「ロビンソン病」 狗飼 恭子

好きな人の前で化粧を手抜きをする女友達。
日本女性の気を惹くためにヒビ割れた眼鏡をかける外国人。
結婚したいと思わせるほど絶妙な温度でお風呂を入れるバンドマン。
切実に恋を生きる人々の可愛くもおかしなドラマ。恋さえあれば生きていけるなんて幻想は、とっくに失くしたけれど、やっぱり恋に翻弄されたい30代独身恋愛小説家のエッセイ集。


狗飼さんの日常が溢れだして言葉になった、エッセイです。
物書きの人は、みんなそうなの??と思うくらい、常にいろんなことを考えている狗飼さん。
彼女の頭の中を垣間見れて、ファンとしては嬉しい限り。

一方で、そんなにプライベートを公開しても大丈夫?なんてハラハラしたり。匿名性はもちろん守られているのだけど、読む人が読んだら「これ、自分のことだ!」と思うだろうに。
彼女に限らず他の作家のエッセイを読んでも、歌手自作の歌詞を見てもそう思う私は、きっと他人の目を気にしすぎなんでしょうね。
それはさておき、狗飼さんは清々しいほどに恋愛体質だなあ、と今回も思ったのでした。

恋愛体質の人が持つアンバランスさというのが愛おしくて素敵だなと、心から思います。
狗飼さんにはずっと、恋愛をしていてほしい。非日常を保ち続けてほしい。
恋愛をするために欠かせないのが、人との出会いなんだろうな、なんて当たり前のことを思いました。

それくらい、狗飼さんはこのエッセイでたくさんの人と会って、飲んで、話をしてます。
読み終えて、私も前を向いて歩けそうな気持ちになりました。
だいすき。

外に出ると、まだまだ知らないことがたあるんだって知ることができる。
辛いことのほうが多いけど、でも、それでも、知らないよりは知れたほうが良いって思えるうちはまだ大丈夫なんだと思う。  (p95)

★★★

follow us in feedly

「遠くでずっとそばにいる」 狗飼 恭子

27歳の朔美は、会社を辞めた日に事故で10年分の記憶を失った。
高校時代の部活仲間を頼りに思い出を辿っていくが、浮き彫りになるのはどこまでも孤独な自分。
会いたい人がいるはずもない彼女に贈られた、差出人不明のバースデーカードは、思いもよらない事故の真実を明らかにする。


久々の狗飼さんの新作。
多感な時期に愛読した、大好きな作家さんの1人。
彼女の感性がすごく好きです。ただ、作品を重ねるごとに尖った感性みたいなものが薄らいできたような気がして、徐々にフェードアウトしていました。
それが、久々に読んだこの作品はすごくすごくよかったです。
彼女の集大成かと思うくらい。

10年分の記憶をなくした27歳の彼女の物語は、ミステリー要素も混ざっており、読み応えがありました。
ヒリヒリするようなこの感覚は、燃えるような恋愛をした時の痛みを思い出すからかもしれない。
彼女の核みたいなものはきっと昔から変わっていないんでしょうね。
それが作中のいたるところに感じられて、嬉しかったです。
感情がともなう恋愛って、やっぱりきっと、どうしても「痛い」んでしょうね。
単純に相手を大事に思うだけで済めばいいのに、
独占欲とか、嫉妬とか、いろんな感情が伴うから難しい。

「彼女」の行動は、わかりすぎるくらいに理解できて、不器用だなあと思うとともに、ちょっと自分と似てるななんて思ったりもして。
狗飼さんの小説は、いつも温度を感じられていい。
今までの作品にも好きなものはたくさんあるけど、この作品が今は一番好きかもしれない。

あのさ、虫が火に飛び込むのって馬鹿みたいって、思う?
火に飛び込んだら絶対死んじゃうでしょう。
なのに火に惹かれてしまうなんて、生き物として何か欠落しているとしか思えないよね。


だけど、もしすべての虫が火にものすごく大きな恋心を抱いているとしたら、どうだろう。
それでも、飛び込むのって馬鹿みたいって思う?
わたしは飛び込まないことのほうを、意気地なしだって思うよ。
  (p300)

