「一の糸」 有吉 佐和子

酒屋の箱入娘として育った茜は、17歳の頃、文楽の三味線弾きの弾く一の糸の響に心奪われた。

独身を通した茜は、偶然再会した男の球根を受け入れ、後添えとなるのだった。
大正から戦後にかけて、芸道一筋に生きる男と愛に生きる女を描く波乱万丈の一代記。


戦前から戦後にかけて、「文楽」という私の知らない世界で、芸に生きる人々の粋な様子と、愛に生きる茜のひたむきさに引き込まれました。
たくさん泣いたし、余韻がしばらく消えなそうです。

口下手で根っからの芸人で、なんて奴だと思うこともある徳兵衛だけど、理屈じゃなく茜が恋に落ちる瞬間、盲目にそれを追い掛ける過程を見ていると、何割増しにもいい男に思えてしまう。
実際、一芸に秀でている人、譲れないものがあって自身を磨き続ける人というのは格好いい。
それに、徳兵衛なりに茜に深い愛情があることが垣間見える場面では、きゅんとします。

登場人物は昔ながらの粋な人が多いですが、茜の母が中でも印象深いです。強く賢くたくましい女性。
一冊で人の一生が見える。時代の移り変わりを感じられる。
そんな一冊だからこそ、するりと時間が経過してしまう部分もあるけれど、行間には濃い時間が流れていて、その月日を思うと気が遠くなる程。

世間一般のルールとは違うかもしれないけれど、茜にも徳兵衛にも共通して自分のルールがあって、それを大事に守っているところが心に残っています。
世間に流されず自分ルールを守るためには、強くあらねばならないものですね。
文楽にも興味を持たせてくれる素敵な1冊でした。

★★★★☆

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