「空色勾玉」 荻原 規子

村娘狭也の平和な日々は祭りの晩に破られた。
「鬼」が来て手渡した「水の乙女の勾玉」。憧れの「輝」の宮で待っていた絶望。
そして神殿で縛められて夢を見ていた輝の末子稚羽矢との出会いが、狭也を不思議な運命へと導く。
神々が地上を歩いていた古代日本、光と闇がせめぎあう戦乱の世を舞台に織り上げられた、話題のファンタジー。


中学生の頃に読んで、すごくすごく惚れ込んだ作品です。
ファンタジーといえば、海外ものがメインだった私に、日本のファンタジーの魅力を教えてくれた気がします。
日本神話をベースにした、とても幻想的な物語でした。
大好きだったけど、十年以上読んでいないと内容も綺麗に忘れてしまうものですね。新鮮な気持ちで読めました。

光に焦がれる闇と、闇に惹かれる光。
切なくて、それでいて共感できて、胸が締め付けられるようでした。
最後の神様たちの掛け合いがすごく好き。日本語の美しさに思わずうっとりします。それに、自然の美しさにも心が洗われるかのよう。
自分の役割について。死について。愛について。
主人公と一緒になって幼心にかえったように考えていました。

読み終わった後は、自分も大きな冒険をしてきたような気持ち。
闇と光のコントラストがやっぱり美しい。
日本人が古来から大事にしてきた自然を慈しむ気持ちが全体にあるのもいいですよね。
再読してみて、やっぱり好きだなと思わずにはいられない作品でした。
これがデビュー作とは、驚きです。

雨は体で感じてみなければ、その多彩さや喜ばしさを知ることはできないものだ。
もちろん、ときには雲によって、固く冷たくからい雨もある。
だが、夏の雨はたいてい甘くかぐわしい。
降るごとに異なる、遠い天から運んだにおいがある。
  (p105)

★★★★

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「虚空の旅人」 上橋 菜穂子

隣国サンガルの新王即位儀礼に招かれた新ヨゴ皇国皇太子チャグムと星読博士シュガは、“ナユーグル・ライタの目”と呼ばれる不思議な少女と出会った。
海底の民に魂を奪われ、生贄になる運命のその少女の背後には、とてつもない陰謀が―。


大好きなチャグムが再び登場!
「まあ、前に会った時よりも随分と成長して!」と、まるで親のような心境になりつつ読みました。なんていい子に育ったんだろう。
今回は舞台が南国ということもあり、開放感溢れた美しい世界でしたね。
今までの舞台ももちろん美しくはあるのだけど、この世界の新たな一面に触れることができてわくわくしました。もうこの世界にとことん魅せられています。

首謀者たちである島守りは本当にばかだ。なんて思いつつ、結構気持ちがわからなくもない。
見えない自分を守る力よりも、目の前に見える脅威の方が現実的だものね。妻への愛情がないのではなく、愛情があるからこそ妻の態度が気に障る、というのもわかる。でも、考え方が子どもだし、見え方が浅い。と思うのは結果を知っているからなのかな。島国をまとめあげるって、本当に難しそう。

あまりにも優しすぎる者に国のトップは務まるのか。
チャグムにしても、タルサンにしても。人の期待を裏切らないし、誰かを見捨てたりもしない。
それは理想であるけれど、政治的駆け引きも必要になってくる中で優しさだけじゃ務まらない。
新ヨゴ皇国にしても隣国サンガルにしても現国王はとても非情だ。
非情というか、シビアなのだ。国を守るためには、情があっても切り捨てる勇気も必要なはず。

そう思っていたけど、やはり厳しさだけじゃなく優しさもあってほしい。
見捨てない、裏切らない、と思える人の元にいれたら、それはすごく幸せなことなんだと思います。
このシリーズが大好きすぎて、読むのが本当に幸せ。

★★★★

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「夢の守り人」 上橋 菜穂子

いとしい者を「花」の夢から助けようとして逆に花のために魂を奪われ、人鬼と化すタンダ。
命をかけてタンダを助けようとするトロガイとチャグム、そしてバルサ。
人と精霊の世界が混在する「守り人」シリーズ第3弾。


幻想的で美しい世界と、シビアな現実とをこんな風に1つの世界に描けるものなんだと、半ば呆然としました。
児童書でありながら、すごく深い。 続きを読む

「闇の守り人」 上橋 菜穂子

幼かったバルサを育て、鍛えてくれた養父ジグロ。
彼が死んでから必死に目をそらしていたものとしっかり向き合うために、バルサは生まれ故郷であるカンバルへ向かう。しかし、道中の闇の洞窟で子どもの悲鳴を聞いたバルサは子どもの命を助け、それにより新たな運命へと巻き込まれていく。


