「死にぞこないの青」 乙一

僕はマサオ。新たに赴任された担任は、若い優しそうな先生だった。

引っ込み思案な僕は、ある時から先生に叱られてばかりになる。

「マサオ、お前が真面目に授業を受けないからみんなの宿題を増やすぞ」

「マサオ、お前がしっかりやらないから」「マサオ、」


久しぶりの乙一作品。
「いじめ」と認識されない、認識させないいじめの話。

最近読んだニュースで偶然同じようなケースが取り上げられていて驚きました。
本書の舞台は学校でしたが、ニュースは会社での出来事でした。
課長とか、上司クラスの人がちょっと大人しかったり、おどおどしてたり、ターゲットにしやすい人を選んでその人にだけ厳しくして、それ以外の人には優しく接する。
すると、周りの人はみんな「単にその人ができないから厳しくされるんだ」と思い込むようになり、ターゲット以外の人にとっては優しくていい上司に見えるから慕われる。
そうすると集団の団結力も高まるから、上司自体の評価も上がる。

一人の犠牲、いわば生贄のもとに成り立つ世界です。
こういうのって、エグいですよね。
ターゲットにされた本人自身も、「自分に駄目なところがあるから」と思ってしまう部分があるし、あとは自分の感情を麻痺させるか、理不尽だと憤るか、そこから逃亡するかしか道がない地獄。
「いじめ」と本人にも周りにも認識させない、下手するとそれをしている者ですらいじめだと思ってもいないところが、非情に怖いです。

結局のところ、上に立つ者が力不足なこと、周りの評価を気にしすぎることが原因なんじゃないでしょうか。
自分の地位を向上させようとした時に、自分が上がるのではなく、誰かを落とすというのは楽ですよね。
誰かを落としたところで、実際の自分の位置は上がってないのだけど、相対的な見方しかしていないと自分が上がったような錯覚に陥れる。そんな単純な話ではないかもしれないけれど、そういう部分もある気がします。

本書のラストでも救いとして示されていたように、ある程度絶対的な自分の軸を持つってことが、生き抜くためには必要なのかもしれないですね。
まるで違う内容の本を読んだのに、最近読んだ本と行き着く感想が同じっていう不思議。きっと、今の自分に必要なことだからなんでしょうね。

★★★

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