「神の守り人 上&下」 上橋 菜穂子

遠い昔、一人の娘が手にした宿り木の輪は、彼女をサーダ・タルハマヤ<神と一つになりし者>に変えた。
神人となった彼女の圧倒的な力で全土が征服された暗黒の時代を繰り返すことがないよう、語り継がれてきた伝記。その国の名は、ロタ。
国をも揺るがす大きな秘密に関わる少女を助けてしまったバルサは、陰謀と裏切りの闇の中をひたすら駆け抜ける!


毎度のことですが、守り人シリーズは本を開くだけでその世界にじっくり浸れます。
上橋さんの描く世界観が大好き。
主人公の設定もまた、ファンタジーの主人公としては希少ですよね。
弱い主人公が成長していくのでなく、既に厳しい道のりを歩んで稀ならぬ強さを得た主人公。
そんな主人公でも、当たり前ですが悩み迷うんですね。

上橋さんもあとがきで述べてますが、私もバルサがとてもとても好き。
繰り返される歴史の不思議さと風化されていく伝記。
南北問題や人種差別など、一筋縄にいかない問題がとてもリアルでした。
冬を越えられないかもしれない北部を救うために、南部への増税を提案する王。不平等だと訴える南部の領主。
「平等・不平等をいうのなら、土地が、まず平等ではないのだ」と強く返す王の言葉が心に刺さりました。その通りなんだよね。

本当の意味での平等なんてありはしないんだから、優しさをもって窮地にいる人を助ける姿勢をきっと忘れたらいけないんだと思います。
得られるはずの自分の利益が減るのはもちろん辛いけど、人として生きるってそういうことなんじゃないかなと。
誰もが自分の正義を持っていて、それを主張し、押し通そうとすれば、争いは避けられないのかもしれませんね。
かといって、我慢できる人が我慢する、なんていう方法では限界があるだろうし。今回の出来事は起こるべくして起こったことなんだろうけれど、どうすれば防げたかなんてまるで思い浮かばない。

それにしても、世界観が素敵すぎて、その描写に感動させられました。
とくにユグドラシル。鳥肌立ちます。
今作も本当にいい作品でした。多くの人に読んでもらいたいシリーズです。

「絶望するしかない窮地に追いこまれても、目の前が暗くなって、魂が身体を離れるその瞬間まで、あきらめるな。
力を尽くしても報われないことはあるが、あきらめてしまえば、絶対に助からないのだからね」
  (<上> p294)

★★★★☆

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