「紙の月」 角田 光代

何不自由ない、けれど時に違和感がよぎる夫との生活。
もし、あの日、あの人に付いて行かなければ、
もし、あの時、あんな風に手をつけなければ、
もし、、、
たくさんの「もし」を越えて、ついに果てしなく遠いところへ流された梨花は…――。


一度転がり始めたものを止めるのが難しいように、物語はぐんぐん進む。

あっという間に読みきったけれど、とても、怖かったです。
読みながら梨花の万能感を共有してみたり、手に入れたい服や化粧品を次から次に買う光悦感を味わったりもしましたが、最後は体の芯から冷たくなるくらいに怖くなりました。

もしかすると、大きな事件を起こした梨花と自分を隔てているのはほんの些細な何かで、自分も容易くそちら側にいってしまうかもしれない、なんて思う程、梨花の誤ちは日常と地続きで、たわいもなく染まっていってしまったから。
梨花だって、きっとこんな事件を起こすと思っていなかった。むしろ、事件の渦中においてすら、そんな風に思っていなかったのだから。
私たちが社会で生きるにおいて「お金」の力は大きい。

お金が湧水のようにあれば、なんだって買える。一方で、お金があったところで何も手に入らない、あるいは残らないということがある。
それなのに、私たちは簡単にお金に支配されてしまう。
そのことが、なんだか悔しいような、苦い気持ちになるのです。
そんな呪縛から逃れるためには、月並みかもしれないけれど、地に足をつけて生きること、が必要なのかもしれないですね。

装丁も本書の雰囲気にぴったり。さすが角田さんだなと何度か泣きたくなるような気持ちになりながら読み終えました。

お金というのは、多くあればあるだけ、なぜか見えなくなる。
なければつねにお金のことを考えるが、多くあれば、一瞬でその状態が当然になる。 (p300)

★★★★☆

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