「白蓮れんれん」 林真理子

「筑紫の女王」と呼ばれた美しき歌人・柳原白蓮が、年下の恋人、宮崎龍介と駆け落ちした、世に名高い「白蓮事件」。
華族と平民という階級を超え、愛を貫いたふたりの、いのちを懸けた恋―。

門外不出とされてきた七百余通の恋文を史料に得て、愛に翻弄され、時代に抗いながら、真実に生きようとする、大正の女たちを描き出す伝記小説の傑作。

第八回柴田錬三郎賞受賞作。

文字通り、命を賭けた恋でした。

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「オーラの条件」  林真理子

ホリエモンの見た天国と地獄、紀宮様のエレガントなご婚約会見、解散総選挙で見せた、小泉首相の凄み…旬のただ中に生きる人たちは、不思議な光線を発している。

魅力とはキケンをはらむもの。「週刊文春」人気エッセイ。

郵政民営化、など時代の風を感じます。

なんだかとってもananっぽい!と思いながら読んでいたら、「週刊文春」で連載されていたエッセイだったんですね。いろんなところで連載を持っていて、その人気ぶりが伺えます。 続きを読む

「満ちたりぬ月」 林 真理子

短大時代の友人絵美子は、優しい夫と結婚し幸せな家庭生活を送っていた。
その間、圭は歯をくいしばって働いた。

そして34歳の今、家庭と共にすべてを失った絵美子の目には、圭がようやく手にしたイラストレーターとしての成功が羨ましく映り始めた。
幸福な家庭と充実したキャリア。
女の幸せはどちらにあるのかを問う意欲作。

女性は、比較する生きものなのかもしれない。

30歳を越えると、学生時代の友人でも随分境遇が変わってくる。
同じ教室で笑い合っていたのに、気付けば共通の話題が減ってきたりして。

今回登場する二人の女性は、ともに34歳。短大時代の同級生です。 続きを読む

「花探し」 林 真理子

舞衣子は、不動産王に磨き上げられた愛人のプロ。
美しく洗練された容姿を高級ブランドに包み、ベッドではテクニックの限りをつくす。
が、最近は、新しいパトロンとの関係にも翳りが…。舞衣子は密かに決意する。
「いいわ。次の男は私が選ぶ」弁護士、名家の御曹司、流行作家―その「男」は誰か。
一流レストランで、秘密の館で、ホテルのベッドで繰り広げられる、官能と欲望の祝宴。

小説の素晴らしいところの1つは、自分の知らない世界を見せてくれるところだと思います。
本書の主人公は、プロの愛人。
お金持ちの人たちが作り出す煌びやかな世界と、自分とは全く違う価値観の人々に触れられておもしろかったです。

中村うさぎさんが素晴らしいあとがきを書かれてるんですが、私も主人公には1ミクロンも共感できずに、とはいえ、その確固たる価値観に圧倒させられました。
人の価値観は、若い頃の環境に影響される部分が多いと思いますが、若いうちから愛人として囲われている彼女の価値観が本当に独特で。

愛人とは、いわば妻のいる人とお付き合いするということですが、魅力的な男性に女性が集まるのは当然のことと言い、よくある不倫と違うのは、愛情や未来なんていう不確かなものを彼女が一切求めていないところ。
彼女は誠実さはお金として表れるものだと信じてやまない。

彼女にとっては、類まれなる「女の魅力」と引き換えに、相手がどれ程大切にしてくれるか(=お金を遣ってくれるか)が、重要なのです。
そして何がすごいって、彼女がその美貌や身体(あとは相手との駆け引きのための知略もそうですが)のみで、生活の基盤から貢物まですべてを手に入れているところ。

あとがきにも書かれていましたが、私もいつか無くなるそんなものだけで勝負をするなんて怖い、と考えてしまいがちですが、そういった若さを全力で享受するのも1つの生き方ですよね。

