「烏に単は似合わない」 阿部 智里

人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」で、世継ぎである若宮の后選びが始まった。
朝廷で激しく権力を争う大貴族四家から遣わされた四人の后候補。

春夏秋冬を司るかのようにそれぞれ魅力的な姫君たちが、思惑を秘め后の座を競う中、様々な事件が起こり…。

史上最年少松本清張賞受賞作。

綿密な設定が光る、次世代ファンタジー

これが、20歳の当時現役大学生が書いたデビュー作ですって・・・?読んでいるときは夢中でしたが、思い返すと、正直、鳥肌が立ちます。
世界観が確立されていて、ものすごいどんでん返しもあって、描写も美しくて・・・重ねて書くけど、これがデビュー作ですって・・・?! 続きを読む

「異郷の煌姫〈1〉―デルフィニア戦記 第2部」 茅田 砂胡

デルフィニアの内乱に勝利し、ウォルは再び玉座に即いた。
黄金の戦女神とたたえられたリィもまた王女の称号をもって白亜の宮殿に迎えられた。
それから三年―平穏だった王都に暗雲が立ちこめる。

リィをつけ狙う不気味な暗殺者。不可解な公爵家の挙兵。陰謀を察知したウォルの決断とは。

さあ、新しい時代の幕開けです。

第1部、ウォルが王座を奪還した3年後の物語です。
好きなキャラクターがいる物語は、本を手にするだけでわくわくします。 続きを読む

「龍と魔法使い〈1〉」 榎木 洋子

タギはフウキ国の[七賢人]に属するエリート魔法使い。
ある日、風魔鳥に襲われた風龍の卵を守りきったタギは、生まれた子どもの名付け親になることに…。
魔法使いと龍の姫君の大冒険の幕開け!

風龍が守る国が舞台の、ファンタジー小説。
主人公のタギは、七賢人の1人。若干19歳のエリート魔法使いでした。

ケータイ小説では主人公最強モノがよく流行りますが、こちらはそれに先駆けた主人公最強モノです。
「選ばれた者」的な強い主人公に自分を重ねながら読むのは、最高に気持ちいいですよね。
妖獣や龍が生きる広い世界を舞台に、力いっぱい生きる登場人物たちの明るい強さが眩しいです。

1巻目では、タギと風龍の娘シェイラギーニが出会う巻です。
伏線を残しつつ、物語はまだまだ始まったばかり。
個人的に一番好きなのは、ゼルダ姫。
きっともうこの後登場はしないのだろうけど・・・全体的に明るい本書の中で、少し憂いを感じさせる彼女に惹かれるくらいこの本が私には眩しくて。

なかなか口が悪い登場人物が多いのですが、みんな根が素直というか、まっすぐというか、全然嫌な感じがしない。

今読んでも十分に楽しいんだけど、中高生の頃に読んでいたらもっともっと楽しめたのにと思うと、残念で仕方ない。
読む年齢によってはタギかっこいい!となると思われるくらい強くて実は漢気あっていい男なんだけど、読んでいてかわいい、と親心のような目線で読んでる自分に気づいてちょっとだけ凹みました。

とはいえ、この先読み進めていくのが楽しみなので、どんな展開が待ち受けているのかわくわくしながら次巻を手に取りたいと思います。

★★★

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「放浪の戦士 <4> デルフィニア戦記 第1部」 茅田 砂胡

流浪の国王ウォルとリィの率いる軍勢は王都コーラルの目前に迫った。
だが、救出すべき父はすでに亡く、王座奪還の目算も潰えた。欲するは父の敵の首ひとつ―!
同胞相討つ内乱を避け、わずかな手勢で城に乗り込むウォルの運命、そしてデルフィニア争乱の行方は?第1部放浪の戦士篇完結。

ひとまず第一部の完結!
あーおもしろかった!
すごくすっきり爽やかなラストで、胸がすく思いです。

軽口の笑えるやりとりも魅力だけど、魂のこもった長台詞が心に響きます。
読み終わってからまたすぐ読み返したり、何年も経ってもまた読みたいと思わせる程の魅力がありますよね。たぶんきっとまた再読します。

それにしても非日常の物語の中においても現実離れしたリィの荒業には、わくわくさせられっぱなしでした。
ひと段落したとはいえ、もっともっと見ていたい。

という要望に応えるように、まだまだ続きが12巻もあるとのこと。読みたい本があるって、幸せ。

★★★★

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「放浪の戦士〈3〉―デルフィニア戦記 第1部」 茅田 砂胡

緒戦の大勝利に沸く兵士たち。しかし国王の陣幕だけが重く沈んでいた。
軍を解散せよ、さもなくば―敵は養父・フェルナン伯爵を盾にした露骨な脅迫にでたのだ。
大義か?ペールゼン侯爵の専横に屈するのか?苦渋の選択を迫られたウォルは逆転を賭して、バルドウの娘に伯爵救出を託したのだが。

