「八日目の蝉 」 角田 光代

逃げて、逃げて、逃げのびたら、
私はあなたの母になれるだろうか―――
” 理性をゆるがす愛があり
罪にもそそぐ光があった “

帯に書かれた言葉があまりに魅力的に物語を表していて、
読む前から惹かれ、読中は頭に浮かび、読了後は余韻とともに噛み締めました。

女性の襞について書かせたら、角田さんほど絶妙に書ける人はそうそういないんじゃないでしょうか。
そう思うくらいに、内面をえぐられます。
思い通りにいかない。どうして私が。もしも―だったら。

誰もが幸せになりたくて、それなのに現実は厳しくて、もがいてもがいて、それでも必死に生きている。
他人から糾弾されるようなこと、社会で断罪されるようなことでも、そうせずにはいられなかった。そういった数々のことが、物語の中に転がっています。
わかる、とは思わないけれど、もしも同じ立場になったら私もそうしないとは言い切れない。

同じように、もしも彼女が違う立場にあったなら、犯さなかった罪かもしれない。そう考えると、とても切ない。
タイトルになっている「八日目の蝉」のエピソードもいい。
物語終盤で頭によぎる海と、空と、雲と、光と、木と花とがあまりにきれいで、ああこれが8日目の蝉が見た景色かと思わずにいられなかった。
終わりの、その先。
そこにもこんなにも美しいものがあるんだと、光に溢れる物語に心が震えるようでした。

この物語には確かに、
理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。

遠ざかれば遠ざかるほど、色鮮やかになる。
人の記憶とは、なんと残酷なんだろう。  (p343)

★★★★★

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