「エンキョリレンアイ」 小手鞠 るい

何もいらない、ただあなたに会いたい。
22歳の誕生日、書店アルバイトの桜木花音は、アメリカ留学を翌日に控えた井上海晴と、運命の恋に落ちる。

やがて、遠く遠くはなれたふたり、それでもお互いを思わない日はなかった。
東京/NY10000キロ、距離を越え、時間さえ越えて、ことばを通わす恋人たちを待つのは驚きの結末だった。


本屋のアルバイト中に出会ったあの人は、
翌日にはアメリカに行ってしまう人だった。
そんな人に、恋をした。それは、運命の恋だった。

詩人だという作者の比喩をはじめとした表現があまりに素敵で、
どこか幻想的にも思えるその描写にすぐに引き込まれました。
「そんな風にして、あのひととわたしはつながった。果てしなく広い海で、巡り合えた二匹の魚のように」
「あのひとは笑った。春の木漏れ日のような笑顔」
「そこにあのひとの視線を感じて、そのちょうど下にある心臓が、飛魚のように跳ねた」

恋愛をしていると、ちょっとこれは運命かも!なんて思う瞬間ってありますよね。
メールをしようとしたらメールがきたとか、物語の中の電話の件もそう。
私も遠距離恋愛をしていたことがあるから、わかるなーと思う部分もたくさん。
物理的に近くにいなくても一緒に生きている感覚もわかるし、
心から信じていても物理的な距離に負けそうになることもあるし、
ベタなストーリーかもしれないけど、共感する瞬間がぎゅっと詰まった物語でした。

そして、何より切ない。
最後を奇跡と見れば、ハッピーエンドかもしれない。
けれど、きっとそれは幻想で、そう思うととても切ない。
どんなに離れていても心は繋がっていられると思うけれど、やっぱり距離に比例してすれ違いはおきやすいですよね。

好きな人とは同じ場所で、同じ時間を生きていきたい。
会社について、登場人物について、大筋以外の内容もとても興味深い。
言葉も美しいし、景色も美しいし、週末の夜にいい余韻が残りました。

あのひとは、晴れた海。
この世でただひとり、わたしに「確かなものはある」と、信じさせてくれた人。  (p59)

★★★★

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