「遠くでずっとそばにいる」 狗飼 恭子

27歳の朔美は、会社を辞めた日に事故で10年分の記憶を失った。
高校時代の部活仲間を頼りに思い出を辿っていくが、浮き彫りになるのはどこまでも孤独な自分。
会いたい人がいるはずもない彼女に贈られた、差出人不明のバースデーカードは、思いもよらない事故の真実を明らかにする。


久々の狗飼さんの新作。
多感な時期に愛読した、大好きな作家さんの1人。
彼女の感性がすごく好きです。ただ、作品を重ねるごとに尖った感性みたいなものが薄らいできたような気がして、徐々にフェードアウトしていました。
それが、久々に読んだこの作品はすごくすごくよかったです。
彼女の集大成かと思うくらい。

10年分の記憶をなくした27歳の彼女の物語は、ミステリー要素も混ざっており、読み応えがありました。
ヒリヒリするようなこの感覚は、燃えるような恋愛をした時の痛みを思い出すからかもしれない。
彼女の核みたいなものはきっと昔から変わっていないんでしょうね。
それが作中のいたるところに感じられて、嬉しかったです。
感情がともなう恋愛って、やっぱりきっと、どうしても「痛い」んでしょうね。
単純に相手を大事に思うだけで済めばいいのに、
独占欲とか、嫉妬とか、いろんな感情が伴うから難しい。

「彼女」の行動は、わかりすぎるくらいに理解できて、不器用だなあと思うとともに、ちょっと自分と似てるななんて思ったりもして。
狗飼さんの小説は、いつも温度を感じられていい。
今までの作品にも好きなものはたくさんあるけど、この作品が今は一番好きかもしれない。

あのさ、虫が火に飛び込むのって馬鹿みたいって、思う?
火に飛び込んだら絶対死んじゃうでしょう。
なのに火に惹かれてしまうなんて、生き物として何か欠落しているとしか思えないよね。


だけど、もしすべての虫が火にものすごく大きな恋心を抱いているとしたら、どうだろう。
それでも、飛び込むのって馬鹿みたいって思う?
わたしは飛び込まないことのほうを、意気地なしだって思うよ。
  (p300)

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