「白蝶花」 宮木あや子

傾いた家のために財閥の妾となった泉美、貧しさ故に芸妓として売られた姉妹の菊代と雛代、奉公先で書生の子どもを身籠る千恵子、豪奢な屋敷で愛に飢える県知事令嬢の和江。
人生を選びとることも叶わず、女は明日死ぬかも判らぬ男を想うしかなかった時代──戦前から戦後の不自由さを吸い上げ、荒野の日本で美しく野性的に生を全うした彼女たちが咲かす、ドラマティックな恋の花。

女性が今よりも生きにくかった時代

読む度に惹きこまれる宮木さんの小説。
大正から戦後にかけてを強く、逞しく生き抜いた女性を描いたこの短編集は、読み進めていくにつれ連作短編小説だと気付きます。点と点が線になる。 続きを読む

「憧憬☆カトマンズ」 宮木あや子

「もうすぐ30歳だけど、自分探しなんて、しない。きっと、私たちは大丈夫!」
ハケンと正社員、外見と内面、偶然と運命? 仕事に、恋に、ゆれるワーキングガール必読! 
痛快! 爽快! ウルトラハッピーストーリー!!

暗い現実なんて、吹き飛ばしちゃえ!

暗い現実なんて吹き飛ばす、「ウルトラハッピーエンドな話」
確かにこんなの、現実的にはアリエナイッティ!なんですが、小気味よく楽しく読ませてもらいました。 続きを読む

「太陽の庭」 宮木あや子

神と呼ばれた一族に渦巻く、愛憎と官能。
日本の政財界から密かに神と崇められる一族・永代院。
息子が父の女を愛したことから崩壊への道を歩み始め…。

世間から隔絶した一族の愛憎と官能を描く、美しく、幻想的な物語。

幻想的×官能的。歪で、美しい世界です。

ある一部の人たちからは神と崇められ、地図には載らない秘密の地、特別な一族がこの日本にはいる。
ぞくぞくするような面白さで、一気に読み切りました。 続きを読む

「婚外恋愛に似たもの」 宮木あや子

愛したひとは、2.5次元。35歳人妻、夫以外の男に溺死寸前。

容姿も、家族も、社会における立ち位置もバラバラの5人の女の共通項は、35歳。夫あり。そして男性アイドルユニット「スノーホワイツ」の熱狂的ファンであること。
女の本音に溢れる宮木あや子の“最凶恋愛小説”!

だから、その都度埋めていけばいい。

とあるアイドルグループで活躍する子が好き、という共通点で繋がっている5人の女性。
頂点、底辺、平凡、と異なる層で通常ならば交わらないであろう女性たちがある1つの輝きをもとに集う。 続きを読む

「校閲ガール ア・ラ・モード」 宮木あや子

入社して2年目、ファッション誌への異動を夢見て苦手な文芸書の校閲原稿に向かい合う日々を過ごす悦子。
そして明るく一直線な彼女の周りには、個性豊かな仕事仲間もたくさん。
悦子の同期で、帰国子女のファッション誌編集者、
これまた同期の東大出身カタブツ文芸編集者、
校閲部同僚でよきアドバイスをくれる、グレーゾーン(オネエ系)のお洒落男子、
悦子の天敵(!?)のテキトー編集男、
エリンギに似ている校閲部の部長、
なぜか悦子を気に入るベテラン作家、などなど、
彼ら彼女らも、日々の仕事の悩みや、驚くべき過去があって……。
読むと元気が出るワーキングエンタメ!

続きを読む

「帝国の女」 宮木 あや子

大手テレビ局「帝国テレビジョン」での仕事に昼夜、オンオフの区別はない。
恋も夢も曖昧なまま、それぞれの“戦場”に向かう日々――。
憧れと現実のあいだで揺れる5人の女性の生き様がここにある。
リアルにビター、だけど必ず前を向きたくなるお仕事小説!

