「太陽の庭」 宮木あや子

神と呼ばれた一族に渦巻く、愛憎と官能。
日本の政財界から密かに神と崇められる一族・永代院。
息子が父の女を愛したことから崩壊への道を歩み始め…。

世間から隔絶した一族の愛憎と官能を描く、美しく、幻想的な物語。

幻想的×官能的。歪で、美しい世界です。

ある一部の人たちからは神と崇められ、地図には載らない秘密の地、特別な一族がこの日本にはいる。
ぞくぞくするような面白さで、一気に読み切りました。

現実離れした物語を読んでいるような気でいたら、ふいに鋭い問いかけがあったり、世界観に浸りつつも、神様を信じる人のいない世界を想像したら味気なくて寂しい気持ちになりました。

読んでいて新鮮だったのが、永代院に連なる人たちが主となる章で、インターネットもなければスマホも出てこない。
今私がそんなことになったら不便でしかないんだけど、最初からその状態が通常であればかえって情報に翻弄されることがなくていいかもしれない…なんて思うくらい、どこか静かな世界でした。
ある種守られ、穏やかで、一方でどろどろした内実を孕んだ世界は、やはりとても特殊でした。

格差社会だ、格差が広がっていると今でも叫ばれるけど、昔だって十分に階層は分断されていて、むしろ流動性が少なかった分今よりも格差のある社会だったかも。
話が二転三転してしまうのだけど、個人的に神様がいる世界というのは幸せで、そして同時に危険な世界なんだと思っています。
信じられる絶対的な存在があることはとても心強いし、心の安定にも繋がるでしょう。けど、それを守るためならどんなことでもする…という心境に繋がるから怖い。

さて、永代院の是非はともかく、古くから続いているものを同じように守り続けることは、なんとも難しいものですね。
こんな世界があっちゃいけないと思う気持ちと、もっとこの世界を見ていたいという気持ちとが半々。解説で知ったのですが、前作で「雨の塔」という作品があるのを知ったので、そちらも読んでみたいと思います。

現存するさまざま教えは、ほぼ全てが来世を説く。それを信じるならば徳を積んで死んだほうがましだと思う人だっているはずで、本来ならば現世における人にとっての生き死にはその程度のものだ。自らの意思でもってこの世に生きようとしている人が、いったいどれほどいることだろう。 (p75)

★★★★

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1.『太陽の庭』/宮木あや子 ◎

かつて私は『雨の塔』を読み、その儚い美しさに、息苦しいまでの孤独に、とても心を打たれた。 本作『太陽の庭』は、その『雨の塔』と同じ世界に存在する、別の物語である。 源氏…


2.太陽の庭 宮木あや子

太陽の庭 (集英社文庫)著者:宮木 あや子集英社(2013-02-20)販売元:Amazon.co.jp 一般人には存在を知られず、政財界からは「神」と崇められている、永代院。地図に載らない広大な屋敷に、 ...


3.太陽の庭(宮木あや子)

先に読んだ「雨の塔」のリンク作品。・・・とは言っても、別に「雨の塔」を読んでなくても大丈夫な感じですね。まぁ、読んでた方が、より理解できるっていうか、楽しめるのかな、と…


「太陽の庭」 宮木あや子” への8件のコメント

  1. yocoさん、こんばんは(^^)。
    「源氏物語そのものだよ・・・!」と読み始めた「永代院」の物語でしたが、どんどん惹き込まれました。
    〈神〉を失った「この国」は、どうなってしまうのか・・・。余韻が素晴らしい作品でしたね。
    宮木さんのこういう作風の方も、大好きです♪

  2. 水無月さん、こんにちは~^^
    本当に源氏物語そのものですね!
    一人の男性の寵を競って戦うのは、いつの時代も、どこの世界も共通なんですね。おそろしい・・・けど、どちらも独特の美しさがあって、なんとも淫靡で。
    物語の終わりの、世界が終焉に向かっていく感じがまだ脳裏に焼きついてます。
    これからは神の時代ではなく、人の時代なんだ、と良く捉えれば新たな幕開けなのかもしれないけど、果たしてその先に光はあるのか…。
    私も宮木さんのこういう作風も好きですね!単純な時代小説もいいですが、この幻想的な雰囲気がまたたまらないです。

  3. yocoさん、おはようございます。
    TBとコメント、ありがとうございました。
    何故かTBが私のブログでは〈????〉で表示されてしまいました(^_^;)。
    エラーかもしれません。
    お手数ですが、もう一度TBしてみていただけないでしょうか。
    よろしくお願いします。

  4. こんにちは。
    源氏物語…なるほど確かに^m^
    「永代院」の一つの世界で時代錯誤な雰囲気に一気に引き込まれました。
    隔離された空間の中に現れる外部の世界ほど異質なものはありませんでしたよね。確かにこの世界は現実ではおかしいのかもしれませんが、その中でも世界は回っていてそれが普通の事で。普通というのはなんなのか分からなくなりました^^;
    神の時代ではなく人の時代。確かにそれで新しい世界が生まれるのかもしれません。でも、この「永代院」という世界の中では、果たしてそれが良い方向へ行くのか…
    物語に余韻を残す宮木さんの世界観はたまらないですよね。
    「雨の塔」私もこの作品を読んで知ったのですがそういえばまだ未読でした・・・。

  5. 水無月さん、こんばんは~!
    TB失礼いたしました;
    もう1度送信してみたんですが、特に変わらず・・・
    なんだか、この間もこんな風になったことありましたよね。。何故。。。
    お手数ですが、該当記事のTB削除していただけたらと思います。
    また今後別記事にTB送らせていただくことあると思うんですが、ちゃんと送れたらいいなぁ・・;;

  6. 苗坊さん、こんばんは~!
    時代錯誤的なお話も結構好きなんですよね。というか、この独特の閉鎖的な感じとか、貴族階級とお話とか、普段自分と接点のない世界の物語ってわくわくしてしまうのですよね。
    なんだか本当に、別に迷惑かけてないんだから放っておいてくれたっていいじゃん!という気持ちもちょっとありつつ、この世界ではこれが普通なんだから邪魔しないで!と思わないでもなかったです。
    小説は小説で、非現実的なことも楽しめるのが魅力だから、普通というか現実的というか、そういうものでなくてもいいですよね!
    あ、苗坊さんも「雨の塔」未読なんですね。私もいつ読めるのかは謎ですが、いつかは絶対読みたいです^^

  7. 独特の宮木作品を堪能できた1冊でした。個人的には、前半と後半の雰囲気が変わってしまって、ちょっぴり残念な気持ちも残ってしまったんですけどね…。
    書かれているように、古くから続いているものを同じように守り続けるということの難しさも感じましたね。

    コメントが遅くなってしまってすみません。そして、水無月・Rさんと同じくTBの方が「???」表示されてしまって;;;申し訳ありませんが、もう一度、送っていただけると嬉しいです。

  8. すずなさん、こんばんは~!
    こちらこそお返事が随分遅くなってすみません。
    TB、なんだかここのところ上手くいかないですねOrz
    もう1度送らせてもらってるのですが、もし上手く送信できてなかったらお手数ですが削除していただけたらと・・・;;

    宮木作品、幅が広くて好みが分かれるものも個人的にはあるんですが、ずっとこの不思議な世界に浸っていたいような気もしたし、小説だからこそ作り上げることのできる世界観というのをもっと堪能できたらよかったですね。

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