これは、泣ける。泣くなという方が無理だ。

物語の緩急の作り方が絶妙に上手くて、おまけに美しい映像が頭に浮かぶような世界観もよくて、のめり込むようにして読みました。

フェルナン伯爵のお人柄が本当によかった。
この物語には忠義とか信義とか、己の信じる道を突き進む人たちがたくさん登場して、その曲がらない信念に惹かれます。
と同時に、それぞれに譲れないものがあると争いが生まれることもあるし、最近のニュースを見ているとあまり曲げられないのも考えものかもしれないと思うのですが。

だから、リィくらいのスタンスがきっとちょうどいい。
物語はここでまた大きな爆弾を落としてきて、続きが気になるところ。再読だけど、結構忘れていて再び新鮮な気持ちで楽しめてます。

★★★★☆

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「レトリカ・クロニクル 嘘つき話術士と狐の師匠」 森 日向

巧みに言葉を操って、時には商いをし、時には紛争すらも解決する「話術士」。
かつて人間と獣人との戦いに巻き込まれ命を落としかけた青年シン。彼は狐の話術士カズラに助けられ、以来、立派な話術士になるべく彼女と旅を続けていた。
そんなある日、二人はとある部族の紛争に巻き込まれ・・・!
第21回電撃小説大賞“銀賞”受賞作。

ふらっと立ち寄った本屋さんでふいに惹かれて購入したこの本、すごく面白かったです!
偶然にもこんな素敵な掘り出し物を見つけて、読んでる間ずっと幸せでした。
なんというか、最近仕事で緊急対応が多くて心が疲れていたから、苦くも優しいファンタジーの世界に随分癒されました。

主人公は、話術士。
ペンでも剣でもなく、言葉を武器に生き抜きます。
舞台は、人と獣人が暮らす4つの大陸からなる世界。
単なるハートウォーミングストーリーじゃなくて、人の醜い部分、暗い部分も描きつつ、希望を持たせてくれることに何より私自身が救われました。

エピローグがまた良くて、思わず何度も読み返しました。あの台詞がほんと秀逸。
たとえ相手を騙すことになっても、それが本当に相手を守るためなら、自分が傷ついてもそれを貫き通す覚悟を持っていたいものですね。
続編も楽しみにしています。

★★★★

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「放浪の戦士〈1〉―デルフィニア戦記 第1部」 茅田 砂胡

男は剣を揮っていた。黒髪は乱れ日に灼けた逞しい長身のあちこちに返り血が飛んでいる。
孤立無援の男が今まさに凶刃に倒れようとしたその時、助太刀を申し出たのは十二、三と見える少年であった…。
二人の孤独な戦士の邂逅が、一国を、そして大陸全土の運命を変えていく―。


何年かぶりの再読です。
もしかすると10年以上ぶりなくらい。
これは、とにかく心躍るファンタジー。
読みながら思い出すシーンもありつつ、ああ、やっぱり面白い…!!とわくわくしながら読みました。

なんといっても、キャラクターがすごく魅力的。
信念があって突き進む人というのは、なんてカッコよく映るものなんでしょうね。この時代に生きていたら、この人についていきたいと思わせるような、この魅力。
読者だから余すところなく彼らの活躍が見られて、すごく嬉しい。

物語はまだ始まったばかりで、これから大冒険は続くところ。
2冊目を先に入手しておかなかったのを後悔してます。
読み終わった後の高揚感はほんとにやばいというくらい、わくわくしてます。

ずっと再読したいと思っていた本ですが、読み終わってもきっとまた読みたくなること間違いなしです。

男は一人でいることを強要されて、少女はひとりぼっちで放り出されて、自然と寄り添う相手を探していたのかもしれない。  (p95)

★★★★☆

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「夜の写本師」 乾石 智子

右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠を持って生まれた運命の子。
幼いころに大きな喪失体験をした彼はやがて、<夜の写本師>として世界一の魔導師に挑む。これは、千年以上の時を経た壮大な物語です。



ブックレビューサイトのレビューを通して知ったこの本、ずっと気になっていたのですが、先日図書館で偶然見つけてすぐに借りてきました。
これがデビュー作だなんて信じられないくらい濃厚なファンタジー小説です。

ファンタジー好きにはたまらない、しっかりと確立された世界観、体系的な魔術の数々、運命的な巡り合わせ、深い闇などなど、心をひたすらくすぐります。
夢あふれるファンタジー小説というより、これは「ゲド戦記」に近い闇の色が濃いファンタジー小説でした。なかなか残酷で、結構怖い。映像化したら美しい場面も数々あるけれど、ホラーになるかもしれない場面もあって、そのバランスがまた絶妙。

