「魔法飛行」 加納 朋子

もっと気楽に考えればいいじゃないか。
手紙で近況報告するくらいの気持ちでね―という言葉に後押しされ、物語を書き始めた駒子。
妙な振る舞いをする“茜さん”のこと、噂の幽霊を実地検証した顛末、受付嬢に売り子に奮闘した学園祭、クリスマス・イブの迷える仔羊…身近な出来事を掬いあげていく駒子の許へ届いた便りには、感想と共に、物語が投げかける「?」への明快な答えが。


大好きな「ななつのこ」の続編。
再び瀬尾さんと駒子に会えました。
初めて「ななつのこ」を読んだのが9年前。すごく懐かしい気持ちでいっぱいです。
今回は駒子が物語の書き手になります。読み手は瀬尾さん。

伝えたいことを文字にして相手に届ける。それがとても素敵なことだと、改めて感じました。
そんなささやかな気づきを与えてくれるのが加納さんの物語です。
今作も謎をはらんだ優しい日常はそのままに、解説で有栖川さんが述べているように、ロジックにとどまらないマジックに溢れていました。

表題にもなっている「魔法飛行」がいちばん好きです。
空を想う力、と書いて空想力。そんな発想をする加納さんの物語は、いつも前向きでひたむき。表紙の絵もいいですよね。 そして登場人物も相変わらず魅力的でした。
空を想ってひたむきに生きる。私もそんな生き方をしたい。

当たり前のことが当たり前でなくなったとき、人は初めてその価値を知るのです。  (p76)

★★★

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「レインレイン・ボウ」 加納 朋子

高校生の頃、ソフト部でともに活躍した仲間たち。
7年後、奇しくもメンバーの一人の葬式で再会することになった。
人生の岐路に立ち、悩み迷いながらも、答えを見つけていく。


最初から最後まで、余すところなくよかったです。
表紙も挿絵も良ければ、目次も内容もいい。 続きを読む

「ささらさや」 加納 朋子

突然の事故で夫を亡くした、さや。
生まれたばかりのユウ坊と二人残されるも、不思議な奇跡が起きだした。
ささら、さら―
その魔法の音色が聞こえたら、それは彼が助けに来てくれる合図。
幽霊になってもそばで見守る夫と、馬鹿正直に必死に生きるさやが彩る優しく切ない物語。


読み始めて数十ページ、第一章目で泣きました。
交通事故って、本当に理不尽に人の命を奪う。事故後のさやの境遇は、かける言葉も見つからないほど。
だけど何よりも涙を誘ったのは、夫の深い愛情。
「ばかっさやめ。すぐに人を信じるんだから」
言葉は悪くても、ものすごく温かい気持ちが溢れる夫の言葉の数々。

ミステリーのような、ファンタジーのような物語はさすが加納さん。
佐々良のまちも、周りの個性的な登場人物もいいですね。
おばあさんたちの言葉の遣り合いもいい。
内気でよわよわに見えるさやですが、実は芯がありますよね。
自分のためよりも誰かのために強くなれる人なんでしょうね。

どうやら続編で「てるてるあした」というのがあるらしくて、そちらもすごく楽しみ。
ラストもやっぱり涙腺を刺激されて、相当切なくなりました。
でもきっと、これでよかったんだ。
切ないけれど、すごい温かい、優しい話でした。涙なしに読めないです。

だが、より小さくか弱い存在を庇護する立場にある者にとっては、弱さは単なる能無しの代名詞でしかない。それがよくわかった。  (p308)

★★★★

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「モノレールねこ」 加納 朋子

ほんと、期待を裏切らない。
読んでいて、そんなことを思いました。
これは加納さんの描く「日常の中の喪失と再生」の物語。

.
表紙の温かい絵同様、読んでいて心がぽかぽかします。
どれが好きかと言われると選ぶのが難しいくらい素敵な8つの短編集です。読み終わった後は、表紙を見ながら余韻に浸れます。
ザリガニの話では、思わずほろり。

加納さんの本は、毎日を丁寧に生きているのが伝わってくるから、読んでいると日常が愛おしくなる。登場人物を通して、弱さと同時に強さを持つ「人間」が大切に思える。
とても幸せな気持ちで読めた1冊でした。

★★★★

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「いちばん初めにあった海」 加納 朋子

引越しをしようと荷物を整理している時に見つけた1冊の本。

間に挟まっていた未開封の手紙には衝撃的な一言が。
「わたしもあなたと同じだから。わたしも人を殺したことがあるから」
差出人である<YUKI>は一体誰なの?


