武者羅に働いてきた人が多いんじゃないでしょうかね。
終着点が熟年離婚だとすれば、なんだか寂しい。

ところで主人公のこのお二人、どちらも子どもか!ってくらいに拗ねたり、意地を張ったりする場面があるんですが、こんな風に長く付き合いのある関係を持てることは、本当に素晴らしいことですよね。
それも、こんなに違う二人が。
違うといえば、作中で登場する徹平&マミちゃんもまた素晴らしい。ちょいちょい登場する二人の幸せな姿と、困難を乗り越えようとする漢気溢れる姿にぐっときました。

この本は素晴らしいところがいくつもあるんですが、その1つがまず装丁。和風で美しい装丁な上、中には格好良いイラストまで描かれています。
それからところどころで登場する国政の心の声やツッコミが面白くて。

「あそこを船で通ってるとき、俺の頭にカモメがとまったんすよ」
「本当かい」
(略 ※徹平のお馬鹿発言)
徹平くんは、カモメに脳みそを持ち去られたのかもしれないな、と国政はちらと思ったが、むろん黙っておいた。

とか、いちいち面白い。

三浦しをんさんの紡ぐ言葉は本当に丁寧で心に届くから、物語ももちろんいいのだけど、読んでいてとても心地よかったです。
ああ、いい物語を読んだなあという気持ちでいっぱい。

大事な人が亡くなった時の描写で、

長く親しんだ景色をまたひとつ失ったさびしさは、これから少しずつ胸の底に降り積もることだろう。

とか、どうしてこんな的確な言葉が選べるんだろう。
とにもかくにも、いろんな方面から最高の1冊でした。

★★★★☆

follow us in feedly

Pocket

トラックバックURL

トラックバック一覧


1.『政と源』/三浦しをん ◎

きゃぁぁぁ~ッ!しをんさん、大好き~! と、のっけから叫びたい私は! なんなのもう、この愛と笑いとツッコミ処満載の、素敵な物語は! 読みながら本気で大爆笑なんて、久し振り…


2.政と源 三浦しをん

政と源著者:三浦 しをん集英社(2013-08-26)販売元:Amazon.co.jp 簪職人の源二郎と元銀行員の国政は、ふたり合わせて146歳の幼なじみ。弟子の徹平と賑やかな生活をおくる源二郎と、男やも ...


3.『政と源』三浦しをん著(集英社)

 GW初日の29日は、瀬戸の妻の実家へ。  親子四人+妻の両親とで、長久手の「陣屋」さんでラーメンを食べ、アピタでお買いもの。  夜は、上の娘が初任給でご馳走をしてく ...


「政と源」 三浦しをん” への6件のコメント

  1. yocoさん、こんばんは(^^)。
    源も政も、カッコいいですよねぇ!!まさに、老イケメン二人組♪
    老いの悲哀もありつつ、それでも何とも「愛と笑いとツッコミ処」が満載で、もう笑い転げながら読んでました。
    そして、yocoさんと同じく「徹平のカモメエピソード」が・・・ツボで!
    お二人には、存分に長生きしていただきたいですね~(*^^)v。

  2. 水無月さん、こんばんは~^^
    二人ともかっこいいですよね!!
    若者には出せない色気と深みとあの哀愁…!素敵すぎます。
    扉絵もかっこよすぎですよね。あの絵がなければ、私の中でカラフル頭の源さんはもっと違ったイメージになっていたかも・・・笑
    カモメエピソード、ほんっっとおもしろいですよね!!笑
    あの政さんの静かで的確な呟きはほんとツボです。一体なんてことを考えてるんだって笑えて笑えて。
    二人にはこれからも長く元気にいてほしいものです^^
    この本、しをんさん本のなかでもトップ5に入るお気に入りです。

  3. こんばんは。
    性格や境遇が正反対の二人。でもずっと一緒にいるのはお互いを信頼している証拠なんでしょうね。自分にないものを相手が持っているからいいと言いますか。
    徹平のちょっとおバカな感じが可愛いですよね^^
    やっぱり若い子も出てくると華があります←
    お二人にはいつまでもお元気でいていただいて、またどこかで登場して欲しいです。

  4. 苗坊さん、こんばんは~^^
    ほんとそれぞれタイプが全然違ってて、でも根底には互いへの信頼があるのがまたいいですよね。案外似た者同士よりも、違った者同士の方が長く続くのかもしれないですね。
    徹平はほんとかわいいですw
    この子がいるのといないのでは、物語の感じがまた全然違いますよね!笑
    実写化もしてそうですが、意外にもまだしてないんですね。
    他の作品でも、第2弾としてでも、わたしもまた二人にどこかで会いたいです^^

  5. yocoさん こんばんは。
    TBありがとうございました。
    こちらからもTBさせていただきます。
    源二郎と国政のキャラクター設定が抜群にいいと思います。
    特に国政は、まじめで、善人ではあるけれども、家族の細かな心の襞までは読み取ることができない、ぼくの父親たちの年代の男性を象徴していると感じました。
    カモメのエピソードをはじめ、三浦さんのユーモアのセンスも読んでいて楽しいです。
    ぼくは「黒山のひとだらけ」の辺りで大笑いしました。
    続編は読んでみたいと思いますが、どちらかが亡くなる話は、辛すぎるので読みたくありませんね。

  6. touch3442さん、こんばんは^^
    こちらこそ、TBもコメントもありがとうございます。
    そうなんです、二人ともいいキャラクターですよね。
    国政みたいなお父さんはきっと、日本中にいて、そういう人たちがずっと日本を支えてきたんだと思います。今は女性の社会進出で仕事と家事(や子育てなど)の両立が大変、とか、ワークライフバランス、とか言われてますが、実際のところどちらもやり遂げるのは相当大変だろうし、一昔前は男性ががっつり外で稼いで女性が家で支える…というのが当たり前だったんですよね。
    むしろそれが何故こうなった・・・と思いながらも、修復がきかないくらい大きくズレてしまう前にきちんと会話することが大事なんだろうか。。とかいろいろ考えさせられたりもしました。

    三浦さんのユーモアのセンスには私も笑わされっぱなしです。
    おもしろいですよねぇ、本当に。続編も読みたいし、なんならほかの小説でもいいのでちらっとでも登場してくれたら嬉しいなあなんて思ってます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。