「クジラの彼」 有川 浩

『浮上したら漁火がきれいだったので送ります』。
それが2ヶ月ぶりのメールだった。

彼女が出会った彼は潜水艦(クジラ)乗り。
ふたりの恋の前には、いつも大きな海が横たわる ――有川浩がおくる制服ラブコメ短編集!

自衛官だって、恋をする。

久々の有川さん。
自衛官が登場する、有川さんワールド全開のベタ甘な短編集でした。 続きを読む

「フリーター、家を買う。」 有川 浩

就職先を3ヵ月で辞めて以来、自堕落気儘に親の脛を齧って暮らす“甘ったれ”25歳が、母親の病を機に一念発起。
バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走する。本当にやりたい仕事って?
自問しながら主人公が成長する過程と、壊れかけた家族の再生を描く、愛と勇気と希望が結晶となったベストセラー長編小説。

ドラマ化もされてタイトルは見かけたことがあるこの小説、タイトルから夢がある明るい話なのかと思いきや、苦くて重くてやるせない展開に正直戦きました。そして、結構泣きました。
ネタばれは極力防いで書きますが、物語前半を覆っているどす黒いオーラが本当に凄まじいです。取り返しのつかないことをした、という後悔があまりに苦くて、主人公のふがいなさに共感しながら苦しくもなりました。

人って、楽な方に楽な方に流されがちだし、自分の考えが当たり前のように思ってしまいがちで、誠治のだめだめっぷりはもはや救いがないようにすら見えるけど、だからこそ直向きに変わっていく彼がかっこよくて。面倒なことを放り投げてきた彼の成長物語でもあるこの小説には、随分と勇気づけられるものがありました。

個人的には脇役ながら誠一さんのインパクトが強いです。
最初はイライラさせられっぱなしで誠治を上回るだめだめ男だと思ってましたが、そもそも完璧な人なんていないし、虚勢を張らずにはいられない弱さだとか、不器用な愛情表現とか、仕事にかけるプライドとか偽りない親心とか、読み進めているうちになんだかちょっと尊いなぁなんて思うように。きっとお母さんもそのあたりのことが全部わかっていたんでしょうね。

完全なる機能不全家族に見えたのに、それが修復されていく様も見どころです。
そして就職後の話も大好き。これぞ有川さんという読み心地で、どの登場人物も愛があるいいキャラ。ラストもラストでいいんですが、もっと先まで読んでいたいくらい。
なんなら豊川の恋愛が実る話を読んでみたい・・・!

総じてこの本は1つ1つ築いた信用が今の自分を作っていること、人は変われるということを身の丈いっぱいの心意気でもって伝えてくれる、大人に読んでほしい1冊でした。

★★★★☆

follow us in feedly

「空飛ぶ広報室」 有川 浩

不慮の事故でパイトット免許を剥奪された空井。
パイロットでなくなった彼が配属されたのは、防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。
待ち受けるのは、ミーハー室長の鷺坂をはじめ、尻を掻く紅一点のべらんめえ美人・柚木、鷺坂ファンクラブ2号の気儘なオレ様・片山など一癖も二癖もある先輩たちだった。
「あの日の松島」を書き下ろした待望のドラマティック長篇。


私的に泣きどころが多くて、わりとしょっぱなから泣きまくって、読み終わってみれば明け方で目が溶けそう。 続きを読む

「ヒア・カムズ・ザ・サン」 有川 浩

真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
-この後続く4行のあらすじから、小説と舞台、2つの世界が生まれた。


たった7行のあらすじから、小説や舞台が生まれたという。
本書に収められているのは、その小説と、舞台が描いた世界のパラレルワールド小説。
どちらも読後感ばっちりです。解説でも書かれていましたが、有川さんの本は読後感が良くて安心して読めます。

さくっと読める2つの物語は、どちらも好きですが、眩しい太陽みたいな芸術家肌のお父さんが登場する前者の方がどちらかといえば好きかもしれない。
ただ、どちらのお父さんもなんというか、我が道を突き進むしかできなかったんだろうけど、家族の立場に立つとなんとも寂しくなりますね。愛情表現の仕方はいろいろなので、それを否定はしませんが、気付いたときにはもう遅い、ってこともたくさんありますものね。

