「よあけ」 ユリー・シュルヴィッツ

しんと静まり返った、夜明け前の湖のほとり。おじいさんと孫が、毛布にくるまって寝ています。
すると、一瞬さざ波が立ち、すべてが動きだします。

コールデコット賞を受賞した画家が、夜明けのひとときを見事に表現しました。
一場面一場面が心に焼き付く、大切に持っていたい写真集のような絵本。
瀬田貞二の訳文も見事です。

大人にこそ、手にとって欲しい絵本です。

とある湖の、夜から朝への物語。

ページを捲るたびに心が静かに、澄みわたる絵本です。 続きを読む

「ハケンアニメ」 辻村深月

伝説の天才アニメ監督王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。
プロデューサー有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。
同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と人気プロデューサー行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。
ネットで話題のアニメーター、舞台探訪で観光の活性化を期待する公務員…。

誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び、新たな事件を起こす!

これがお勧めでなく、何がオススメか。

まだ、じーんと余韻が残っていて、目頭が熱いです。
文句なしの最高傑作。読めて幸せでした。 続きを読む

「黄金の烏」 阿部智里

八咫烏の一族が支配する世界山内で、仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害が報告された。
その行方を追って旅に出た、日嗣の御子たる若宮と郷長のぼんくら次男雪哉が、最北の地で発見したのは、何と村人達を襲い、喰らい尽くした大猿だった。
生存者は小梅と名乗る少女がひとりだけ―。

一体、この世界で何が起こっているというのだろう?

一体、どこまでおもしろくなるんだろう。

前作がこんな風に布石になっていたとは。
そして、ここにもきっと次作への布石が散りばめられているんだろうと思うと、本当に読み進めるのが楽しみで仕方がないシリーズです。
少しずつ見えてきた八咫烏の世界の全容。
真の金烏と呼ばれるものの存在も、今作でようやく見えてきました。しっかりとした世界観に裏打ちされたファンタジー設定。身悶えするほどツボです。

(この先、ネタバレ含みます) 続きを読む

「ビブリア古書堂の事件手帖4」 三上延

珍しい古書に関係する、特別な相談――
謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。
その古い家には驚くべきものが待っていた。
稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクション。それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。

金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいた。
そして、迷宮のように深まる謎はあの人物までも引き寄せる。美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの様相を呈してくるのだが――。

やっぱり大好きです、このシリーズ。

久しぶりのビブリア古書堂シリーズ。今回はついにあの人が登場。
じれじれだった二人の関係にも動きが見られ、江戸川乱歩を主軸に綴られた長編はものすごく、おもしろかったです。
今までで一番好きかもしれないくらい。 続きを読む

「神様のカルテ2」 夏川 草介

栗原一止は、夏目漱石を敬愛する信州の内科医だ。
「二十四時間、三百六十五日対応」を掲げる本庄病院で連日連夜不眠不休の診療を続けている。

四月、東京の大病院から新任の医師・進藤辰也がやってくる。
一止と信濃大学の同級生だった進藤は、かつて“医学部の良心”と呼ばれたほどの男である。
だが着任後の進藤に、病棟内で信じがたい悪評が立つ。失意する一止をさらなる試練が襲う。
副部長先生の突然の発病―この病院で、再び奇蹟は起きるのか。

「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬だ。」

きっと泣くと思ってましたが、やっぱり泣きました。
私、夏川さんの本すごく好きです。 続きを読む

「だれも知らない小さな国」 佐藤 さとる

こぼしさまの話が伝わる小山は、ぼくのたいせつにしている、ひみつの場所だった。
ある夏の日、ぼくはとうとう見た――小川を流れていく赤い運動ぐつの中で、小指ほどしかない小さな人たちが、ぼくに向かって、かわいい手をふっているのを!

日本ではじめての本格的ファンタジーの傑作。

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「絶望がやがて癒されるまで―精神科医が語るこころの処方箋」 町沢 静夫

純粋ゆえに、真面目ゆえに、抱えこんでしまう哀しみ、不安、孤独は、柔らかな思考と感性でくぐり抜けられる。
臨床精神科医が数々の治療実践をもとに解明する。

巻末に吉本ばなな氏との対談を特別収録。

絶望に悩むすべての人へ

去年の秋は、どうしても気持ちが落ち込んで、何も手につかない苦しい日々を送っていました。
その時期、縋るように繰り返し読んだのがこの本です。
精神科医が語る「絶望とは」そして、絶望と向き合ってきた歴史上の人物の話、吉本ばななさんとの対談まで幅広く書かれています。 続きを読む

「アリの町のマリア 北原怜子」 松居 桃楼

貧困にあえぐ「アリの町」で、人々の心のマリアとなった北原怜子。
戦後の荒廃のなかで、ひたすらの愛だけに生きた彼女の29年の生涯を描く。

知らなかった戦後日本の一幕を垣間見ました。

アリの町のマリア、北原怜子さんを知っていますか?
年配の知り合いの方に強く勧められて本書を読んで、とても衝撃を受けました。
日本にもこんな、マザー・テレサのような方がいたことに。
奇しくも彼女は去年、教皇フランシスコより「尊者」という敬称がつけられたとのこと。 続きを読む

「書斎の鍵 (父が遺した「人生の奇跡」) 」 喜多川 泰

2055年、東京。
大手医療機器メーカーに勤める浩平は、疲れたような毎日を送っていた。
そんなある日、突然受け取った父の訃報。
生前、親交が薄れていた父が、浩平に残した唯一の遺産、
それは、鍵がかかったままの「書斎」だった……。

書斎を手に入れたとき、あなたの人生は変わります

読み終わって、まだ胸がドキドキしています。 続きを読む

「私にふさわしいホテル」 柚木 麻子

文学新人賞を受賞した加代子は、憧れの“小説家”になれる…はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドル。
すべての注目をかっさらわれて二年半、依頼もないのに「山の上ホテル」に自腹でカンヅメになった加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる。大手出版社に勤める遠藤から、上の階で大御所作家・東十条宗典が執筆中と聞き―。

文学史上最も不遇な新人作家の激闘開始!

本好きにはたまらない、最高のエンタメ小説

主人公は小説家を目指す31歳の女性。ところどころ現実とリンクしていて、途中、思わずにやり・・・どころか心の中で思いっきり笑いました。 続きを読む