「穂足のチカラ」 梶尾 真治

安月給のダメ社員の父、パチンコ依存症の母。
シングルマザーの娘に、登校拒否の息子。
そして祖父は認知症気味。
それぞれが上手くいかない何かを抱える海野家で、愛らしい3歳の孫、穂足だけが唯一の救いだった。



ひさびさの梶尾さん。
現在社会を象徴するとも言える複雑な家庭が登場して、暗いながらも興味深い。

これは、SF小説です。
解説では、「SF」をサイエンス・フィクションと同時に「すこし・ふしぎ」と称していましたが、まさにそんな感じです。
あれよあれよと不思議な出来事が起こって、なんともふしぎな気持ちに陥ります。

誰もが一度は自分のコンプレックスが解消されたらいいな、なんて夢を抱いたりすると思いますが、では果たして何1つコンプレックスも欠点もなくなったら嬉しいものか?と問われると悩んでしまう。
欲のない世界は平和かもしれないけど、自分の欠点と向き合って乗り越えようとする過程も好きなので、一段抜かしじゃない世界の方が好きかもしれない。
とはいえ、たまにはこんな夢のような物語も楽しいですね。

★★★

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「OKAGE」 梶尾 真治

世界中で子どもが失踪する “おかげ現象”
集団失踪した子どもたちは、どこへ?


SF要素満載です。
文庫裏に書かれていた「感動再び」を楽しみたくて手に取ったのですが、物語についていけず、置いてきぼりをくらってしまいました。
古い大人にはわからない新しい世界、を描いているのですが、物語の中の大人同様に私も何が起こっているのかさっぱりわからず。
最後まで頭の中からはてなマークが消えませんでした。残念。

★★

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「時の“風”に吹かれて」 梶尾 真治

再読です。
本作ももちろん楽しめるのだけど、解説が最高でした。
その作品の魅力を十二分に引き出す解説って素敵です。

そこに書かれていたように、「からくり屋敷」のような短編集でした。暗い座敷あり、先の見通せない廊下ありの。
SF要素が凝縮された短編集は、素直に楽しかったです。

はじめてタイムマシーンを発明した「自縛の人」、
どこにもないけど、どこにでもある「その路地へ曲がって」、
思い出の中の“あの子”との「再会」などが特に好きでした。

とことん空想を楽しむ梶尾さんのスタイルが好きです。

呪いは、人を不幸に引きずりこむ。
願いは、不可能な世界を創造りだす。
呪いと願いは、方向が違うだけなのだ。
  (p230)

★★★☆

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「クロノス・ジョウンターの伝説」 梶尾 真治

泣ける話だから。
そう勧められただけあって、涙なしでは読めませんでした。
人の想いのあまりの強さに苦しくもなりました。

時間は、普通私たちにとって越えられないものであり、変えられないものだし、この作品のように時間を越えることができるようになったとしても自由自在に操れるようなものではないんですね。
時間を越えることは、時間に逆らうこと。それにはそれだけの覚悟がいると思うんです。

4つの物語はどれもすごく良かったのだけど、私は鈴谷樹里の軌跡の話が一番気に入っています。結末も合わせてとても好き。
この1冊の中にも時間の流れを感じたり、時間が傷を癒してくれる存在だと気づいたりと「時間」の大きさを改めて見直すことができた気がします。


「6090年・・・・・。そのような、わけのわからない未来に跳ばされても、救いに行くべきだと思うのかね。救いにいく価値があると思うのかね。」

★★★★☆

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「美亜へ贈る真珠」 梶尾 真治

違う時間を生きる恋人たちの心情を痛切に描いて、発表と同時にスタンダードになったと絶讃されたデビュー作「美亜へ贈る真珠」をはじめ、亡くなった男を想いつづける女心の深淵にふれる「梨湖という虚像」、夫婦のすれちがいが驚くべきできごとに発展する「玲子の箱宇宙」、時間を超越して男女が運命的なめぐりあいを果たす「時尼に関する覚え書」と、女性名をタイトルに織りこんだ、泣ける抒情ロマンスSF7篇を収録。

声が出ない。
1作目の「美亜へ贈る真珠」を読んだ時点でそういった状態でした。
泣くという段階を一気に飛び越した後で涙が出てきました。
なんだこれは。こんなすれ違いがあっていいのか。
誰の立場に立っても涙なしには読めません。加えて梶尾さんの表現の美しさにも舌を巻きます。
永遠の想いは存在するのでしょうか。

深く想っていても離ればなれになって時が経てばその想いは薄れてしまうし、振り向いてくれる可能性が皆無の人を想い続けることも難しい。
けれど愛する人が手の届きそうな位置にいるとしたら、もどかしさと共にその想いは募るばかりかもしれません。
時間という絶大な障害物に対しては言い様のない歯痒さを覚えました。
それでも梶尾さんの話はどれも最後には希望があって救われます。

特に好きなのは、違う時間の流れの中で生きる恋人を描いた「美亜へ贈る真珠」、おとぎ話のようで哀しい優しさに包まれている「ヒトはかつて尼那を」、そして自分を犠牲にしても相手を想いとおした「江里の時の時」でした。

★★★★☆

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「黄泉がえり」 梶尾 真治

大好きなあの人が還ってきた。
熊本市ではある地震の日を境に死者が蘇るという不思議な現象に見まわれた。
戸惑いながらも喜ぶ家族に友人。しかし、この喜びはいつまでも続くものなのだろうか。

泣かない様に読み終えるのが大変でした。
電車の中で読んでいたから人前で泣くわけにもいかず。かなり「いい話」だと思います。
読んでいて、自己犠牲は最大の愛だという、そんな言葉を思い出しました。 続きを読む