さて、主人公の不思議な能力については、なかなか残酷といえば、残酷ですよね。恋人の心離れがわかってしまうなんて、そんな能力いらないや。とはいえ、能力がなくてもわかってしまうものはわかってしまうのだけど。
主人公が持ちたくて持った能力ではないにせよ、それを受け入れてくれる人がいて、自分自身受け入れながら生きていけたら、それはすごく素敵なことですね。

最近友人の舞台を見て舞台のおもしろさに感激したところだったので、ぜひ舞台版も見てみたかったですね。(と思って劇団のホームページを調べたら、大好きな小説が舞台化されてるのを発見して動転してます、見に行きたい…)

★★★☆

follow us in feedly

「三匹のおっさん」 有川 浩

還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!
定年を迎えて一念発起した剣道の達人・キヨ、経営する居酒屋も息子に任せられるようになってきた柔道の達人・シゲ、遅くできた一人娘を溺愛する町工場経営者で機械をいじらせたら右に出るものナシの頭脳派・ノリ。
かつての悪ガキ三人組が結成した自警団が、痴漢、詐欺、動物虐待などご町内にはびこる悪を成敗!


「三匹の」、ときたら、続くのは「こぶた」なはず。
そんなところを見事に裏切ってくれるのが、有川さん。
還暦を迎える3人のおじ様たちの物語でした。

今の60歳は、若者の私が言うのもあれですが、ほんとに若いですよね。
孫がいる人も少なくないと思いますが、おじいちゃんという感じじゃ全然ない気がします。
定年後、仕事以外の生きがいを見つけて活動されてる方も多いですしね。
こんな人たちが自分のまちにもいたら最高!と思わずにいられません。

ユーモア溢れる痛快コメディですが、有川さんらしい恋愛場面にちょっとドキドキさせてもらいました。
若い二人の恋愛もいいんですが、個人的に一番胸にきたのは「一緒の墓ァ、入ろうな、○○」の台詞。あーいいなあ。
ずっと一緒に歩んできて、それなりの年齢になって、それで慕ってる相手からそんなこと言われたら絶対泣けちゃう。
最近、続編が出たこともあって、彼らの新たな物語を読めるのがとても嬉しい。

それにしても、軽快なリズムで書かれているけど、描かれてる題材は結構リアルですよね。
小動物の虐待、高齢者狙いの催眠商法、若者を獲物にする詐欺師。
モンスターペアレントの存在や無関心教師、希薄になる地域の繋がりなども描かれていて、世知辛いというか、寂しい世の中になってきたのかなと残念に思う部分もありました。
一方で、祖父と孫の交流をはじめ、人と人との温かい繋がりが確かに感じられて読んだ後はほっこりすること請け合いです。

★★★☆

follow us in feedly

「シアター!」 有川 浩

解散の危機が迫る小劇団「シアターフラッグ」
そこそこ人気はあるが、何せお金がない。積もり積もった負債はなんと、300万円。
巧は兄に泣きつき、貸してもらえることになった。しかし・・・
「2年間で劇団の収益からこの300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」


有川さんの小説、やっぱり好きだ。
題材の幅も広くて、知らなかった世界を見せてくれるから、毎回わくわくしてしまう。
有川さん自身が常にアンテナを立て、様々なことに興味を持っているからこその題材の広さなんでしょうね。この本も、「図書館戦争」で柴崎麻子役を演じた沢城みゆきさんに招待された舞台と、そこで聞いた話がきっかけで生まれた作品だそうです。
キャラクターがコミカルで魅力的でいて、ストーリーは軽快。
リズム良くさくさく読めるんですが、たまにビビッと厳しさもある。
それがすごく心地よかったです。

司は、いわゆるツンデレというやつですか?(違う?)
兄弟愛がすごく微笑ましかったです。厳しさって、実は優しさでもありますよね。見捨てることなく、相手に成長してほしいと思うからこそ厳しくもなるのだと思うから。
「好きだから、やりたい」ということは貴くて素晴らしいと思うけれど、「仕事」として何かをやるのであれば、「好き」だけじゃ全然足りない。
仕事としてやるなら、求められるのは「プロ意識」であり、「プロとしての仕事ぶり」
劇団メンバーに足りてなかったのはきっとその部分。
公共事業などもそうですが、文化的な生産性のない分野はもともと利益を出すことを最優先事項にしていないですものね。

