「ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕」 上遠野 浩平

この本は前編・後編とあるうちの前編だったんですね。
よかった、最後が全然腑に落ちなかったから。
後編では正樹のこと、そしてエンブリオの謎が明かされるのを期待してます。
とはいっても前編だけでも楽しむことはできました。

潜在能力を引き出すアイテム。
なんだかどこかで見たことのある設定のような気がしないでもないんだけども、超能力いっぱいの世界は楽しかったです。
ただ、エンブリオの声を聞ける人が多すぎるような気もしたけども。
だって、エンブリオを手にした人のほとんどがその声を聞いている気がする。
でも、よく考えてみれば潜在能力なんて誰にでもあるものだから当たり前の結果なのかな。

今回は正樹の活躍ぶりと、いい意味での”最強”の不安定さが印象的でした。
“稲妻”も、キャラクター的に憎めなくて好きですし。テンポがよくてすらすら読めるのが嬉しいです。とにかくまずは、後編を読んでみないことには全体的になんとも言えない、といったところでしょうか。

「強さとは、力があることではない。優れていることでもない。
大きいことでも勢いがあることでもない。弱くないということも負けないことも意味しない。
強さとは結局のところ、他の何者とも関係のない、それ自体が独立した概念であり、それを真に手に入れようとするならば、勝利や栄光といった他のすべてを犠牲にすることを覚悟しなくてはならない」

★★★

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「冥王と獣のダンス」 上遠野 浩平

ブギーポップシリーズ以外で初めて手にする上遠野さんの小説。
期待していた以上のものでした。世界観も登場人物も小説の構成も全て好きです。
一気に読み終えてしまったほど楽しかったです。
読んでいてなんとなくガンダムを思い出すような話でした。

トモルと夢幻のシーンはどれも好きなんですが、中でもトモルが感極まって夢幻に想いをぶつけるシーンには胸を打たれました。
トモルだから言える台詞。トモルにしか言えない台詞でした。

口絵もお気に入りで中でも「出逢い」の絵は格別です。
登場人物はリスキイ妹が最も好きです、あの健気さがいい。
物語は、二人の未来もこの戦争の行方も、何もかもわからないままに終わってしまうんですが私はあえてこのままであってほしいと思っています。

ちゃんと完結する話が好きな一方でこういう風に読者の想像に任せるような話も好きなので。
ただ、この世界観はすごく気に入ってるので何か違った形でまた読むことができたら嬉しいです。

「私たちのリーダーが囚われの身になっている。命に代えても助けに行かなくてはならないのよ」

★★★★☆

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「ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師」 上遠野 浩平

暑い季節に読むのにぴったりでした。
ペパーミントみたいに淡く見えるのにツンと刺激を残すような、そんな話でした。
血飛沫あげる戦いだとか情熱だとか、そういったものとは一切関係のない世界。
強い主張があるわけでもないのに、読み終わった後には薄っすらと何かが残ってるような感じです。

これを読んで考えさせられたのが「優しさ」についてでした。
十助の能力はイマジネーターに出てきた飛鳥井の能力に似ている気がします。
当時私がそれを読んだ時は正直、こういう能力があれば誰も悲しまなくて済むし、いいことなんじゃないかって思ったりもしたんですが今回は簡単にはそう思えませんでした。
本当の「優しさ」ってなんだろう、と考えた時にそれは傷つけないようにすることではなくて相手をいたわったり、思いやったりすることなんじゃないか、というのにたどり着きました。
そうすると、この十助の作るアイスクリームのもたらす優しさは虚像に過ぎないと嫌でも気づかされます。

タチが悪いのは本人が何かしらの目的や意図があってそうしてるのではなくて、ただ純粋においしいアイスクリームを作りたいと思っていることでした。
魔術師・・・なんですが、道化師に見えてしまう。
それは私を凄く悲しくさせました。
ペパーミントを本にしたらきっとこんな感じ、という本そのものでした。

・・・・・・・ ”優しい”ってなァ、なんだ?
この善悪なんぞ超越してるキャプテン・ウォーカー様にゃよくわからねーが、そいつが人を憎まないこと、人に都合のいいことをしてやることだってえのなら、そいつはつまり相手の悪いところに気がつかないでいるのと何が変わらないんだ?

