「スタートライン」 小川糸 他

彼の浮気に気づいた花嫁、急に大人になった少女、別れ話をされた女、妻を置いて旅に出た男…。
何かが終わっても「始まり」は再びやってくる。

「変わりたい」「やり直したい」と思った瞬間、それがあなたのスタートライン。
恋の予感、家族の再生、衝撃の出会い、人生の再出発―。
日常に訪れる小さな“始まり”の場面を掬った、希望に溢れる掌編集。

ひさしぶりのアンソロジーです。

19人の作家による始まりをめぐる19の物語。 続きを読む

「プリンセス・トヨトミ」 万城目 学

400年も前から受け継がれてきた秘密が、大阪にはある。
独立国、大阪。

その存在は密かに、そして大切に守られてきた。
ところが、その秘密の扉を開ける者が、ついに東京からやって来た。

目の付け所が面白い。
絶対無いよ、そんなのー!と笑い飛ばすのは簡単だけど、こういう奇想天外なことってわくわくしますよね。
小さい頃はもっと頻繁に感じていたようなわくわく感を思い出させてくれるのがこの一冊。

見どころはたくさんありますが、まずは最初から最後までカッコ良かった松平。
お堅い役人とは一線を画しますよね。
頭はいいのに情に熱いって、カッコいい。
二つの物語が一つに絡み合っていく過程もいい。そして、何より大阪の街並みがいいですね。
大阪城に行ってみたくなる。下町を歩いてみたくなる。

ネタバレなしに感想を書くのは難しいけれど、読了後はじんわり心が温かくなりました。
万城目さんのこの常軌を逸していながら王道なこの感じ、癖になりそう。
何かを守ろうとする男の人と、それを陰から見守る女の人。
受け継がれてきたものが何かに想いを馳せた時、この物語がより素晴らしいものに感じられました。
描写が綺麗だから、映像化しても素敵だろうなと思っていたら映画化されてるんですね。

果たしてあの大阪城を見事に映像化できるんだろうか。
見てみたいような、見ないでおきたいような。

願っているだけでは、いつになっても何も変わらない。
自ら変えようとしない限り、世の中は決して変わらない。  (p60)

★★★★

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「鴨川ホルモー」 万城目 学

このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目惚れ。
葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。
このごろ都にはやるもの、協定、合戦、片思い。
祇園祭の宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」!!!


気になっていた万城目さん、初読みです。
「プリンセス・トヨトミ」の著者であり、この本がデビュー作であるということくらいしか知らなかったのですが、読んでみたら想像を超える世界でした。
もう、なんというか、じわじわくる笑い。

突っ込んじゃダメだ!と思いつつ、突っ込まずにいるのが難しい。
しかも、本筋じゃないところでも笑いをとってくるっていう。描写を映像で思い浮かべると、笑わずにはいられません。オニのルックスとか、例の舞とか、どうしてくれよう。
くすくすというよりは、うひゃひゃひゃと笑いたくなるような場面が多い一方で、背筋がぞわっとするような場面もたくさんありました。

舞台が京都だからでしょうか。
鬼や式神、もう1つの世界、たくさんの神様といった雰囲気がしっくりきて、本当に京都に行けば鬼の存在を感じられるんじゃないか。
実は足元を走り回ってたりするんじゃないか、なんて思ったりして。
第四回ボイルドエッグズ新人賞に輝いたこの作品ですが、この賞は「新世紀にふさわしい、まったく新しい才能、類例のない面白さに満ちた作品を募集」ということで、なんてぴったりな作品なんだろうと思いました。
いかにも京大生っていう学生たちもいいですよね。なんだか無性に京都に行きたくなりました。

★★★★

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