元気になれる、お仕事小説

テレビ業界を舞台に、戦う5人の女たちの物語。
というと、少し語弊があるでしょうか。
宣伝、ドラマのプロデューサー、脚本家、女優のマネージャー、TV誌の記者。
仕事に恋愛に人生に翻弄されながらも、強く逞しく生きる様がとても格好よかったです。 続きを読む

「群青」 宮木 あや子

ピアニストの由起子は、病気療養のために訪れた沖縄の離島で漁師の龍二に出会い、恋に落ち、やがて女の子を身篭もる。
しかし、娘・涼子を産んだ後、由起子は他界。やがて涼子は美しく成長し、島の幼馴染の漁師・一也と愛し合うようになる。
だが、一也は結婚に反対する龍二に反発。漁師のプライドを賭けて深く海に潜り、帰らぬ人に。ショックで心を病んだ涼子は、心を閉ざしてしまう…。

物語の展開がはやくて、読み終わった後はタイムトラベルをした後のような、疲労感にも似た気だるさが残りました。海に囲まれた島が舞台で、背景には常に海と闇とピアノの音色があったように思います。

登場人物の誰かに共感するというよりは、自分も幽霊のような、何か人ではないものの視点でもって物語を追っているようでした。この小説はそもそも、中川陽介監督の『群青』の脚本をもとに著者が書き下ろしたものだそうです。
映像化された作品であったからか、ところどころで目に浮かぶ海が美しかったです。とはいえ、夜の海は怖いし、海は決して美しいばかりじゃないというのもありありと見せてくれます。それは島に対しても同じで、サトウキビ畑のある島は美しいけど、どこか閉鎖的な空気感があるし、苦みが随分と含まれていたのが印象的でした。

そして、何作目かになる宮木さんの本ですが、本当に毎度ながら「こんな作品も宮木さんは書かれるのか・・・」と驚いてばかりです。艶やかさは「花宵道中」に通ずるものもありましたが、毎度違った色を見せてくれるのがおもしろいです。こんなにカラフルな作家さんも珍しいですよね。

本当に長い旅をした後のような倦怠感。最後はちょっと泣きそうになりつつも読み終わりました。雨が続く日は明るい本よりも、色で言えば青やグレーの本がしっくりくるので、読みやすかったようにも思います。

短い余生、生きていて良かったと思わせるだけの充分な幸せを、自分は与えてやれたのだろうか。  (p56)

★★★☆

follow us in feedly

「花宵道中」 宮木 あや子

どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。
あの日、あんたに逢うまでは――初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑……儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。
江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。R-18文学賞受賞作。

儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たちの物語。

本書が宮木さんのデビュー作。
非常に官能的で切なく、苦しく痛いけど淡い幸せもある、精神を随分と揺さぶられる作品でした。
遊女たちの連作小説ですが、この連作具合が非常におもしろくて、思わぬ視点で物語が解き明かされて、不思議な縁によって点と点が結ばれていく様が見事でした。

この時代、遊女たちは大抵貧しくて売られてきたか、人攫いにあってきたか、その生い立ちは壮絶です。
時に諦め、時に心を殺しながらも、恋に翻弄されたり、大事な何かを守りながら生き抜いていて、読み終わった後の余韻がなかなか消えません。

艶やかな衣装や髪型、美しく官能的な遊女に心奪われながらも、叶わぬ恋に、迫り来る死にいかに向き合っていくかという彼女たちの直向きさに何より気持ちを動かされました。
私なら一体、誰のように生きただろうか、と思いを馳せずにはいられません。

どんな業か、一番悲しかったのは朝霧の章。
とはいえ、他の章も引けをとらないくらい悲しくさせてくれますが、そんな中にある淡く小さな幸せが希望の光でした。

あとがきで嶽本野ばらさんが「全ての人間は尊いという揺るぎない思い込みがなくては、このブレのないストイックな文体は生まれてこない」と書かれていますが、まさにそのとおりだなと思いました。

