「下流の宴」 林 真理子

東京の中流家庭の主婦として誇りを持つ由美子。
高校中退の息子がフリーター娘・珠緒と結婚宣言をしたことで「うちが下流に落ちてしまう」と恐怖を覚え、断固阻止を決意する。
一方馬鹿にされた珠緒は「私が医者になります」と受験勉強を開始して―切実な女の闘いと格差社会を描いた傑作ベストセラー小説。


人物描写が絶妙。最高のエンターテイメントでした。
私はきっと、母由美子と、息子翔の間の世代。
まるで違うこの二つの世代の感覚が、どちらもわかるような気がします。
本当に上流の人は、下なんて見ない。
中流が当たり前だった時代がおわり、上にいくか、下にいくか、格差が広がる今だからこそ、この小説は生々しい。そして、痛いところをついてくる。
親はきっと、そんなすごいことを望むわけじゃない、普通の幸せを手に入れてくれたら、そう思うでしょう。

ところが今、就職するのも、車を買うのも、結婚式をあげるのも、「普通」のことではなくなっている。それに気付かない親世代は、案外多い。
そして、子育ての失敗で悩む親も少なくないと聞く。
でもそんな親世代に言ってあげたい。これは「時代」なんだと。

努力すればそれだけ選択肢が広がる。
いつの時代も定理でしょう。ただし、努力するにはモチベーションが必要だ。
~したい、~になりたい、~が欲しい。
あるいは、それがポジティブなものではなく、「見返したい」なんていうものでも、自分のためではなく、「親に楽をさせたい」なんていうものでもいい。
人は、動機なしには頑張り続けられない生きものなんだと思います。
のびしろの少ない時代は生きにくい。それでも、希望がないわけではない。
希望は、人との関わりから生まれるものなんだと思います。
全力でその人を応援してくれる人がどれだけいるか、でその人の可能性は変わってくるようにも思います。

ただし、最後に変えるのは自分。努力をするのも自分。
痛々しいけれど、すかっとする。時代を描いだ良本でした。

なんかさ、私、一本筋が通ってないとさ、愛も長持ちしないような気がすんんだよね。  (p160)

人ってさ、一生懸命やってる人にはさ、何か手を貸してやりたくなるんじゃないかな。 (p414)

★★★★

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