「白蓮れんれん」 林真理子

「筑紫の女王」と呼ばれた美しき歌人・柳原白蓮が、年下の恋人、宮崎龍介と駆け落ちした、世に名高い「白蓮事件」。
華族と平民という階級を超え、愛を貫いたふたりの、いのちを懸けた恋―。

門外不出とされてきた七百余通の恋文を史料に得て、愛に翻弄され、時代に抗いながら、真実に生きようとする、大正の女たちを描き出す伝記小説の傑作。

第八回柴田錬三郎賞受賞作。

文字通り、命を賭けた恋でした。


ドラマ、花子とアンを見た方の多くが興味を持たれるという白蓮さん。
有名な「白蓮事件」というのもあるらしいですが、私はまったく知らず。

実際の恋文を、膨大な資料を紐解いて描かれたこの小説、読んでみて衝撃的なことが多かったです。
1つはまずその時代背景。
当時の結婚は個人の恋愛によるものというより、家と家の結びつきのためという要素が強いことは知っていましたが、こんな風に個人の声に焦点を当ててみると壮絶ですね。まして、高貴と言われる方々にはその方々の、下々の者にはその者なりの不自由さがあって、なんとも切なくなります。

当時は姦通罪なんていうものもあって、今よりも不倫などに対して厳しかった時代。
不倫がよいことだとは言いませんが、自分で選んだわけではない人と一生添い遂げるのは、何程大変でしょうか。運良くいい人に巡り会えればいいですが、白蓮にしたって20代で結婚した相手の年齢は50代。年齢差が悪いのではなく、趣味や教養をはじめ、共通点が少ない中でともに歩むというのは並大抵の苦労でないはず。

恋愛する心持ちは私もわかるので、彼女たちの気持ちもわかりますが、周りを巻き込んで我を貫こうとしても大抵のことは上手くいかない。
そんな中で、白蓮が最期まで最愛の人と添い遂げたという実話に、とても勇気づけられる思いでした。小説には書かれていませんが、二人のその後が少し解説に書かれていて、魂を削るような凄まじい人生の最後に、幸せに二人が暮らせた様子が垣間見れてよかったです。

それにしても、こんな時代に随分と大胆なことを白蓮はしたものですね。むしろ、こんな時代だからできたんでしょうか。ちょうど抑圧され続けた女性たちが声を上げ始めた時代ですものね。

読み終わった後は、長い夢から醒めたような気分です。
誰に正義があるかなんて、その人の立場によって変わってくるでしょうが、何事も貫き通した人はとても強いですね。一方で私は、最後まで隠し通すこともまた強さだと思っています。
切なくも情熱的な、時代を色濃く反映させた恋の物語でした。

お会いするといっても、ごくたまにおめにかかるぐらいですわ。でもね、その1日があるから、後の百日を私は生きていけるような気がしますの。 (p318)

★★★★

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