「週刊新潮」で連載されていたもののようですが、かなり官能的でもありました。10年後の彼女の話が読んでみたい。

そもそも金が無い男が、どうして若い女とつき合おうとするのか。
愛情などという、来月は消えるかもしれないもので釣って、妻ある男が若い女を抱こうとするのが、まず間違っているのだ。
金がこのうえない誠実なものだということを彼らは知らないのだろうか。
 (p324)

★★★☆

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「フェイバリット・ワン」 林 真理子

国内の弱小ブランドで働く駆け出しのファッションデザイナー、夏帆23歳。
恋も仕事もどこか中途半端だった夏帆は、様々な男性と出会い、パリコレで刺激を受け、野心に目覚めていく。
もっと素敵な恋愛をしたい。もっと上質な洋服のデザインをしたい。そして、世界から認められたい――。

◆  

主人公は、どこにでもいる普通の女の子。
お洒落が好きで、素直で、恋愛を楽しむ彼女は、まさに本書が連載されていた雑誌MOREの読者層そのものではないでしょうか。
小説版「野心のすすめ」とも言われている本書は、そんな彼女が「特別」を目指してひたむきに駆け抜ける物語でした。

では「特別」とは何か、というと、辞書によると「他との間にはっきりした区別のあること」となりますが、唯一無二である、代わりのきかない、そんなキラキラしたものを特別と呼ぶんじゃないでしょうか。
無難なところで収まるのではなく、どこまでもそのキラキラを手に入れようと駆け抜ける主人公は眩しく、まさに野心とはこういうものなんだと感じさせられました。

それぞれの登場人物のキラリと光る台詞も印象的でした。
カメラマン中谷さんは中でも素敵。
「キラキラした人の下にはさ、何十倍もの満たされなくって、自分の夢とは別の道を歩いていった人がいるんだよ。
僕はさ、そういう人をたくさん見てきたからさ。ちゃんとそっちに向ける視線も持っていようと思うよ」

なんて、言えるキラキラした人。

人が「特別」に惹かれるのは、本能かもしれない。
がむしゃらに頑張るのも、コツコツと積み上げていくのもいいけれど、「大人のルール」は守らないとね。

「うんと頑張ってつらい思いしてさ、今の自分になったわけだよね。
一段も二段も高いところに立ったら、違う景色が見えるのは当たり前かもしれない。だったらさ、相手の視界に入るように、こっちだって高いところにいかなきゃいけないんだよね」(p250)

★★★☆
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「ワンス・ア・イヤー―私はいかに傷つき、いかに戦ったか」 林 真理子

私はどれほど傷つき、戦ってきたことか。身を切るような恋の出会いと別れの日々。

23歳から36歳まで、スターの階段を駆け抜けた、ベストセラー作家の自伝的長編小説。


1年で1章。
濃い人生、書く事はたくさんあるでしょうが、長々と書いても読む方は飽きてしまう。
そこを、もう終わり?と思うくらい短く(でも、それがすごくちょうどいい)テンポ良く書き上げる力量も、
夢中になって読んでるうちは小気味いいけど、ふと我に返ると、自伝的小説なのにそんな出来事や心の内まで暴露しちゃってもいいの??と思う程の内容を書き上げる度胸も、
本当に素晴らしいと圧倒される1冊でした。
.
「野心のススメ」を先に読んでいて、次はこの本を読んでみたいと思っていたので満足、どころか、思っていた以上に読めてよかった1冊でした。
女性が社会に進出してきている今の時代だからこそ、多くはないとはいえ野心に満ちた女性の本も出てきていますが、20年以上も前にこんな本を世に出したことがすごい。

それはさておき、一人の女性の物語として読んだとき、仕事も恋も結婚も、上手くいかないことがありつつも、すべてを手に入れた作者の生き様に勇気づけられます。
勇気づけられ、強く生きられるような気がしてきます。
そしてやっぱり文才がある林さんの作品、これから他の作品を読んでいくのも楽しみです。

