「どんなにきみがすきだかあててごらん」 サム・マクブラットニィ

チビウサギとデカウサギは大の仲良し。

「ぼくはきみのことこーんなに好きだよ」

二匹は腕を広げたり、背伸びしたり、飛び上がったり、どんなに相手を好きか言い合うのです。
絵もお話の進行も終わり方もほのぼのした本。

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#心が温かくなる本

https://unsplash.com/photos/pJILiyPdrXI

あたらしい企画をはじめてみます。

ふと思い立って、自分の好きなテーマで本のまとめを作っていくことにしました。
もともとこんな風な(「NO BOOK NO LIFE 僕たちに幸せをくれた307冊の本」)テーマに沿った本の紹介というのは大好きです。 続きを読む

「誰かが足りない」 宮下 奈都

予約を取ることも難しい、評判のレストラン『ハライ』。
10月31日午後6時に、たまたま店にいた客たちの、それぞれの物語。

認知症の症状が出始めた老婦人、
ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない青年、
人の失敗の匂いを感じてしまう女性など、6人の人生と後悔や現状の悩みを描く。
「ハライに行って、美味しいものを食べる」ことをひとつのきっかけにして、
前に進もうとする気持ちを、それぞれ丹念にすくいとっていく。

とっておきの日に、私も『ハライ』に行きたい。

読み終えた今、日曜の夜ながら心がぽかぽか温かくなりました。 続きを読む

「書店ガール」 碧野 圭

「この店は私たちが守り抜く!」

27歳の新婚書店員と、40歳の女性店長が閉店の危機に立ち向かう。
書店を舞台とした人間ドラマを軽妙に描くお仕事エンタテインメント。本好き、書店好き必読。

元気が湧いてくる傑作お仕事小説

軽い気持ちで読み始めたら、止まらなくなった1冊です。

独身アラフォー副店長の理子と、はねっかえり部下の亜紀と衝突は、読んでいて心がトゲトゲしましたが、こういうの、あるよねぇと友人の話を聞いているかのように読みすすめました。 続きを読む

「あなたは、誰かの大切な人」 原田 マハ

家族と、恋人と、そして友だちと、きっと、つながっている。
大好きな人と、食卓で向かい合って、おいしい食事をともにする。

単純で、かけがえのない、ささやかなこと。それこそが本当の幸福。
何かを失くしたとき、旅とアート、その先で見つけた小さな幸せ。

タイトルに、一目惚れしました。

タイトルに惹かれてずっと読んでみたかった1冊です。

「最後の伝言」
「月夜のアボカド」
「無用の人」
「緑陰のマナ」
「波打ち際のふたり」
「皿の上の孤独」
からなる、6編の短編集です。 続きを読む

「切れない糸」 坂木 司

周囲が新しい門出に沸く春、思いがけず家業のクリーニング店を継ぐことになった大学卒業間近の新井和也。
不慣れな集荷作業で預かった衣類から、数々の謎が生まれていく。同じ商店街の喫茶店・ロッキーで働く沢田直之、アイロン職人・シゲさんなど周囲の人に助けられながら失敗を重ねつつ成長していく和也。
商店街の四季と共に、人々の温かさを爽やかに描く、青春ミステリの決定版。

読んでいて、心に明かりが灯るような1冊でした。

商店街のクリーニング屋さんを舞台にした、日常ミステリーです。

著者が、“1話限りで去ってしまう使い捨ての人物や「死ねば事件だ」のような話は書きたくなかった” と発言されていたとあとがきにあるように、描かれる人物や日々のできごとに愛情が込められているのがわかります。

刊行はこちらの方が先ですが、和菓子のアンでお馴染みのあの人も登場します。それは、思いがけず親しい友人に再会したかのような嬉しさで。

私、坂木さんの描く登場人物が本当に大好きで、誰も彼もがすごく魅力的なんです。
「クリーニング屋」という仕事に少しずつ誇りを持って取り組む主人公も大好きだし、義理人情に厚いプロ職人のシゲさんも好き。そして共通するのはみんなとても優しいというところ。
著者が周りに愛されて育って、それを感謝する気持ちを常に持っていることが伝わってきて、胸が本当に温かくなります。