そこで利益をしっかり意識してやることは、一般の企業よりも難しいかもしれないけれど、とても必要なことに思います。
司は厳しく見えて、当たり前のことを言って、当たり前のことをしているに過ぎないんですよね。
なんだか目が離せないのは、千歳。
大好きなのは、司。応援したいのは、巧。
他のメンバーも個性的で人数の割にしっかり頭に残ってます。
続編も楽しみ!あと、不覚にも強引グマイウェイで笑ってしまった。ちょっと、有川さん・・・w

「人間が何かを諦めるのに必要な条件って分かる?」
(中略)
「全力でやって折れることだよ」  (p54)

★★★★

follow us in feedly

「県庁おもてなし課」 有川 浩

高知県庁に実在する「おもてなし課」
県外から来る人を増やし、あたたかくもてなすために奔走中。
が、悲しいことに、悪気はなくとも、彼らはどこまでも「お役所」だった。


前々から読みたくて買ったにもかかわらず、買ってからも楽しみすぎてなかなか読めなかった本です。やっと読めました。
読み終わるのがもったいない、と思いつつも、一度ページを捲ったらもう止まりません。一気に読み上げちゃいました。今回もすごく最高でした。

物語そのものもよかったけど、地域復興を応援するその郷土愛溢れたところにとても圧倒させられました。
有川さんは、入浴剤付の文庫本「ほっと文庫」でもシリーズの他の入浴剤は香料のみなのに、馬路村のゆずを実際に使ってますよね。そもそも題材が高知の馬路村ですし。
人気作家だからできることは、すなわち自分に何ができるかを真剣に考えた結果ですよね。
この本の印税も東北関東大震災の義援金として寄付されますし、想いを行動に移すその力に本当に心を動かされました。

そして物語の方ですが、男性陣のかわいさとカッコよさ、またそのギャップにやられました。反則なほど誰もが魅力的。
それから方言がいい。本書の最後の対談でも有川さんが言ってますが、私も小さなまちで育って、当時ははやく出たかったけどもその良さに気付けたのはそこから離れてからです。
当事者にとっては見慣れたものでも、光る原石となるものはきっと周りに溢れてるんでしょうね。これは地域復興を頑張る人たちにとってまるでエールのような本ですね。

それにしても描かれてる公務員のぐだぐだっぷりは、半分実話というのも、それをしっかりネタにする有川さんのしたたかさも合わせて笑えます。
「民間感覚」がないというのはきっと、公務員からしたら耳に痛い言葉でしょうね。
そりゃあ、生き残るために時間の無駄も、経費の無駄も削ることに一心不乱な民間からしたら甘い部分はたくさんあると思います。
その一方で彼らの情熱が本物なこと、素直さや実直さに溢れてることに心が熱くなります。

最後の「・・・けんど、光はある!」のキャッチコピーを作った話はノンフィクションのようですしね。
表紙もこの小説の魅力を十分に表していて大好きです。タンデムやりたい!高知に行ってみたい!すごく楽しく読めた一冊でした。

新幹線はない。
地下鉄はない。
モノレールも走ってない。
ジェットコースターがない。
スケートリンクがない。
ディズニーランドもUSJもない。
フードテーマパークもない。
Jリーグチームがない。
ドーム球場がない。
プロ野球公式戦のナイターができん。
寄席がない。
2千人以上の室内コンサートができん。
中華街はない。
地下街はない。
温泉街もない。


金もない。
・・・けんど、光はある!

★★★★☆

follow us in feedly

「図書館革命」 有川 浩

原発テロが発生。
そのテロの手口と酷似していた著作を持つ人気作家が良化隊のターゲットになった。
図書隊総力をあげて守るが、堂上は重傷。動揺する郁に堂上は・・・
感動の最終巻。


最初からものすごく甘い!
ドキドキにやにやしながら読みました。
堂上のが一枚上手だけど、郁のホームランも見事。
どのカップルの恋愛模様も読んでて楽しめます。 続きを読む

「図書館危機」 有川 浩

誰もかれもがカッコイイ。
そのカッコよさの秘密は、きっと「一生懸命」だから。
読んでいてそんなことを思いました。
今回もたくさん笑って、目頭を熱くして読みました。