★★★★

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「本を読む女」 林 真理子

万亀は本を読むのが好きなだけの平凡な女の子。
しかし突然の父の死と戦争の始まりによって、彼女の人生は否応なく時代の流れに巻き込まれてしまう。

進学、就職、結婚という人生の岐路において、常に夢や希望を現実に押しつぶされつつも、読書を心の支えに懸命に自分の人生を生き抜いた万亀。
著者自身の母親をモデルに、一人の文学少女の半生と昭和という時代を描いた力作長編小説。

時は昭和のはじめ。
夢や希望を持ち羽ばたこうとするも、時代の波や家族に翻弄されながらひたむきに生きる一人の女性の半生を描いた物語。
モデルは著者の母親。本を読むことが好きな万亀という少女でした。

今よりももっと、自由が制限されていた時代。
進学、就職、結婚のルートが、もっと限定されていた時代。
思うように生きられなくても、その時々自分に言い聞かせるようにして現状を受け入れようとする彼女の生き方は、時代をとても反映させているように感じました。
時折彼女を通して感じる郷愁の念や、どこか夢を見ているような感覚が読了後も残っています。

人生の大事な場面では、いつも傍らに本がある。
そのことが彼女の人生において、どんなに心強く励みになったことか。
読み終わった後抱きしめたくなるような、そんな1冊。
受け継がれていく人の命のたくましさに、胸がじんとしました。

なによりも自分には本がある。  (p209)

★★★★

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「野心のすすめ」 林 真理子

「有名になりたい」「作家になりたい」「結婚したい」「子どもが欲しい」
――無理と言われた願望をすべて叶えてきた人気作家による「夢を実現させるヒント」。
「やってしまったことの後悔は日々小さくなるが、
やらなかったことの後悔は日々大きくなる」をモットーとする作家・林真理子。
中学時代はいじめられっ子、その後もずっと怠け者だった自分が、
なぜ強い野心を持つ人間になったのか。


“高望み”で人生は変わる。
野心家・林真理子の人生論。
至極正論ごもっとも。それでいて、ちょっと口に出しにくい。
そんなことがずばっと書かれているのがこのエッセイです。

林さんの哲学というエッセンスも加わって、スパイシーながら読み応えのある一冊でした。
野心を持つこと、は夢を見ること似ている気がします。
それでいて両者には絶対的な違いがあって、それが行動力や努力ではないでしょうか。夢を見るだけなら、必要なのは妄想力だけ。
謙虚さのない野心は下品。
努力の伴わない野心は惨め。
ああそのとおりだなあと思いました。

野心のある人はギラギラしていて、ちょっと自意識高いんじゃないの?自己顕示欲ありすぎじゃない?と叩かれたりする。
それでいて、一流の人は大抵野心がある。
叩かれる人とそうでない人の違いは・・・
本書に書かれているように、努力と謙虚さなのかもしれませんね。

よくばりな人は大変かもしれない。
あれもこれもと尽きることない欲求が体を満たして。
それでも、よくばりながら努力をすることでたくさんのものを手にできる。
自分を信じて自分を誇れる、という最高のご褒美が待っている。
そんな生き方が素敵だと思います。

人生のリセットは何度でもできるんです。でも、自分でないとできない。  (P84)

背伸びしないと成長できないときもあると思うんです。無理だと思ってもやる。「自分の実力だとこれくらいの仕事量で、これくらいのスケジュールだ」と枠を決めてやると、絶対に、いまの自分以上には成長できない。  (p115)

★★★★☆

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「下流の宴」 林 真理子

東京の中流家庭の主婦として誇りを持つ由美子。
高校中退の息子がフリーター娘・珠緒と結婚宣言をしたことで「うちが下流に落ちてしまう」と恐怖を覚え、断固阻止を決意する。
一方馬鹿にされた珠緒は「私が医者になります」と受験勉強を開始して―切実な女の闘いと格差社会を描いた傑作ベストセラー小説。