★★★☆

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「夜明けのブギーポップ」 上遠野 浩平

ちび凪ちゃん可愛すぎます。
それにあの強さ、ただ好きというだけじゃなくてもはや敬愛。
大人のような子供のような不思議な彼女なわけなんですが彼女のことを知れば知るほど好きになっていく気がします。私的にこういうキャラクターの存在はすごく嬉しいです。

霧間の言葉が好きで、それが私のブギーポップ楽しみの一つでもあるんですが今回は生前の霧間が出てきます。
想像していたのとは違って思っていたよりも人間味ある人でした。
さすが凪の父親というか、とても強い人でした。

根本的なことなんだけども自分を抑制できる人はやっぱり強くてカッコイイです。
そして統和機構の全貌も少しずつ見えてきました。
「出る杭は打たれる」の言葉どおりに彼らの役目は杭を打つこと、そしてその研究・実験です。

杭とは即ち普通の人よりも進化して生まれてきた人たちのこと。
霧間の側に立って考えるとなんて身勝手な、と思ってしまうんですが全体として見てみると確かに異分子の出現は恐ろしくも感じます。
自分が弱者側であるならなおさらその異分子を取り除きたい、知りたいと思うのは当たり前の考えのような気もするんです。

「もしも、何か特別なことに出会ったとしても、自分を持とうとしている人であればそれを冷静に受け止められる。だが普通すぎると、その波に飲み込まれるだけで、あとはただ流されていくだけだ。そういう “暴走” が一番危険なのさ。”普通なだけでいい” と思っている者には抵抗力がない。そして・・・そういう者が思い込んでいるほどには、実は世界は安定もしていないし、いつでも危機が―」

★★★★

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「ブギーポップ・オーバードライブ歪曲王」 上遠野 浩平

記憶力が悪いのは絶対的に損だと思いつつ読んでいました。
「ブギーポップは笑わない」で出てきたお馴染みのキャラがたくさん登場するんですが、如何せんはっきりと思い出せないのです。
せっかくの懐かしい人の登場を存分に味わえなかったのがとても残念です。
それはともかくとして、今回は人間の内面の戦いでした。
なんて言うか、形としての世界の敵の存在がなかったんです。

歪曲王は、誰もが持っている心の歪みです。
歪曲王が見せた世界では、冴子の世界が一番好きです。
罪悪感という歪みは優しさからくるものだっていう言葉は、確かに苦痛を黄金に変えてくれたように思います。

私の中で衝撃的だったのは、「笑わない」はずのブギーポップが笑ったこと。
そう見えただけかもしれないのだけど、確かに微笑んだんです。冴子の言葉に。
そして上遠野さんの小説の構図は相変わらず私の期待を裏切らず素敵なものでした。

希望も、絶望も、歓喜も、悲嘆も、愛情も、憎悪も、恍惚も、嫌悪も、天国も、地獄も、過去も、未来も、昨日も今日も明日も、夢も、悪夢も、そして世界も、すべて――
ヒトがつくったものだ。

ヒトがつくったもので、ヒトに壊せぬものなどない。

★★★

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「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」 上遠野 浩平

この話はプロローグからかなり惹きこまれて、シリーズの中でも一番好きなものになりました。
守る力は何よりも強い、そう感じさせるとても切なくなる話でした。
守る力は決してただ単に力強いというものではなく、もっと優しく悲しいものです。
そして時にそれは奇蹟すら起こさせる、理屈じゃなくそう思います。

6人全員が6人でいられる場所を本当に大切にしてたのがわかるから、だからこそ切なかったです。
そういえば気づいてみるとブギーポップは話の中心にいないんです。
もちろん彼無しには事件解決は成りえなかったけど、今回はかなり存在が薄かった気がします。
これはちょっとどうかな、って思ったけどもよくよく考えてみたら彼が常に傍にいて助けてくれるヒーローじゃないからこそ楽しめた気もします。

仲間たち――この彼の作りものの人生の中で唯一見つけることができた、たったひとつのぬくもり。彼はそれを守らなくてはいけない。

★★★★☆

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「ブギーポップ・リターンズVSイマジネーター」 上遠野 浩平

私にはどうしてもイマジネーターを敵だと考えることができませんでした。
全人類の精神を全部同じ状態にしようとしてるその事は恐ろしく、阻止しなければならない事だと感じるけども、
「そうすればもはや、人々の間には悲しいすれ違いも、誤解も何もなくなるだろう」という言葉を聞くとそこには悪意なんてものはなく、ただ行き場の無い寂しさみたいなものが感られて責められなくなります。

飛鳥井に言わせると、私はきっと “幹” が足りないんじゃないだろうか。
だけど「欠けてるから仕方ない」とは思いたくない。確かに仕方ないことかもしれないけど、たとえ根本が変わらなくても影響されたりしながら変わっていくことはできると思うんです。

上遠野さんの構成は相変わらずおもしろくて読んでいて楽しかったです。
今回特に好きだったのは織機綺。
誰にも嫌われないでいるなんて不可能だけど、嫌われたくないって切に思う気持ちはわかります。

★★★★

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