「イン・ザ・プール」 奥田 英朗

「いらっしゃーい」
伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。
色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。
そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。
プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。
こいつは利口か、馬鹿か。
名医か、ヤブ医者か。


「いらっしゃーい」
と、やけに明るく甲高い声を発するのは、医学博士・伊良部一郎。
病院の地下にある一室で神経科医をしている。
心身症、陰茎強直症、被害妄想、携帯依存症などなど、彼のもとへ訪れる患者は様々な悩みを抱えている。
それに対してこの伊良部医師、びっくりするほど素っ頓狂な対応ばかり。
それ故どの患者も、ここに来たのは間違いだったか、という考えが頭をよぎる。

とはいえ、だめ医者かというとそうではない。
どこかピンとがずれてる、型破りな医師を見ていると、なんだか真面目に考えるのがばからしくなるような気さえしてくる。
気づけば患者は皆、伊良部ワールドにはまっているのです。
治療に必要なものがなんなのか、見えるようですね。
肩を張っていたり、疲れていたりする時に読んだら、ふっと息が抜けるかも。

時折イラッとさせられるけれど、憎めない。
たまにはこんな短編集もいいですね。

「でもさ、そういう病って否定しても始まらないからね。肯定してあげるところから治療はスタートするわけ。眠れない人に眠れって言っても無理でしょ。眠れないなら起きてればいいって言えば、患者はリラックスするじゃない」   (p177)

★★★

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