「夏と花火と私の死体」 乙一

とある夏の昼下がり。幼く無垢な殺人者の手によって、9歳の少女が死にました。
見つかったら大変。死体を隠さないと。一体どこに隠せば安全だろう?
幼い兄妹のスリル満点の大冒険の始まりです。


前から気になっていた乙一さん。たまたま手に取ったこの本が、デビュー作でした。
なんでも第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作品らしいです。
面白いことをしてるなぁというのが第一印象でした。自然体でいて非日常、残酷でいて美しい。中でも「わたし」が花火を見る場面。
背筋がぞくりとしながらも、美しい情景だと思いました。

斬新だと思ったところは、物語の視点。
よく晴れた夏の日なのに、ある時点から温度が急に下がって、蝉の声も遠くなったような感覚。背中がもぞもぞします。
子どもの視点で物語が進められているのもポイントの1つではないでしょうか。
殺人を犯すと、大人は保身のために隠すでしょう。将来のことを、家族のことを考えながら。ところが子どもは違います。両親が大切にしている壷を壊した時と同じように、見つかって怒られるのが怖いから隠すんです。
そんな小さい頃に抱いたことのあるドキドキ感が透明なまま蘇ります。

著者がこれを書いたのは16歳の頃のことだそうで、その早熟さには驚かされますが、16歳だからこそ書けた作品だというような気もします。
もう1つの物語である「優子」にも共通することだけど、全体をベールのように包むある種の哀しさが独特な雰囲気をかもし出していました。

★★★☆

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