綺麗なタイトルだなって思って手にしました。
構成力は相変わらず素晴らしく、「現在」と「過去」を綺麗に織り込んで纏め上げていく手法は、さすが加納さんでした。
今回は随分と重かったような気がしますが、どろどろした感じではなく、海のような深さを持ったお話でした。

忘却は慈悲でしょう。
辛すぎる出来事は、時が傷を癒す前に人を壊します。だから、忘れられることはきっと救い。
でも、たとえ記憶は消せたとしても、どんなに思い出せなかったとしても、心にはしっかりと刻まれています。
思い出させることはとても残酷な仕打ちに思えたけれど、生きている限り進まなければならないのなら、仕方がないのかな。
正直、読み進めていくのが辛かったです。それでも最後には少しほっとしました。

言霊って、私もあると思います。
神様がいるかなんてわからないけど、人が心の底から願ったことはきっと必ず本当になるはず。
それに “誰も皆、自分の半身を探しながら生きている” というのに同意でした。
出会った期間なんて関係なしに、そんな人に出会ってしまったなら惹かれる衝動を抑えられないんでしょうね。

もし、人間が海に対して奇妙に心惹かれることがあったとしたら、その理由はただひとつしかない。
いちばん初めにあった海を、遺伝子のどこかが記憶しているから。切ないほどかすかに。それでいて、胸苦しいほど確かに。

★★★

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「ななつのこ」 加納 朋子

駒子はどこにでもいるような本が好きで、ドジな女の子。
ある日本屋で見つけた『ななつのこ』の表紙に惹かれ購入する。
それは童話のような謎解きのお話。本当は大切な謎はいくらでも日常にあふれていて、そして誰かが答えてくれるのを待っていたのです。

1冊なのに2度おいしい。
構成力に舌を巻きます。これがデビュー作なんて、信じられない気持ちです。
この小説のジャンルはミステリー。
だけど、ここで言う「謎」は密室殺人のような特別なものではなく、すごく些細な日常の謎です。
ちょっと目を向ければ私たちの周りにもあるようなものばかりです。

どの話も好きだけど、中でも私が好きなのは「白いタンポポ」の章。
読んだ多くの人がはっとさせられたのではないでしょうか。
頭ごなしに否定しないことは、とても大切ですよね。
この本はミステリーでありながら童話でもあると思うのです。温かい気持ちで読み終われます。

表紙の絵もまた素敵。
左に座っているのは間違いなくはやと君だろうけど、隣は誰だろう。
子供の頃の駒子ちゃんか、お姉さんか、もしくは真雪ちゃんか。
おそらく駒子ちゃんなのだろうけど。温かくて素敵。好きな本が増えることは幸せ。
だから、読み終えた今すごく幸せな気持ちです。

「あなた方は、家から学校へ来るまでに、土を踏みますか?」
愕然、という言葉が大袈裟なら、何か不意討ちにでもあったような気がした。


★★★★★

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「ガラスの麒麟」 加納 朋子

まだ寒い2月下旬に1件の通り魔事件があった。
襲われた17歳の女子高生安藤麻衣子は容姿端麗で成績優秀、その上経済的にも恵まれていて多くの子の憧れだった。
しかし、そんな幸せな外面とは裏腹に彼女は心に闇と孤独を抱えていた。


何の情報もなしに手にとって読んでみたものだけど、かなり掘り出し物でした。
思いがけないヒットは嬉しかったりします。
短編としてもいい物なのに、長編になって更に味が出るという素敵さ。とてもお気に入りです。

途中出てくる童話はメルヘンながらも、不安定で今にも壊れそうな心がそのまま描かれていて胸が苦しくなりました。
この童話を書いた麻衣子は一体何を思って日々を暮らしていたんだろう、そう思わずにいられないほどの深い孤独を感じました。
不幸じゃないけど幸福でもない。ただ空っぽなだけっていうその感覚は凄く共感できます。
幸福じゃない、なんて思ったら罰が当たる。
そう思いながらも自分は空っぽで紙風船みたいで、時にはどうして此処にいるんだろう、なんて思ってしまうことがあります。麻衣子や神野先生がそう思ったように。

彼女の言った「どうせ滅びちゃうんなら何のために生まれてきたんだろうね」という言葉に悲しくなりました。
ところどころのメルヘンさのせいか、一風変わった雰囲気でした。
神野先生の、ある事柄からどんどん推理をして事実に辿り着く様は非常に面白くホームズを読んでいた時のような楽しさがありました。
人物もみんな個性的で魅力的で、中でも麻衣子と神野先生は格別に好きです。

あの子が私に言ったことがあります。
『意味のない生は嫌だ。だけど、無意味な死はもっと嫌だ』って。
挑むような目をして、そんなことを言うんですよ。

★★★★★

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