さて、ミステリーとしては顧客の個人情報が詰まった洋服等を集荷しながら、謎を解いていくスタイル。
クリーニング関連の豆知識も知ることができておもしろかったです。
クリーニングから戻ってきた服のビニール袋は外すこと、というのは知っていましたが、汚れたらすぐに洗えばいい、という素材ばかりでないこと等知らなかったこともたくさん。
和菓子のアンでは全国のお取り寄せが登場して楽しませてくれましたが、今回は映画が作中でいくつも紹介されます。
物語の本筋とは違うけれど、読み手には嬉しいおまけをつけてくれるのもすごく楽しめる要因の1つです。

故郷らしい故郷がない私は、こういう生まれ育った町、とか、商店街の顔なじみの関係、とかすごく憧れます。
きっと煩わしいこともあるんでしょうけれど、顔の見える関係が温かいですよね。
読み終わってタイトルを見ると、改めていいタイトルだなぁと思います。次作も、とても楽しみです。

愛されていたという記憶さえあれば、人は一人になっても生きていける。大切にされた命だとわかっていれば、暗い道で迷うこともない。わかるか? (p102)

★★★★★

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「ストーリー・セラー」 有吉 浩

このままずっと小説を書き続けるか、あるいは……。
小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた――。
「Story Seller」に発表された一編に、単行本のために書き下ろされた新たな一篇を加えて贈る完全版。

読み終わってぱたん、と本を閉じたら思わず心が空白になりました。
だって、最後に「・・・ん・・・・?!」と思わせて終わるんだもの。
ひと呼吸置いたあとで最初から読み直すこととなりました。

プレゼントのようなとても素敵な装丁の本書。
ここには女性小説家の妻を亡くす夫の話と、女性小説家の夫が亡くなる話がそれぞれSideAとSideBに掲載されています。
有川さんによく似た「彼女」によって書かれた2つの物語。

私が好きで追いかける作家さんは、村上由佳さんにせよ(「ダブル・ファンタジー」)、狗飼恭子さんにせよ(「薔薇の花の下」)小説家が主人公の小説を書いていて、普段は意識することないのに、一体どこまでが著者本人のことなの??と思うくらい、本人の影を作中に感じてしまう。
本書は有川さんが意図してる部分もあるけれど、実際にノンフィクションな部分も多分に盛り込んである気がしました。

きゅんとする要素もあるんですが、それよりも相手を思う深い愛情に触れられて胸が締め付けられるような作品でした。
SideAの手紙なんて、有川さんから旦那様へのラブレターじゃないですか、ほとんど。伝えたいことを本に載せて届けるという、小説家にしかできない愛情表現、なんて風に感じたりして。

深い愛情や感謝が感じられると同時に、有川さんの強い憤りも本書にぶつけられているように感じました。
問題を先送りにする家族、批判を振りかざす無遠慮な人々、理不尽な運命。読んでいてこちらまで悔しく、イライラさせられたほど。

それでも総合的には夫婦の愛に心が温かくほぐされた1冊でした。生涯の伴侶となる人が一番の味方、ってなんて頼もしいことでしょうね。

結婚の最大のメリットは精神的に支え合える相手が常にそばにいることだ。 (p53)

★★★★

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「プリンセス・トヨトミ」 万城目 学

400年も前から受け継がれてきた秘密が、大阪にはある。
独立国、大阪。

その存在は密かに、そして大切に守られてきた。
ところが、その秘密の扉を開ける者が、ついに東京からやって来た。

目の付け所が面白い。
絶対無いよ、そんなのー!と笑い飛ばすのは簡単だけど、こういう奇想天外なことってわくわくしますよね。
小さい頃はもっと頻繁に感じていたようなわくわく感を思い出させてくれるのがこの一冊。