安達ゆみさん主演で映画化もされているようで、そちらもいつか観てみたい。しばらく余韻が消えなさそうです。

★★★★

follow us in feedly

「ガラシャ」 宮木 あや子

明智光秀の娘として美しく成長した玉子。主君である織田信長の媒酌で、細川藤孝の子・忠興と華燭の典を挙げ、平穏な日々を送っていた。
だが、突如発生した本能寺の変。実父の犯した罪により蟄居を命じられた玉子は、幽閉先で出会った男に惹かれてしまう。
愛の何たるかも知らず妻となった女を苦しめる恋の業火――。

絶世の美女と謳われた細川ガラシャの人生を描く華麗なる戦国純愛絵巻。

激しい歴史の渦に巻き込まれ、遠い時代にタイムスリップした心があまりの切なさと苦さで痛いです。

運命に翻弄されながらも強く優しく生きたガラシャの気高さに圧倒させられます。
ガラシャに限らず、この時代に生きた人たちは生死が近く、制限が多く、幸せがとても刹那的に見えてそれだけでも苦しいくらい。心の方位磁石を持たないと正気で生き抜くことができない時代ですよね、きっと。

主君殺しという大罪を負った罪人の娘ながら一人生きながらえている罪、
産声すらあげさせることなく冷たい赤子を生んだ絶望感、
いっそ死んでしまえば、いっそ狂ってしまえたらと思いながら日々を送るガラシャの気持ちに寄り添うとこちらまで引きずり込まれてしまいそうに。

そんな暗闇の中に一筋の光となった恋や信仰、それすらも厳しい制限の中にあるんですよね。
史実ではガラシャが亡くなったのは38歳だといいます。その短い一生の中にどれほどの絶望を味わったんでしょうね。
本書の最後の章は、この本の中で唯一の救いでした。

一目会ったときからガラシャを支えると決め慕い続けた次女 “糸”の存在感も大きいです。
真っ直ぐにガラシャしか見えてなかった彼女が大人になるにつれて柔らかくなっていくのも、なんだか愛おしい。
それからやっぱり印象に残っているのはガラシャの夫、忠興。強い想いはプラスに働く分にはいいけど、マイナスに働くと危ない、といういい例ですよね。
そんな彼も母のいない喪失感を抱えながら生きてきたんですものね。

心の平安を保つのはなんて難しいんでしょうね。
気持ちの拠り所があれば、人は狂わずにいられるんでしょうかね。
本書には書かれていませんが、ガラシャの辞世の句が “ちりぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ” だと知り、また胸を打たれました。

本編からはずれますが、信長の妹、市の物語もどこかで読んでみたいし、ガラシャの物語も別の角度からも読んでみたいところです。

来た道を振り返ればそこには自らの屍があるだけだ。己の生きているのは今、このときなのだから。  (p237)

★★★☆

follow us in feedly

「官能と少女」 宮木 あや子

卑猥な宝石に惹かれた女、幼児体形の教諭、テレビの中の夫を愛する女、性的な触れ合いを拒絶する女、おじさまに「誘拐された」少女、心を病んだ女子大生。
R‐18文学賞受賞作家が描く6つの純粋な欲望。

宮木さんの本はこれで3冊目ですが、見事にどれもこれも全く違いますね。
仕事系、時代系ときて、これは官能系でしょうか。
エロティックというより、生々しく思春期ならではの鋭さを持って描かれたこの作品、痛々しさすら感じさせます。

粘液とか血とかいっぱい出てくるもので、ちょっと生理的に受け入れ難かったものの、挿絵と相まって1つの世界を作り上げているのはさすがです。

この作家ならこんなテーマ、こんな作風とはっきりわかる作家は安心して読めますが、こんな風に型にはまらず多方面に筆を走らせる作家さんもすごく興味深くて、次は一体どんな作品だろうと手に取るのが楽しみになります。
幅が広い分当たりもあれば外れもありそうですが、まだまだこれからも読んでいきたい作家さんです。
残念なのは地元図書館には宮木さんはこの3冊しか蔵書がないこと。次は大きい図書館に行くか、購入するか。
どちらにせよ、また必ず読む作家さんであることは間違いないです。

★★☆

follow us in feedly