人物描写が絶妙。最高のエンターテイメントでした。
私はきっと、母由美子と、息子翔の間の世代。
まるで違うこの二つの世代の感覚が、どちらもわかるような気がします。
本当に上流の人は、下なんて見ない。
中流が当たり前だった時代がおわり、上にいくか、下にいくか、格差が広がる今だからこそ、この小説は生々しい。そして、痛いところをついてくる。
親はきっと、そんなすごいことを望むわけじゃない、普通の幸せを手に入れてくれたら、そう思うでしょう。

ところが今、就職するのも、車を買うのも、結婚式をあげるのも、「普通」のことではなくなっている。それに気付かない親世代は、案外多い。
そして、子育ての失敗で悩む親も少なくないと聞く。
でもそんな親世代に言ってあげたい。これは「時代」なんだと。

努力すればそれだけ選択肢が広がる。
いつの時代も定理でしょう。ただし、努力するにはモチベーションが必要だ。
~したい、~になりたい、~が欲しい。
あるいは、それがポジティブなものではなく、「見返したい」なんていうものでも、自分のためではなく、「親に楽をさせたい」なんていうものでもいい。
人は、動機なしには頑張り続けられない生きものなんだと思います。
のびしろの少ない時代は生きにくい。それでも、希望がないわけではない。
希望は、人との関わりから生まれるものなんだと思います。
全力でその人を応援してくれる人がどれだけいるか、でその人の可能性は変わってくるようにも思います。

ただし、最後に変えるのは自分。努力をするのも自分。
痛々しいけれど、すかっとする。時代を描いだ良本でした。

なんかさ、私、一本筋が通ってないとさ、愛も長持ちしないような気がすんんだよね。  (p160)

人ってさ、一生懸命やってる人にはさ、何か手を貸してやりたくなるんじゃないかな。 (p414)

★★★★

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「コスメティック」 林 真理子

バブル後のキャリア女性を取り巻く現実に直面し、打ちひしがれる主人公・沙美だが、自らの人生をあきらめられない。
「仕事でも恋でも百パーセント幸福になってみせる」そこから沙美の“闘い”が始まった。


「私はもう一回這い上がることができるんだろうか」
30代キャリア女性が、化粧品業界を舞台に闘う夢と本音と現実を浮き彫りにしたベストセラー小説です。

時に自分を重ねたりして、かなりわくわくしながら読みました。
化粧品業界の内部事情が、フィクションかノンフィクションかわからなくなるくらいリアルに感じます。いかにもありそう。
見えない上下関係、笑顔での駆け引き、計算による人間関係。
30代女性の仕事、恋、結婚、決して清いばかりじゃない分リアルなことが詰まってます。

今、仕事がすごく楽しい。
だからこそ、余計に主人公の話がリアルに感じたのかもしれない。
もちろん人にもよるでしょうけれど女性は男性よりも、結婚、出産が仕事に与える影響が大きいですよね。その両立って、本当に難しく感じます。
登場する男性陣もいいところを突いていて、エリート銀行員、二枚目ディレクター、そしてワイン通の装丁家。

長年付き合った結婚相手とのエピソードがとてもリアル。
恋愛なんて冷めだしたら、恋愛以上に楽しいことを見つけてしまったら、終結しか待っていないのかもしれないですね。
「恋をするということは、その男の現在をひとり占めすることだが、結婚するということは、彼の過去も未来もひとり占めにすることなのだ」って、名言ですよね。
登場する男性陣に対して、舌を巻くこと、腹を立てることのなんと多かったことか。30代キャリア女性の仕事という観点でも、異性関係という観点でも、非常におもしろく読める作品でした。

「昔からよく言われることやけどね。じゃ、安い化粧品で効果あるかっていうことなんよ。
二千円の美容液つけて、女がほんとに綺麗になるかどうかゆうたら違うんとちゃうの?
自分は一万五千円のもんつけてる、自分はそれだけの価値がある女だっていう思いが、女を綺麗にするんと違う」
  (p75)

★★★★

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