★★★★★

follow us in feedly

「一緒にいたい人」  狗飼 恭子

「痛がるなんて損だよ」
「痛くない恋なんて、する意味がないじゃない」

猫アレルギーの初美と、付き合って2年目になる彼・ユキオ。
彼の家には愛猫の「みりん」がいる。

そして三角関係を予想させる、彼の従姉妹「ミリ」の登場。

狗飼さんの本の中でも、いちばん好きな1冊。 続きを読む

「おしまいの時間」 狗飼 恭子

再読。
淡々と書かれてあるから読みすすめるのは楽だけど、本当は重い話です。
イズミは妊娠した子供の父親になってくれる人を探す為にデートを繰り返しているし、ワタルは先生が死んだあとはずっと学校を休学したまま、それにリカコは不倫をしている。

不幸じゃないけど幸福でもない場所というのは確かにあって、そこはすごく安定しているけど、いつまでもそこにいるわけにはいかない。
新しい場所に踏み出すのは怖いけれど、そうしない限り変化のないことに対する寂しさと日に日に強まる焦りからは抜けられないのだと思う。
私も、好きな人のバニラエッセンスのような存在になれたらと思う。

空気でも水でもなくて、ないと何かが足りないって思ってくれるようなそんな存在。

明日は晴れるだろうか、そう天気を気遣うように、明日は変われるだろうか、と思う。
明日私は変われるだろうか。世界は明日変わるだろうか。
明日こそ、おしまいの日なんだろうか。

ほかの人にはどうってことないことでも、あたしには、あたしの人生変わっちゃうくらい、大切なことだった。

本当につらい時、人は無理すらできない。

★★★☆

follow us in feedly

「深い深い夢の中」 狗飼 恭子

美雨みたいな女の子って身近に1人はいるものだと思う。
自分じゃとても真似できないような可愛さに溢れた女の子。
可愛くなろうとしている子は大好きなのだけど、美雨は別でした。
何故なら裏表のある子だったから。

それでも彼女が逸子のためにキレた時点からとても好きになりました。
友達のためにキレたり泣いたりできる子が好き。
愛は人を殺せると思う。
美雨は二人から愛されすぎていた。

もし美雨がどちらか片方を選ぶことができたならよかったのだけど、そうすることができなかった美雨は「失うくらいなら殺してしまおう」と思われることがあったかもしれない。
そんな過激なことを二人は思わなかったかもしれないけど、愛されている限り可能性は充分にあったはずです。
でも、本当に心配していたのは心が殺されることなんじゃないかと思うんです。
自分が一番に想われたいと思いながら宇田川さんを愛する心。
それこそが美雨が逃げてまで守りたかったものではないんでしょうか。
美雨の残したハガキが大好き。彼女らしくて。

愛するのと憎むのなんて、似たようなもんだもん。

愛されることを求めるのなら、本当に愛したりしなければいい。
愛したいなら、ただ一途に愛せばいい。

★★★☆

follow us in feedly

「南国再見」 狗飼 恭子

私が初めてこれを読んだのは遠距離恋愛をしていた頃でした。
“逢えなくても、逢いたいと思い続けることができる限り大丈夫だ” という言葉にとても強く励まされたのを覚えています。
久しぶりに読んでみると以前よりももっと言葉が染み込んできた気がします。
それは、苦しいくらいに。

普通の小説なら、真夏にコートを着ているなんておかしい人じゃないか。と感じていたかもしれないけど、狗飼さんの言葉から感じたのは、ただひたすらに愛する人を想う気持ちでした。
狗飼さんは、なんて丁寧に言葉を紡ぐ人なんだろう。
強い人は自分と向き合える。
私も彼女のように逃げることなく自分と向き合えたらと思いました。

これは私にとってとても大切な本で、これから先もずっと大切なままなんだろうと、読み直してからまた思いました。

「彼がいなくちゃ生きていけない」
そう思ったのは、けしてけして、嘘じゃないはずだから。

★★★★☆

follow us in feedly