精霊の守り人 」を読んだのが9年前。
常に貸出し中で、予約なんて制度も知らず、当時は学生でお金もなく買えず、半ば忘れ去られ今まで読まずにきました。
先日図書館に行った際に全巻揃っていて感動。速攻借りました。思えば、もう出版から10年も経ってるんですね。それでも魅力は全く色褪せません。
「精霊の守り人」も再読した上で、わくわくしながら読みました。 続きを読む

「黄金の羅針盤」 フィリップ・プルマン

お転婆で口の達者なライラは11歳の女の子。
私たちの世界とよく似ていてまるで違うパラレルワールドでの物語です。

すべての人間の傍らにはダイモン(守護精霊)がおり、空には魔女が飛び交い、白クマは魂の鎧を着て言葉を話す。
ファンタジーの要素に、謎に立ち向かうサスペンス、パラレルワールドの秘密に迫るサイエンスフィクションなどの要素も加わった超大作。


まるで水晶の中に写る別の世界を眺めているような、不思議な感覚でした。
時代でいうと、こちらの19世紀頃でしょうか。
まだ未開の地も多く、冒険家たちに溢れている時代です。

アフリカにはゾンビを操る原住民がいるらしいし、北極には生きた人間の頭蓋骨に穴をあける民族がいるらしい。何百年も生きる魔女のいる世界では、何が起こっても不思議じゃない。
だからこそ、大きな謎に立ち向かっていくライラの様子にハラハラしっぱなしでした。残酷なシーンもちらほらあるので、余計に。

いろいろとこちらの世界と違う点はあるのですが、中でもダイモンの設定にとても惹き込まれました。
子どもの頃は自由自在に姿を変えられ、大人になるにつれて1つの形に留まるようになるダイモン。
最初はポケモンのような、ペットのようなものかな、と思っていたら大間違い。
魂のレベルで繋がっているため、引き離されると死にそうなほど辛いし、ダイモンを通じて自分を知れたり、相手との力関係を判断できたりします。

特に印象的だったのは、ライラが大人になるとダイモンの姿が固定されるのを嫌がって「あたしは、永遠に姿を変えられた方がいい」と言うのに対して、大人が「昔からずっとそうだし、何か1つの姿にさだまってほしいと思う時がいつか来る」と話す場面。
ずっと子どもでいたいと思う子ども心と、それでもいつかは大人になりたいと思う時が訪れるのを知っている大人の心境を表しているよう。
私たちの世界には存在しないのに、物語の中では確かな存在であるダイモンを通して著者はたくさんのメッセージを送ってくれていました。
ダイモンが何のメタファーであるか考えるとまた楽しいです。

3部作シリーズの1作目なので、まだまだ謎は多いですがこの先もきっとハラハラする冒険が続くことでしょう。
大人と子どもの境界線にいるライラから感じられる子どもの無鉄砲さや純粋さと、大人になることの残酷さや強さなど見るべき要素が盛りだくさんでした。
共感する点は少なくても、1つの世界を作り上げる著者の構築力には舌を巻くばかりです。

「小さいときは、ものごとが永久につづくと思うものだ。しかし、残念なことに、そうはいかない。ライラ、きみが若い女性になって、もはや子どもでなくなる日はそう遠くないんだ」  (p123)

★★★★☆

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「紫の砂漠」 松村 栄子

最も大好きなファンタジーの1つです。
最初からその世界観に圧倒され、次の瞬間には夢中になっていました。
シェプシが岩に寝そべって風と同化する感覚や、紫の砂漠が吹く風を肌で感じる感覚などがまるで自分のもののように思えます。こういう余韻に浸れる作品は本当に大好き。

それに「真実の愛」のエピソードも素敵でした。
子供たちは中性で生まれ、運命の相手と出会えた時に初めて<守る性>と<生む性>に分かれて、生涯愛し合う。運命の相手は会えばおのずとわかるもの。
子供たちはその時を夢見てドキドキする。
甘く幻想的な設定に惹き込まれました。

他にも「生みの親」と「運命の親」の制度についてや、3人の神の物語など、著者の作った世界がとても好きです。
もしも私が運命の旅に出るのだったら、書記の町か巫祝の森あたりに行ってみたいなぁ。
全体にどこか切なさと寂しさ、そして優しさを感じる物語でした。