見どころはたくさんありますが、まずは最初から最後までカッコ良かった松平。
お堅い役人とは一線を画しますよね。
頭はいいのに情に熱いって、カッコいい。
二つの物語が一つに絡み合っていく過程もいい。そして、何より大阪の街並みがいいですね。
大阪城に行ってみたくなる。下町を歩いてみたくなる。

ネタバレなしに感想を書くのは難しいけれど、読了後はじんわり心が温かくなりました。
万城目さんのこの常軌を逸していながら王道なこの感じ、癖になりそう。
何かを守ろうとする男の人と、それを陰から見守る女の人。
受け継がれてきたものが何かに想いを馳せた時、この物語がより素晴らしいものに感じられました。
描写が綺麗だから、映像化しても素敵だろうなと思っていたら映画化されてるんですね。

果たしてあの大阪城を見事に映像化できるんだろうか。
見てみたいような、見ないでおきたいような。

願っているだけでは、いつになっても何も変わらない。
自ら変えようとしない限り、世の中は決して変わらない。  (p60)

★★★★

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「卵の緒」 瀬尾 まいこ

僕は捨て子だ。
それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。
家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟の物語「7’s blood」も収録。


読みたかった、瀬尾さんのデビュー作。
最初からこんなにも完成度が高かったのかと、驚きました。
心の隙間に染み入るように、じんわり温かい気持ちになります。

「捨て子」「不登校」「DV」「受刑者」「親の病死」と、やはり取り扱っている内容は軽くない。
でも、その重さを感じさせないような柔らかさとひたむきさが瀬尾さんの小説にはあるような気がします。

表題作の「卵の緒」は美味しそうで、愛情いっぱいで、読んでいて本当にほんわかした気持ちになりました。
母は強い。いわゆる「常識」というものに囚われることなく、型にはまらず精一杯の愛情を持って子どもを育てることの偉大さを垣間見ました。
常識の中にいないことは、一歩間違えると後ろ指を指されたりすることかもしれないけれど、相手と向き合って愛情を注ぐことで守られるものがたくさんあるように思います。
「7’s blood」もよかった。七生の健気さに心を打たれました。

孤独を知っている人の方が、優しくなれる気がします。
血の繋がりはもちろん大きいけれど、二人を繋げたのは母の愛情だっていうことも胸にくる。
ちょうど七子たちの年齢くらいの頃、私も夜はどこまでも歩いて行けそうな気がしてた。この年齢独自の空気感がリアルに再現されているのもいい。

震災後、「絆」というものに敏感になっているせいか、この小説にある血の繋がらない絆と血の繋がりによる絆がより一層愛おしく感じました。
瀬尾さんはやっぱり、いいな。

夕暮れでも海でも山でも、とことんきれいな自然と一人じゃないって確信できるものがある時は、ひとりぼっちで歩くといいのよ。母さんの言うとおりだ。  (p47)

★★★★

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「幸福な食卓」 瀬尾 まいこ

「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
冒頭の1行です。
瀬尾さんはいつも、「なになに、どういうこと?」と思わせ、読者を惹きつけるのに長けている気がします。
父さんを辞めた父さん。
独り暮らしを始めた母さん。
勉強もスポーツも万能なのに、大学に行かなかった兄。
ちょっと変わった登場人物が織りなす優しい物語でした。

瀬尾さんの書く男の子が魅力的で、たびたびキュンとしてました。
特別描写が詳しいわけでもないはずなのに、登場する食べものはどれもとても美味しそう。
それは食べものがいつも人の手を介して登場するからなのかな。
タイトルの指す「幸福な食卓」はきっと、家族で囲う食卓のことなのでしょうね。
人の優しさに胸がぽかぽか。

そんなに感情移入していないと思ったのに、意外にも結構泣きました。
12個のシュークリームで、再び心がぽかぽか。

「すごいだろ?気付かないところで中原っていろいろ守られてるってこと」   (p58)

★★★☆

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