「異国のおじさんを伴う」 森絵都

思わぬ幸せも、不意の落とし穴もこの道の先に待っている。
どこから読んでも、何度でも、豊かに広がる10の物語。

誰もが迎える、人生の特別な一瞬を、鮮やかにとらえる森絵都ワールド。

森絵都ワールドに、ほっこり。

重すぎず、軽すぎず、くすりと笑えるものも含んだ10編の短編集です。

ひさびさの森絵都さん。
やっぱり大好き。読めてよかった。
いくつかピックアップしてみます。 続きを読む

「屋久島ジュウソウ」 森絵都

ゆるゆる・和気藹々・のんびり楽しいグループ旅行のつもりで屋久島を訪れたモリエト一行。
ところが、待っていたのは九州最高峰への登山だった!急勾配に泣き、杉に癒され、脳内麻薬でハイになる。
初心者チームが挑むいきあたりばったりトレッキングと、海外でキレた瞬間や忘れられない味など、世界中を巡って出会ったエピソード14本の詰め合わせ。

旅気分満載のエッセイ集。

1歩踏み出したい人へ

一度は行ってみたい、屋久島。
こちらは、森絵都さんが屋久島をジュウソウした様子を綴ったエッセイです。 続きを読む

「この女」 森 絵都

釜ヶ崎で働く青年は、とある出来事から「ある女」の人生を小説にすることを頼まれる。前金は100万円。
掴みどころのない女の人生を紐解いていくと見えてきたものは――。

3大ドヤ街の1つ、あいりん地区が舞台です。
久しぶりの森さんの小説は思いのほかすごく重くて、読了後は結構気分が落ち込みました。気持ちを入れて読みすぎた。 続きを読む

「ゴールド・フィッシュ」 森 絵都

大人になると夢を忘れてしまうものなのかな。
それなら私は大人になんかならなくていい。
そんな風に思っていたこともありました。

夢を追いかけ続けている人はとても素敵だけど、誰もがそうできるわけではないことを今の私は知っています。生きていくために、時には夢を諦めなくてはならないことだってある。
そうわかってからも、すぐにはそれを認められませんでした。
だから、さゆきの気持ちはすごくわかりました。

でも認めないことには成長できない。
ずっと子供のままでいることは社会で生活する以上許されないことです。
さゆきがちゃんと前に進むことができて安心しました。

真ちゃんは相変わらずなぁという感じだけどやっぱり憎めなくて好き。
テツはいつの間にか器の大きい人になっていて頼れるし、みゆきは恋愛をして勉強以外にも大切なことを見つけた。それに大西先生は個性の大切さに気づいたみたい。
みんないい人。私も小さいことを大切にしながら夢を叶えていけたらと思いました。


大きな夢はまだ見えない。
それはもうすこし先のほう、もしかしたらずっと未来のほうにあって、あたしはまだ夢の見える場所までいきついていない。
でも、あたしがあたしらしく年をとっていったなら。
あたしのリズムを守りつづけたなら。
いつか必ず、あたしにしかできないなにかが見えてくるはずだ。

★★★★☆

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「リズム」 森 絵都

この本は私に前向きで優しいメッセージをくれました。
子供の頃に戻ったみたいに素直に読めるようでした。
私も風みたいに、空みたいに、月みたいに変わらないものが好きです。
しかし、私を取り巻くものの多くが変化してしまうものなのも知っています。
だからこそ真ちゃんのくれた言葉は温かく、とても嬉しいものでした。

登場人物はみんな人間味溢れる感じで、特にさゆきのおつかいに行く場面は可愛くてくすくす笑ってしまいました。
私が一番印象に残ってるのはテツと秘密の場所から眺めた町の様子です。千年後もここから見た景色が変わってないといいね、っていうさゆきの言葉が切なく残っています。
今まで変化を拒んでたさゆき自身の変化がここで見られたような気がします。

「大切なものだから、さゆきにやる。これから大切にしてくれればいいよ」
真ちゃんは平然と言った。
「これからさゆきがさ、まわりの雑音が気になって・・・親とか、教師とか友達の声がきになってさ、自分の思うように動いたり笑ったりできなくなったら、その時はこのスティックでリズムをとってみな。さゆきにはさゆきだけのリズムがあるんだから」

★★★

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「カラフル」 森 絵都

「おめでとうございます、抽選に当たりました!」
ぼくはその時、魂だった。それも生前に罪を犯したが為に輪廻の輪から外され消滅するのを待つばかりの魂だった。ところが、ある天使の一声によりぼくの運命は大きく変わった。
ぼくが当たったものとは即ち生きることの再挑戦のチャンスだったのです。


予想通りの展開でいながら予想を遥かにうわまる中身の詰まった物語でした。
言葉の使い方がとても上手くて悔しいながらもついついのせられてしまい、真がお父さんと釣りに行く場面あたりなどかなり涙腺が危うかったです。

驚いたのは私が少し前に疑問に思っていたことの答えがそのままここに書かれていたことでした。
ちょうど友達といざこざがあって、ずっと白だと思っていたものが実は黒だったということがありました。私は裏切られた思いで「本当の色は何色なんだろう」と思い悩んだことがあります。
しかし忘れてならないのは私たちは誰しも1つの色しか持ち合わせていないというわけではないことです。色彩の渦と言っていいほどの色を私たちは持っているのです。

白も黒もそういったものの一面にしか過ぎないのです。
そしてその色は見る角度によっては違う色に見えたりするものです。
一概にその人の色を決め付けるのではなくもっといろんな角度から見てみようと、改めてはっきりそんなことを思いました。

人は自分でも気づかないところでだれかを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはみんないつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。

★★★★★

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「ショート・トリップ」 森 絵都

いろんな「旅」の詰まった短編集。
女王様のお忍び旅行から時間を越えての旅までさまざまな旅があり、いくつかの話ではかなり笑わせてもらいました。

一番笑ったのは「脱サラの二人」でしょうか。
これは会社の命に従うのではなく、自分の信念に生きることを決めた二人が偶然会うところから始まります。
時計に支配されるのではなく自由気ままに生きたい、そう思い旅行をしている2人の旅程表には1ヶ月先まで予定でびっしりです。
別れ際に2人は腕時計を見て誰よりも足早に街にと向かいます。
周りから見ればサラリーマンそのものなんです。
自覚がなくても長年にわたって染み付いた習慣はなかなか消えるものじゃありません。
そういうのをはたから見るのほど面白いものはないです。
いろんな旅があるのと同様に、くすくす笑うような話もあればにっこりしたくなるような話もあり、かと思えば上記の様にかなり笑える話もあったり、笑いの種の詰まった本でもありました。

★★★☆

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「つきのふね」 森 絵都

<ネタばれ>
主人公の年齢が自分より下なせいかそこまで感情移入はされなかったのだけど、こういう気持ちになったことはある、と過去の自分を思い出す部分がかなりありました。
大人でもない子供でもない、未来に不安を抱えてるそんな時期は私に限らず誰にでもあるんですね。

大変な時代だから、生き抜いてく為に支え、というか心の拠りどころみたいなものが必要なんだと思う。
ツユキが言っていた
「人より壊れやすい心に生まれついた人間は、それでも生きていくだけの強さも同時に生まれ持ってるんだよ」
という言葉が私の中ですごく強く残っています。

★★★

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