「ステップファザー・ステップ」 宮部 みゆき

プロの泥棒として仕事に励んでいたところ、思わぬ失態をしでかした。
警察に突き出すでもなく助けてくれたのは、なんと双子のこどもたちだった。
父はいない。母もいない。何故なら二人は愛の逃避行をしてしまったから。

奇妙な縁から、双子たちに疑似家族(父役)を押し付けられ・・・?!


きっとおもしろいんだと思うんだけど、なんだか私の肌には合わなくてとても残念。
宮部さんの小説は好きなんですが、私に合う合わないが結構分かれる気がします。作品の幅が広いからでしょうか。
人気作である「レベル7」も私には合わなくて。
彼女のミステリーが合わないのかな、と思いきやそうでもなく。
設定を読むとどれもこれもおもしろいと思うのに、ふしぎ。

この作品は、ドラマをきっかけに読みました。
見たのは、物語の中盤あたりだと思う1話のみですが、読了してみるとそのシーンは無く。ドラマオリジナルのシーンだったのかもしれないですね。
双子の担任教師に、実の父じゃないのがばれる!・・・というシーンで、「続く」となってしまったため、どうなったのかは知らないのですが、読めばわかると思っていただけにモヤモヤ。
健気な双子たちはかわいいけれど、本書でも何度も言われてる通り、双子独特のしゃべり方にちょっとだけ、ちょっとだけ、イラッとしてしまって、心の狭い自分にへこみました。

ミステリーとしては消化不良。でも、プロの泥棒を描く様子はとても楽しかったです。
裏の世界に生きる人たちが実は仲間には優しい。こういうの好きです。

とこどころ、何年も昔を舞台にしてるんだな、と思うところがあったのですが、この作品が書かれたの自体が19年も前なんですね。
今回は合わなかったけれど、次はどんな宮部作品に出会えるか楽しみにしつつ、今後も読み続けると思います。
それに、この本の続編がでてもきっと読むはず。それくらい、謎はまだ残されたままですよね。

★★

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「孤宿の人(上・下)」 宮部 みゆき

江戸から金毘羅山へ向かう途中にある、瀬戸内海に面した丸海藩。

金毘羅山に向かう途中に置いてきぼりにされた9歳のほう、

流されてきた江戸の罪人加賀殿の下女として働くことになったが、

まるで加賀殿の所業をなぞるかのように毒殺、病死と人が死に出した。


宮部さんの描く江戸の物語が好きです。
身分制度があって、ある程度決まった範囲で暮らす人たちの営み。
その時代に存分に思いを馳せることができました。
表紙の「上・下」のところが兎の形で、随分かわいいなと思っていたら冒頭からうさぎの話がでてきましたね。

今よりも情報入手手段も少なく、限られた範囲で暮らす人たちにとって、噂はすごい伝染力を持つんでしょうね。だからこそ、利用しようと思えば利用できることも、頼ろうと思えば頼れるところもあるんでしょう。

噂は尾びれ・背びれが付きやすいけど、それでも人から人に何かが伝わるっていいなと少し思いました。
ネットが普及してくにしたがって「face to face」って死語になりつつあるような気もします。

その人の感情が動くところ、そしてその動いた感情に対してとる行動は人それぞれですよね。
それには何を一番に守りたいかという優先順位が自分の中で働くんだろうけど、なんだか苦い思いになるものが多かったです。
きっと切腹があるようなこの時代だからこそ、守るべきものが格式や家柄、伝統になりえたんだろうな。正解があることじゃないから難しい。

だったらどう動いただろうと宇佐と一緒に考えながら読みました。
わりと淡々と物語が進んだので、まさかラストで泣くとは思いませんでしたが結構泣きました。
段々終盤になるにしたがって嫌な予感が頭をもたげ、苦い気持ちで読み進めました。わかっていても、もうそうなる以外の道はない、と知って進むのは苦しいですね。

ボタンが掛け違ってしまったかのような、些細なことがこんな大事件を巻き起こしてしまったことを思うとなんとも言えない気持ちになりますが、ほうの存在が、そしてその周りにいる人たちの優しさが救いとなりました。
不幸だけど幸福なほう。思い返してもちょっと泣けそうです。

「信じれば、嘘も真実になる。嘘を嘘と知りつつ信じたふりをするのは辛いが、本当に信じてしまえば、ずっと楽だ」  (p187)

★★★★

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「初ものがたり」 宮部 みゆき

江戸の四季を彩る「初もの」が絡む捕物帖。
丑三ツ刻まで店を出してる謎の稲荷寿司屋や、霊力を持つと言われる10歳に満たない拝み屋など、人情と個性溢れる登場人物が登場します。
ミステリーとしても、時代小説としても楽しめますが、ちょくちょく登場する食べものにお腹を鳴らしながら読みました。

・ほんのり甘みのある稲荷寿司に赤味噌で作った蕪汁
・5月の鰹
・次郎柿で作った柿羊羹
・塩漬けにした桜の花びらが浮かぶ桜湯
・熱い番茶と小さな桜餅
どれもこれも、その季節になったら絶対食べようと心に決めました。

最後まで謎だった稲荷寿司屋の親父と梶屋の旦那を繋ぐのは、「女」な気がするな。梶屋の妹で稲荷寿司屋の妻、あるいは生みの親の母親つながり?
など、いろいろと想像を巡らせるのも楽しいですね。

★★★★

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「魔術はささやく」 宮部 みゆき

「最後にはタネを明かすよ」
そう言われている手品ショーを見ている気分でした。
推理するというより、ただ不思議で、先が気になってページをめくっていました。

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1人目は、マンションの屋上から飛び降りた女性。
2人目は、地下鉄に飛び込んだ女性。
3人目は、走るタクシーに飛び出した女性。
遺書はなく、自殺ではないか。
新聞の小さな社会欄にはそう書かれていた。
なんの関連もなさそうな、ただの「事故」とも「自殺」ともとれるような事柄が、物語をはらんでいた。

素直におもしろかったです。さらさらと読めました。
勝手に予想しては見事外れたりして、かなり楽しめました。
そんなものがあるのか、と驚くようなこともありつつ、読み終わった後は少しすっきりするような後味の良さでした。

人間てやつには、二種類あってな。
一つは、できることでも、そうしたくないと思ったらしない人間。
もう一つは、できないことでも、したいと思ったらなんとしてでもやりとげてしまう人間。
どっちがよくて、どっちが悪いとは決められない。悪いのは、自分の意思でやったりやらなかったりしたことに、言い訳を見つけることだ。

★★★☆

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