「図書館戦争」 有川 浩

前評判を聞いて、ずっと気になっていた本でした。
軽快でキャラが動き回る、恋愛エンターテイメント小説でしたね。
有害と思われる書物の規制については、現実の世界でも度々言及されてますよね。
与えなければ解決、というものでもないと思うのですが。
節操のないマスコミ、政治的無関心な国民、暴走するPTA集団など所々に社会への皮肉も見え隠れしてメッセージ性を感じました。

作中では、武装した図書隊という設定にまず驚きでした。
本と武器。最も相容れないものの1つに感じるので。
でもそれも、「守るため」というスタンスが貫かれていることに少し安心しました。リアリティは全く感じませんが、そこは戦隊レンジャーものと同じ感覚で楽しんだので何の問題もありません。

今回の恋愛は、思ったよりも甘くなかったものの、これはこれで好きです。
自制する堂上、突っ走る郁。
王子様の察しはすぐにつきますが、焦れ焦れなのがいいです。
ここぞって時に来てくれる正義の味方みたいな人。女の子の妄想の中では王子様ですよね。時間とともに王子様が美化されてたのも、笑えます。

恋愛を期待して読んで思わぬ収穫だったのが、仕事に関するエピソード。
社会人1年生が読むと特に刺さる言葉も多いんじゃないでしょうか。
厳しい上司は貴重です。小牧の言ってることが好き。
最初は学生気分が抜けないような甘さのある郁が、少しずつ変わっていくのもいい。
自尊心が高くて努力もするけど柔軟さのなかった手塚が、どんどん柔らかくなっていくのもいい。
続きも機会を見つけて読んでみようと思います。

図書隊員は本を守っているのじゃない。寄せられる人の気持ちを守っているのだ。  (p67)

「正論は正しい、だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使ってるのはどっちだ?」  (p117)

「ぶっちゃけたところ別に嫌いな奴とでも仕事はできるんだよね。
人間関係が良好なほうが仕事は巧く回るとしたもんだけど、好きなタイプとばかり仕事ができるわけじゃないし。感情で能率下げなきゃ笠原さんを敢えて好きになる必要はないと思うけど。
好きじゃなくても能力を信頼することは可能なわけだし」
  (p121)

「義理も縁もない他人に何かを頼むとき、『協力してくれるべき』とか『してくれるだろう』とか甘い見通し持ってる奴は絶対失敗するわ。協力って期待するものでも要求するものでもなくて、巧く引き出すものなのよ」  (p224)

★★★★

「阪急電車」 有川 浩

おもしろい!
読み終わった後に、ほっこりと余韻が残るのもいい。
阪急電車をまるで知らなかった私でも楽しめたけど、地元の人が読めば更にわくわくするような楽しさ倍増でしょうね。

有川さんはリアルなエッセンスを交えるのに本当に長けていると思います。目の付け所がおもしろい。
がたんごとんと電車が進むのに合わせるように物語は進み、1つ1つの物語、人物が交錯する構成。うまいです。
片道じゃなく折り返しにした意味があるところもいい。

ところどころ恋愛要素も入って甘く、きゅんとしたり、微笑ましくなったり。
それに、見ず知らずの人と人が交差する瞬間を捕らえる視点も絶妙でした。
電車の中には私が気付かないような物語が溢れているんでしょうね。
そういったものを拾い上げる著者のセンスと、軽快な物語にしていく執筆力が有川さんの魅力なんだと思います。

老若男女の登場人物誰もがいい味を出していますが、特に若いカップルがかわいくてかわいくて。読んでいて身をよじりたくなりました。
有川さんの生み出す登場人物の会話も大好き。
女子高生の会話は、思い出しても本当に笑えます。
こんなにキュンキュンできて幸せな気持ちを味わえるなんて。読めてよかった。

ちょっと頑張れ、今頑張れ、俺。今度は噛むな。  (P127)

「あたしも色々間違ったほうや嫌なほうに行きそうなとき、行きずりの人から色んな言葉もらってん。あたしとおばちゃんも行きずりや」  (P169)

★★★★☆

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「レインツリーの国」 有川 浩

「忘れられない本」を通して出会った2人の物語。
奇跡的に繋がった1本の糸。
主人公と一緒にわくわくしたり、泣いたり、ほっとしたり。
等身大の2人が織りなす恋愛物語にすっかり惹きこまれました。

伸がメールで書いている「考え方や感じ方は全然違うところがあって、その似てるのにズレてるところがめっちゃ面白い」というのこそ、恋愛の醍醐味だよね、と頷きつつ思いました。
その人の辛さというのは本当の意味ではその人しかわからない。
その辛さ故に傷ついてきたからこそ、大好きな人からは特に傷つけられたくなくて自分を守ろうとするあまり相手を傷つけてしまう。恋愛ではよくあることに思います。

相手との距離が近くなる恋愛において、それは相手への信頼の証でもあり、甘えでもあるもの。
甘えることや我儘がいけないんじゃなくて、大事なのは二人のバランス。
頼ってもいいけど、どちらか一方が我慢しっぱなしな関係は先が見えてる。
二人のひたむきさと前向きさが微笑ましく感じました。

それと、あとがきで初めて有川さんが女性だと知ってびっくり。
名前からずっと男性だと思ってました。
そしてこの本に聴覚障がいのある人が登場するというのは知っていたのですが、思っていた以上に深いところまで踏み込んだ内容で驚きました。
またいつか読み返したくなるであろう、とてもいい本でした。

ハンデなんか気にするなって言えるのは、ハンデがない人だけなんです。それも、私に迷惑かけないならあなたにハンデがあっても気にしないよって人がほとんどだと私は思います。  (p99)

★★★★☆

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「ゆず、香る」 有川 浩

しばらく売り切れが続いていた、ゆずの香り。
今ではレジの横や本屋さんでも山積みにされているのを見かけるので、増版したんでしょうね。
さすがは人気作家だけあって小説ももちろん良かったですし、入浴剤もゆずの甘く爽やかな香りが広がって、思わずうっとり。

ですがそれだけでなく、小説と入浴剤の2つが互いをより光らせる、そんなコラボレーション商品でした。それぞれのリンクの仕方がまた絶妙。
お風呂でちょっとドキドキしつつ、甘い気持ちになれました。

★★★★

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