「物語ること、生きること」 上橋 菜穂子

物語にしないと伝えきれないものを、人は、それぞれに抱えている。
「獣の奏者」、「守り人」シリーズの著者が語る、作家になるまでにたどってきた道程。
原体験となった祖母の昔話から、自作の誕生秘話までを語る。

読むことの喜び、書くことの喜び、そして生きることの喜びを教えてくれる一冊。

大好きな上橋さん自身の物語。
「どうやったら作家になれますか」という問いには、具体的な書き方の技術でなく、どんな人がどんな風に思って、どのようにして作家になったかという物語が一番の答えになる。

上橋さんの生き方を丁寧に紐解いていますが、ふいにエリンやバルサの欠片を見つけて嬉しくなりました。
私の好きな作家の方たちはよく、物語について、書かずにはいられない、と言います。
上橋さんもそんな、作家としての性の持ち主だったのでしょう。
ただ、そんな人たちがすべて作家になれるわけではなく、一歩踏み出す勇気が必要なんでしょうね。

私も祖母や祖父との幼い頃の思い出は何にも代えがたい宝物ですが、そんなことをふと思い出しました。
小さい頃に毎日母が寝る前に読んでくれた絵本のことも思い出します。
甘ったれの幸せな子どもで、このままじゃ作家になんて絶対なれないと思っていた上橋さんが、人に笑われても一心に努力する偉人たち(偉人伝)に励まされたり、同じものを見て人とは違う見方をするかだということに気付いたりするエピソードも印象的でした。

彼女の生い立ちを知ることで、どうしてあんな素敵な物語が生まれたかに触れることができて幸せです。
心に残る人生観も数多い。それにやはり、言葉が美しくていいですね。
著者をはじめ、この本を世に出してくれた方々に感謝です。

少なくとも、生きているあいだ、人の幸せとなる何かを生み出せるなら、それはそれで、意味があるのではないか。
自分も、そんなふうに何かをなしえる人になりたいと願った。
(p45)

★★★★☆

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