月の光は銀の粒
ちらちら降ってひとを刺す
月の光は銀の粒
ちらちら降って地に降りつむ
蒼さが瞳につれたなら
掌で覆って隠すこと
光に埋もれて凍てつく前に

★★★★★

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「精霊の守り人」 上橋 菜穂子

名の知れた用心棒”短槍使いのバルサ”はある日、川へ転落した新ヨゴ国の第二皇子チャグムを助ける。それが、全ての始まりだった。
バルサは礼のために招かれた后ノ館でチャグムが水妖に憑かれていること、災いを恐れた帝からの刺客に狙われていること、を告げられると同時に護衛役を頼まれるのだった。


すごいすごいすごい。
圧倒的でした。常に貸し出し中でやっと借りられただけあります。
何がすごいって、まずは”サグ”と”ナユグ”の宇宙観でしょう。
同じ場所に同時に存在する世界。精霊たちの住まう世界。
チャグムを通して見たナユグの美しさと広大さは素晴らしいものでした。

それとこの物語の主人公、バルサは三十代前半の女性。
そもそもこの設定の時点で風変わりです。そして彼女はべらぼうに、強い。
義父ジグロから教わった武術は天性のものもありみるみる上達し、今ではそこらへんの男じゃ歯が立たないほどの強さ。戦うシーンの緊迫感なんかも凄かったです。
呪術師や星読みといった人たちの存在も物語をより楽しませてくれました。

七十歳にもなるトロガイがその生涯でもまだ学びきれていないというほどに深いこの世界。
これほどシリーズになっていてくれて嬉しいと思う本は初めてかもしれない。
昔から伝えられているものって時が経つにつれて忘れられていくものが多い、だからこそ今現在も伝えられてきてるものはとても大切だと思うんです。

ナユグの谷はまるで底がないように、ふかく、暗い。そのしめった、小暗い闇の底に、ときおり、なにかうごめく気配を感じたりもした。
だが、ナユグの風景は、おそろしいだけではなく、はっと胸にせまるほどうつくしくもあった。ナユグの水は瑠璃のように青く、どこまでもふかい。
花は、まるでおのが命をほこっているかのように、あざやかにさきほこっている。大気は、胸がすくほどにすんで、甘かった。

★★★★★

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「ネシャン・サーガ〈2〉第七代裁き司の謎」 ラルフ・イーザウ

ハシェべトの力にはいつも驚かされます。
さすが全知全能のイェーヴォーの力が備わってるだけあるとつくづく思いました。
ここまで便利かつ強力な武器があるとハラハラした冒険は楽しめません。

もっともこの作品の魅力は別のところにあると思ってますが。
ただ、”信じる者は救われる” という精神が嫌いな私は読むのが辛い部分もありました。
地図の半分を旅したヨナタンたちですが、やっぱり私はこの世界が好きです。

中でも今回訪れた場所で1番好きなのはボムヒでした。
普通に考えたら怖い気がする場所なのに全然そんな感じはなくてむしろ温かい不思議な空間でした。
ここで気になってた謎が1つ解けました。

第七の司が見つかるわけなんですが、私が気になるのは最後の司である彼がどうネシャンを終わらせるか、よりもゼトアが闇の勢力に属してる理由の方だったりします。
最後の巻でそれが記されてれば嬉しいのですが。
ジョナサンの杖を使った思い切った行動には正直驚きました。それと同時に納得いかないものが残りました。

★★★★

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「ネシャン・サーガ ヨナタンと伝説の杖」 ラルフ・イーザウ

とても細かに設定された歴史や文化、言語などが土台としてあったためすごくリアルにこのもう1つの世界を感じることができました。
ドラゴンがいて、伝説があって、人間でない生き物が数多くいるこの世界は私が好きなファンタジーの世界そのものの。
冒険の真っ最中は忘れてたものの、最後まで気になっていたのがヨンタンとジョナサンの関係とその意味するところでした。

2つの世界がリンクしているような話は他にもたくさんあるけどこれは私が知ってるそのどれとも違っていました。
どうやら3部まで続くらしいこの作品の続きがますます気になるところです。

登場人物も魅力的なんだけど、私が特に好きなのはこの世界舞台そのものでした。
禁断の地の向こうに広がってる未知なる世界が一体どんなものなのか凄く楽しみです。
窮地では多少ドキドキしたりするものの、杖の力がかなり強力だから安心して読めた気がします。

★★★★☆

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