嬉しいことに、どうやらこれはシリーズが出ているようで、この世界をまだまだ楽しむことができるよう。
大人になっても一気に心を異世界に飛ばしてくれるファンタジーはやっぱりいいと改めて嬉しく噛みしめた1冊でした。
写本をはじめ、本好きには嬉しくなる設定もたまらないですね。

ファンタジー好きの方には、ぜひともお勧めの1冊です。

われらは常に闇と隣りあわせている。ときおりその扉がひらいて暗黒の風にすべてを奪われたような気になるが、奪われたものばかりを見つめてはいかん。決して滅びえないもの、誰にも侵すことのできないものをこそ信じていかなくてはな。 (p233)

★★★★★

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「白鳥異伝」 荻原 規子

遠子と拾い子の小倶那は双子のように育った。
だが、小倶那は都に出、大蛇の剣の主となり、勾玉を守る遠子の郷を焼き滅ぼしてしまう。
「小倶那はタケル、忌むべきものじゃ」大巫女の託宣を胸に、遠子は彼を倒すため、勾玉を連ねた「死」の首飾りを求めて旅立つが…?
ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジー。


約10年ぶりに再読。
勾玉シリーズで一番好きだったのが、本書。
久しぶりに読んでもやっぱりよくて、久々に寝るのを惜しんで読みました。

運命に翻弄されつつ、ひたむきに生きようとする人々が織り成す物語。
壮大な和風ファンタジーです。
勾玉を集める旅はまるでRPGゲームのようで、そのファンタジー色の強い世界観に魅せられます。
加えて人物が誰も魅力的。読んでいて何度か泣かされました。
人は様々な一面を持っている生きものだと思いますが、それらが丁寧に書かれているからこそ読んでいて身近にも、愛おしくも感じるんでしょうね。
弱い一面と強い一面、好ましい一面と好ましくない一面。
思わずハッとさせられる場面がいくつあったことか。

以前読んだ時はただただ、そのファンタジーの魅力や人物描写に惹かれたけれど、改めて読んでみるとテーマの1つに「愛情の形」があることに気づきます。
本書には本当に様々な愛情の形で溢れていて、どれが良くてどれが悪いというものではないけれど、考えさせられるものがありました。
相手を想うこと、向き合うこと、一緒に生きることの大切さに触れられます。

「知るということは分けあうということよ。
たとえわたしに何もできないとしても、知る者がいるだけでちがってこないかしら」  (p350)

★★★★★

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「神の守り人 上&下」 上橋 菜穂子

遠い昔、一人の娘が手にした宿り木の輪は、彼女をサーダ・タルハマヤ<神と一つになりし者>に変えた。
神人となった彼女の圧倒的な力で全土が征服された暗黒の時代を繰り返すことがないよう、語り継がれてきた伝記。その国の名は、ロタ。
国をも揺るがす大きな秘密に関わる少女を助けてしまったバルサは、陰謀と裏切りの闇の中をひたすら駆け抜ける!


毎度のことですが、守り人シリーズは本を開くだけでその世界にじっくり浸れます。
上橋さんの描く世界観が大好き。
主人公の設定もまた、ファンタジーの主人公としては希少ですよね。
弱い主人公が成長していくのでなく、既に厳しい道のりを歩んで稀ならぬ強さを得た主人公。
そんな主人公でも、当たり前ですが悩み迷うんですね。

上橋さんもあとがきで述べてますが、私もバルサがとてもとても好き。
繰り返される歴史の不思議さと風化されていく伝記。
南北問題や人種差別など、一筋縄にいかない問題がとてもリアルでした。
冬を越えられないかもしれない北部を救うために、南部への増税を提案する王。不平等だと訴える南部の領主。
「平等・不平等をいうのなら、土地が、まず平等ではないのだ」と強く返す王の言葉が心に刺さりました。その通りなんだよね。

本当の意味での平等なんてありはしないんだから、優しさをもって窮地にいる人を助ける姿勢をきっと忘れたらいけないんだと思います。
得られるはずの自分の利益が減るのはもちろん辛いけど、人として生きるってそういうことなんじゃないかなと。
誰もが自分の正義を持っていて、それを主張し、押し通そうとすれば、争いは避けられないのかもしれませんね。
かといって、我慢できる人が我慢する、なんていう方法では限界があるだろうし。今回の出来事は起こるべくして起こったことなんだろうけれど、どうすれば防げたかなんてまるで思い浮かばない。

それにしても、世界観が素敵すぎて、その描写に感動させられました。
とくにユグドラシル。鳥肌立ちます。
今作も本当にいい作品でした。多くの人に読んでもらいたいシリーズです。

「絶望するしかない窮地に追いこまれても、目の前が暗くなって、魂が身体を離れるその瞬間まで、あきらめるな。
力を尽くしても報われないことはあるが、あきらめてしまえば、絶対に助からないのだからね」
  (<上> p294)

★★★★☆

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