「ポトスライムの舟」 津村記久子

29歳、工場勤務のナガセは、食い扶持のために、「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々。
ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ一六三万円で、一年分の勤務時間を「世界一周という行為にも換金できる」と気付くが――。

ユーモラスで抑制された文章が胸に迫り、働くことを肯定したくなる。

第140回(平成20年度下半期) 芥川賞受賞。

毎日がんばって働いている人にこそ、読んでほしい。

働く人の味方、津村さんが描く、第140回芥川賞受賞作「ポトスライムの舟」と、「十二月の窓辺」。

正直なところ、「十二月の窓辺」があまりにも強烈で、味わい深かかった「ポトスライムの舟」が頭の中から一瞬消し飛びました。 続きを読む

「共喰い」 田中 慎弥

第146回芥川賞受賞作 ―― 「共喰い」
舞台は、昭和63年。17歳の遠馬は、怪しげな仕事をしている父とその愛人・琴子さんの三人で川辺の町に暮らしていた。
川辺の町で起こる、逃げ場のない血と性の臭いがたちこめる濃密な物語。


納得の芥川賞受賞作。
表題作を読んで、あまりの鋭利さに震えました。
普段ぼんやり眺めている世界を、鋭い感性の眼鏡をかけて見せられた気分。
ずっと、ドキドキしながら読んでいました。

そして、読んでいて怖い。
内容が、というよりは、閉塞感と狂気溢れる世界が迫ってくるようで怖かったです。
なんて独特に世界を見る人なんだろう。なんて上手く言葉を使う人なんだろう。
嫌いだけど惹かれてしまうのと似ていて、読了感がいいわけではないのに、気になってしまう。
第三紀層の魚もまた、どっきりするような鋭い描写で作家の才能に酔いしれました。

読めてよかった。けれど、次の作品を手にするのは少し勇気が必要かもしれない。

★★☆

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「ひとり日和」 青山 七恵

芥川賞受賞作。
序盤の「蛍光灯のひもをひくと、コッコン、と音がして白い光が部屋に広がる」とか、描写がところどころリアルで引きこまれたり、なんだか懐かしい気持ちになったりしました。
そしてふと、祖母と過ごした時間を思い出しました。

主人公への思い入れは特にないものの、独特のゆるやかな空気や淡々と進む物語は好きかもしれない。
特にラストの軽やかなところは、読んでいて気持ちがすっと軽くなりました。中盤は一部ギスギス、チクチクしてるけど、これは最後まで読むべき。
こういう年代もあったなあ。

著者の他の作品も読んでみようと思いました。

「世界に外も中もないのよ。この世は1つしかないでしょ」  (p162)

★★★

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