「シューカツ!」 石田 衣良

「就職する企業によって、一生の仕事が決まるだけでなく、生活程度やつきあう人間や住む場所まで、ほぼ決まってしまうだろ。まだまだ終身雇用は根強いし、会社にはいるのって、世界をまるまるひとつ選ぶようなものだから」
だからこそ、悔いがないように。

大学三年の春、私たちのシューカツはスタートした。

久々の石田衣良さん。
石田さんは、時代を形にするのがお上手ですよね。
就職活動でもなく、就活でもなく、シューカツ!
装丁も素敵で、とても濃かったシューカツの頃を思い出しました。
といっても、私は新卒のゴールデンチケットを捨ててるので、
真面目に就職活動をしたのは転職活動時なんですが、それでも主人公たちに共感できる部分、重なる部分はたくさんありました。

一度レールから外れると戻るのが難しい現代だからこそ、就職できなかったら、というプレッシャーは並大抵のものじゃないですよね。
就職なんて縁もあるし、景気の影響だってあるのに、内定を貰えないことがこんなにも人格を否定されているかのように感じるなんて、実際にその場所に立つまで思いもしなかった気がします。
それにしても、大学三年生でスタートする就職活動の世界、なんてシビアなんでしょうね。
私も楽しめる状態になるまでは、就職活動って、ほんとに地獄のようだと思ってました。
面接なんて大の苦手だし、いわゆる常識問題と言われる筆記試験だってさっぱりだし。
それでも、一生懸命自分と向き合いながら将来のことを考えて挑んだ就職活動は、私を何倍も大きくしてくれたように思います。
今だからこそ振り返ってみて思うのは、きちんとシューカツしてよかった、ということ。

私も主人公同様に家族のありがたみを再認識したり、友達のエールに心から励まされたり、時に絶望感に苛まれたりしたのを思い出しました。
作中でいろんな立場の人が登場するのもいいですよね。さすがは物語。
キレイに終わらせすぎてる感は否めないけど、これからシューカツをする人は本書を通してきっと1つはシューカツを乗り切れる秘訣が手に入るんじゃないでしょうか。とはいえ、個人的にはシューカツを終えてから振り返るように読む方が楽しめる気がします。

「シューカツも案外勝った負けたではないのかもしれない。
ぼくたちにとっては初めてぶつかる実社会の壁になる。そこでなんとか折りあいをつけて、社会を理解し、自分を社会に理解してもらう。そういうのもいい経験だろう」 (p45)

★★★★

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