「ポケットに物語を入れて」 角田光代

本は、開くとき、読んでいるときばかりではなく、選んでいるときからもう、しあわせをくれるのだ。
まるで旅みたい。読書という幸福な時間をたっぷりつめこんだエッセイ集。

本が好きな、あなたへ。

今まで書かれた文庫本などの解説や書評が詰まった、角田さんのブックガイド。
言葉の端々から、本が大好きでたまらないという想いが溢れ出ていて、思わず、わかるよわかる!と共感の嵐でした。

私はやっぱり書店が好きだ。本の声がする。ちいさな、でも私だけにしっかり届く声で、ひそひそ、ひそひそと読んでいる。本との縁というものを感じるのは、やっぱりリアル書店なのである。

古本屋に通ううち、ある不思議な印象を持つようになった。自分の嗜好、好みを中心とした、不思議としか言いようのない糸が張り巡らされていることに気づくのである。これは新刊書店では絶対にあり得ないことだ。

本好きの方なら、覚えがあるんじゃないでしょうか。
心の底から共感して、角田さんが同じ感性を持っていることが嬉しくてしかたなかったです。

紹介されている本の数々がまた、素晴らしい。
角田さんというフィルターを通して知る本はまた格別です。読んだことのない本が多かった分、読みたい本が増えました。
特に開高健さんや忌野清志郎さんについては、熱く語られていて、知れば知る程ものすごい方だと驚きました。読むならそれこそ旅行中など、日々の喧騒から離れたところでじっくり読みたいところです。

本を通して開かれる扉は数多くありますが、角田さんもまた失うこと、生きること、信じられるものなど様々なことと向き合ってきたのが感じられます。
これは、本書の中でも好きな一文。

失うことは、マイナスでもプラスでもなく、何かを持っていたという証である。いとおしむべきたいせつな何かを、確実に私たちは持っていた。その何かは、私とともに在ることによって、私自身を変容させた。失うことでいくら泣いたっていい、自分を責めたっていい、でも自身の内の変容は、他者(ときに動物、ときに光景)とかかわったことによって生じた変容は、消えることがない。そのことを私たちは知らなければならない。その「持っていた」証拠、自身の変容こそが、あとがきで作者のいう「宝物」なのではないか。私たちが平等に持ち得る、もっともすばらしいもの。

角田さんの感性が大好きです。

大人になって異国を旅するようになって、ひとつ、気づいたことがある。私たちの国では、平等と共通が同義になってしまっている、ということだ。個性をのばせなどと言われるわりには、みんなと違うことをしても褒められたりはしない。 (p214)

★★★★☆

Pocket

トラックバックURL

トラックバック一覧


1.ポケットに物語を入れて 角田光代

ポケットに物語を入れて著者:角田 光代小学館(2014-05-28)販売元:Amazon.co.jp オススメ! 本は、開くとき、読んでいるときばかりではなく、選んでいるときからもう、しあわせをくれる ...


「ポケットに物語を入れて」 角田光代” への2件のコメント

  1. こんばんは。
    好きな作家さんが自分が読んでいる本を読んでいたら嬉しいですよね。更に感想が似ていたら本当に嬉しい。私も読みたい本が増えました^^
    中でも開高さんの作品が気になりました。熱く語られていましたよね。
    自分の好きな本だけだとどうしても偏ってしまうので、視野も広げられるのでありがたいです^m^

  2. 苗坊さん、こんばんはー!
    そうなんですよー好きな人が同じような感覚を持ってるというそんな一面が知れるだけで嬉しくなります。そして、あんまりにも魅力的に楽しげに書かれるものだから、私も読みたい本が増えました;;
    開高さんの本、この本を読んで気になるなっていう方が無理ですよねぇ・・!
    というか、今別の作家さんのブックガイドというか、エッセイを読んでいるのですが、なんとそこでもこの本で紹介されていた開高さんの本が登場して!これはもう読むしかないんじゃ・・・と思って、次の旅行の時に持っていこうと企ててます。
    自分だけだと選択が決まっちゃうので、違う人の、それも自分の好きな人のおすすめを知るのは楽しいですね^^

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。