前作で気になってた王子様の話にどう決着をつけるのかと思いきや、あんな宣言でくるとは!
まっすぐに進むとそうなるのかと面白いやら、清々しいやら。
郁の成長が特に見られた1冊でもありましたね。
堂上との空気が甘くなるのに反比例して、職場での甘えがなくなった気がします。
本人が自覚したからなのか、堂上×郁の空気は極上スイーツ並みに甘い。

激しい戦闘もある中、得体のしれない違和感をずっと感じてました。
リアルじゃないな、と思うその根拠はなんなんだろうと。
それはたぶん、私たちの世界と似ているこの世界で、良化法を通してしまうよな世界で、本のためにここまでの激闘が繰り広げられていることに対して。
いくら仕事とはいえ、命をかけて守ろうとするほど、彼らにとって本とは尊いものなんだろうか。
無関心から良化法の施行を許してしまったのに?
もちろん守っているのは本に限らず、それを読みたいと思う人たちもなのはわかっているけど、仮に私たちの世界で良化法が通ったとしても誰も命をかけてまで何かをしようとしない気がする。だから、この世界だってきっと。と思うのが違和感の原因なのか、
身体を削ってまで検閲をする良化委員会側の動機が見えないからなのかは謎ですが、現実はきっともっと醒めてるよ、と思ってしまう自分が少し悲しかったです。

言語規制って、不思議ですよね。
決して悪意じゃないからこそ、少しタチが悪い。
3章は多くの人に読んで欲しい。ただ小難しい文章にしたのではなく、こんなにも素敵な物語にして世界に届けてくれる有川さんに感謝したい。
そして毎度のことですが、巻末のインタビューがものすごくいい。毎回楽しみです。

・・・・・・だっから、きゅんとか鳴るなAカップの分際で―――!  (p80)

「決めた人たちはありがたい気遣いのつもりかもしれません、でもこっちにすれば「何様だ」って話ですよね。差別してるのはむしろお前らじゃないかって言いたい」  (p158)

★★★★

「図書館内乱」 有川 浩

今回は連作風に、それぞれの登場人物にスポットライトを当てています。
登場人物の新たな一面が見れて、ますます大好きに。
どれもこれも大好きだけど、特に「美女の微笑み」「ロマンシング・エイジ」は最高でした(どちらか1つなんて、選べない)

まず、玄田×折口が非常にカッコいい。
お互いへの信頼、理解、尊敬、愛情が混ざって深みのある関係。
それぞれがしっかり自分の足で立っている上でのこの関係を、単純に「大人の恋愛」と一括りにしていいのかわからないけど、二人の関係がとても好きです。

そして、柴崎!
ソツなく完璧に見える彼女がそこに至るまで乗り越えてきたものを思うと、泣きそうになる。
強そうに見えて、実は弱くもある。でも、誰よりも強くあろうとする。そんな姿勢に惹かれました。
郁のまっすぐさは前作から知っていたはずですが、そのまっすぐ具合は私の思っていた以上で、ここまでいくと清清しい。
よく泣くし、社会人としてどうなの?というような暴走だってたまにはあるけど、堂上が言ってるみたいに「全員が笠原一士のようでも困りますが、笠原一士のような隊員が一人もいなくても困ります」というのは、その通りだと思いました。
本書の中でも、郁は希望の光に感じます。

そして、今回の恋愛模様、甘甘でしたね。
ベタな、チョコレートみたいに甘い堂上×郁も好きですが、桜餅みたいな甘さの小牧×鞠江も好き!身悶えしてしまう。
先に読んでいた「レインツリーの国」を思い出しつつ、楽しめました。
「レインツリーの国」を読んだら、再びこの本を読みたくなりそう。
たくさん笑わせてももらったし、いい1冊でした。

そして既に3,4巻目をキープしておいたのは、正解でした。
最後にまさか、あんな爆弾が用意されてたなんて。

「お膳立てされたキレイな舞台で戦えるのはお話の中の正義の味方だけよ。現実じゃ誰も露払いなんかしてくれないんだから。泥被る覚悟がないなら正義の味方なんか辞めちゃえば?」  (p70)

「本に難聴者が出てくる本を勧めるのが酷いなんて、すごい難癖。差別をわざわざ探してるみたい。そんなに差別が好きなの?」  (p141)

仕事の理想に殉じるなど、実際には難しい。大切な誰かに恥じない自分でいるために人は歯を食い縛れるのだ。  (p386)

★★★★☆